「ペンは剣より強しと」言われたのは、
印刷を前提としている。
一枚の原稿だけでは剣に勝てない。
印刷して配布し、世論を形成してはじめて剣に勝てる。
正確に言うと、
ペンと輪転機と配る人々が、剣より強い。
さて現代だ。
実質、手書き原稿を受け付けてくれる所はない。
小説の新人賞などを見ていると、
手書き不可が過半数を超えつつある気がする。
では、
現代のペンと印刷=キーボードとネットは、剣より強いだろうか?
僕は弱いと思っている。
英語に関して言えば、
キーボードは剣より強いと思う。
英文タイピングは、タイプライター登場以後、
基本的に現代まで直結した歴史がある。
(qwerty配列でないタイプライターの存在や、
qwerty配列以外のキーボードの存在はある)
それはそれなりに凄いことで、
我々の日本語は、
この100年で常用漢字すら揺れがあることと対照的だ。
しかるに、
電子上の日本語入力作法は、
この30年で一定していない。
半角JISカナのみ、
漢直コード入力、
親指シフト、qwertyローマ字、M式、
TRON方式中止からのqwertyローマ字一色、
フリック、音声入力。
ざっと俯瞰しても、
これだけの変遷がある。
この全てをブラインドタッチしてきた、
歴史の生き証人はいるのかな。
これだけの方式を、仮にアメリカ人に強要してみよう。
アメリカ人は発狂するに違いない。
それくらい、日本語は複雑な言語なのだ。
歴史的に見て、
この複雑な日本語を簡素化しようとした流れは何回かある。
明治維新での50音の整理や漢字の制定、
あるいは標準語の普及、
あるいは全面的なローマ字への移行(失敗)、
ラジオテレビによる標準語の普及、
会社の英語化(失敗)、
大学の英語化(失敗)、
などだろうか。
これらのいくつかの標準化の権力行使にも関わらず、
私たちの言語はそのままであり、
方言は消えない。
言葉は人間をつくり、人間は言葉でコミュニケーションする。
それは公権力による介入では崩れないものであることを、
この150年で示したようなものだ。
IMEや予測変換がまともになってきたことで、
あとは日本語の入力方式だけが、
なんとかする対象なのではないだろうか?
フリックは最も普及しているが、長文はしんどい。
これで一日5000字はつらい。
音声入力は一人の部屋ならいいかもしれない。
僕は会社かカフェにいるので、これはしんどい。
また僕は書き言葉で考えるので、
音声入力は相性が悪い。
結局持ち運べるキーボードが、
実質の(印刷普及まで考えた)僕のペンだ。
そのペンが何万もしたり、
最高級キーボードのことをみんな知らなかったりするのはおかしいと思うし、
実質qwertyローマ字一択になっている現状はおかしい。
勿論、入門としてのqwertyは否定しないし、
世の中にはqwertyが最も体に合う人がいるかもしれない。
しかし僕は、qwertyローマ字は最悪だと思う。
そう考える人に代替手段を示さないのは、
メーカーの不具合でもあるし、
社会的責任であるとも思う。
親指シフトが唯一のオルターナティブになっているのは、
嘆かわしい。
その知名度は何年前のものだ。
それが改良されてないのはどうなんだ。
それから飛鳥配列、新下駄配列、新JISと、
高効率の配列がたくさん作られた。
我らが薙刀式もその末席だ。
これらをして、
ようやくキーボードは剣に匹敵するのではないだろうか?
qwertyローマ字の達人(脱落者の多さよ!)と、
これらの配列の使い手だけが、
ようやくまともなペンを握った状態で、
つまりそれは、
高々30%(ブラインドタッチ習得率)の人間しか、
ペンを握れていない状態だと言うことだ。
そりゃあ陰謀説も出るわ。
アメリカと組んで、日本人を弱体化させているとね。
僕は、ペンを握るのは剣と闘う為だ。
剣というのは別に政府とか政治家とは限らない。
僕の闘う相手は、怠惰を理由に、
現状を顧みない馬鹿どもの強制かも知れない。
それは直接的な攻撃の時もあるし、
物語という僕の仕事で、間接的に攻撃する時もあるだろう。
自分の意見を表明すること。
最も簡単なこのことすら、
炎上を恐れるあまり、ただしく出来ない世の中だ。
言論は自由だ。
どんな悪の思想すら自由だ。
非難はするが、思想を奪ったり袋叩きにしてはならない。
考えはどんな犯罪的なものでも自由で、
行為に違反があるだけだ。
オウム真理教すら、行為に違反さえなければOKだ。
不気味な人にも人権はある。
クソな言論すら自由だ。
人権を奪っていいのは、違反があるときだけ。
多数派が少数派の人権を奪うべきではない。
意見や考えや思想の自由。
それは人類がたどり着いた、最も大事な基本概念のひとつである。
キーボードは剣より強い。
それが薙刀式の目指すゴールかもしれない。
(ん?結局武器対武器の話になるな。
これはネーミングが悪かったかもなあ…)
2018年09月16日
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