2018年09月18日

面白い設定を活かした面白いストーリー

さらに続き。
じゃあ、面白い設定をフルに生かした、
本当に面白いストーリーはどうやって作ればいいのか?

その設定が壊れる瞬間をドラマにすること。


設定というのは点である。
つまり時間軸を持たない。
それに時間軸を持たせればよいのだ。
つまり、その初期設定を変化させればよい。

Aという設定の一番大きな変化はnotAになることだから、
最もダイナミックなストーリーは、
その設定が壊れてなくなってしまうとか、
真逆になるとかだ。

どうしてそうなるの?
それがストーリーだ。

ある状態からある状態への変化があるとして、
それがなぜどうやって起こったかを説明するのがストーリーだ。
しかも、
自然現象的にただ変化したのはストーリーとは言わなくて、
誰かが何らかの目的で行動した結果、
そうなったのがストーリーである。

その人は主人公でもいいし他の人でもいい。
notAにすることを目的としていてもいいし、
他のことをやった結果、Aが影響を及ぼして変化してもいい。


ドラマ「風魔の小次郎」を例に。

A: 夜叉一族と風魔一族は昔から対立抗争してきた
notA: 夜叉一族は滅び、対立は消滅

A: 駆け出しの忍び小次郎は、伝統的な忍びに疑問を抱いている
notA: 新しい価値観を持った、新しい形の忍びになる

A: 夜叉八将軍はギスギスして仲が悪い
notA: 壬生が出奔、陽炎が裏切り、そして誰もいなくなった

A: 本当に人が死んでいく
notA: それを受け入れて、命を捨てる意味を見つける

などなど。

これらは原作にない、
ドラマの設定とその最終変化だ。
この、AからnotAの間にあることが、ストーリーになっている。

一方、原作漫画の設定はほとんどは出落ちだ。
風魔烈風、死鏡剣、飛龍覇皇剣、白羽陣、霧幻陣、霧氷剣、
などは設定は魅力的だがただそれだけだ。
一回出たらあとは二度と使われていない。
(死鏡剣なんて破られるためにかける技になってしまう)
聖剣も同様で、設定は魅力的だが一回出したらおしまいだ。
つまり、
これらのスーパー魅力的な設定は、
「ストーリーに使われていない」ことに注意されたい。

僕がリアルタイム読者で夢中に風小次を読んでいた頃、
ストーリーに夢中になっていただろうか。
設定に夢中になっていただけのような気がする。
車田漫画とは、とどのつまり設定の羅列で、
ストーリーなんかほとんどないんだと気づくのは、
プロになって自分で原作を分解してみたときだ。
だから、ストーリーを創作しなければドラマとして成立しない、
とわりと本気で焦った。
原作ママでやったら、出落ちの必殺技を叫ぶだけの、
クソ漫画実写化になるだけだと。
しかも原作の大枠の流れをいかに邪魔せずに、
裏に進行させるか、ということに腐心したものだ。

なかなかここまでわかって褒めてくれる人はいないけれど、
当時の原作ファンなんかは、
「うまいこと現代のドラマに蘇らせた」
と評価してくれた人もいるから、
分かってくれたか友よ、となったものだよ。


一度設定したことを、
どうやって変化させていくのか?
それを考えると、ストーリーを作れるかもしれない。
(原作の設定をストーリーに使うと、
設定を変化させなくてはならない。
それは原作の酷い改変になるので、僕はやらなかった。
変化させたのは、ドラマ側の設定だ)

以前設定したことに、
途中で再び触れてみよう。
同じでしかないなら、話は進んでいない可能性がある。


その設定が最終的に壊れたり、否定されたり、真逆になったりすることを、
描くことを考えよう。
それがその設定をフルに活かしているということに繋がる。
posted by おおおかとしひこ at 09:42| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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