人生はアップダウンだ。
それを描くのがストーリーだ。
定常状態はストーリーではなく、
事態が動くのがストーリーだ。
だからストーリーには、
マイナスの出来事と、プラスの出来事がある。
マイナスに陥ったことを、
行動してプラスにすることが、ストーリーだと言えるかも知れない。
ところで、
マイナスの出来事を考えよう。
大切な人が死ぬ。
このままでは会社が潰れる。
いじめられている。
宇宙人が襲来し、人類の滅亡の危機。
小さいマイナスでもいい。
漏れそうだがトイレが見つからない。
些細な言葉で傷ついた。
買ってきた商品に不具合がある。
雨が降っている。
あるいは、意思を持ったマイナスもある。
攻撃されている。
妨害されている。
陰湿な嫌がらせを受けている。
それはストーリーのどこで起こってもよい。
何回起こってもよい。
突発的に起こってもいいし、
因果の繋がりで起こってもよい。
全部が繋がりの一つでもいいし、
バラバラの複数が同時に起こってもいい。
ストーリーとは、
要するにこれらを行動でプラスに変えることだ。
「行動で」ということが第一のポイントで、
「雨が降っている」というマイナスに対して、
「ま、いっか」は行動ではない。
「思い直す」は行動ではないのだ。
「春雨よ、濡れて行こう」と「皆にいう」のは行動だ。
「それより大事なことのためにびしょ濡れでも急ぐ」も行動だ。
「傘をコンビニに買いに行く」も行動だし、
「核兵器で雨雲を散らす」も行動だ。
つまり、シーンとして撮影できる行動をすることで、
プラスに変えていくことが、
ストーリーである。
プラスのあり方には色々ある。
それには妥協もあれば交渉もあるかもしれない。
ただ「借金を働いて返す」ではプラマイ0で、
「働いた結果、信用が出来た」と、
マイナス以上にプラスになる必要がある。
その方が「これまでやってきた行動」に意味が出るからである。
マイナスのことは、
人生においてコントロールできない。
だから、それをいかにしてプラスに変えるのか、
「どうやって」マイナス以上のプラスにするのか、
それがストーリーだ。
「マイナスだが、見方によってはプラスに見える」
と思いなおす、ポジティブシンキングは宗教であってストーリーではない。
それによって、
誰が見てもプラスに転じる事態になるまで行動によって変えられれば、
ポジティブシンキングは手段や道具になり、
哲学となり、テーマとなるだろう。
つまり、
マイナスの出来事、
それ以上のプラスの出口、
それに至るための手段、行動、
の三つが揃って初めてストーリーになるのだ。
「大切な人が死ぬ」のは、
ストーリーでよくあるイベントだ。
強いショックがあり、
障害として大きいため、よく使われる。
しかしこれをどう乗り越えてよりプラスにするのか、
うまく描くことは大変難しい。
「愛する人が死んだから、
別の人と結婚して幸せになる」
はプラマイゼロにしかならないので、
私たちは微妙な気持ちになる。
それが人生のリアルだろうけれど、
リアル人生でその幸せすら掴むことはレアかも知れないが、
ストーリーの中では、
それ以上になってほしいと我々は思う。
新しい妻のお陰で仕事でも大成功とか、
前の妻の残したもので救われ、より良い暮らしになるとか、
前の妻が今の妻を引き合わせてくれた、これは運命なのだとか、
マイナスがマイナスのままではない、
「このマイナスがあったからこそ、
最後のプラスになったのだ」
という因果関係がないと、
我々はマイナスからの駆け上がりに意味を感じられない。
キリスト教徒は、苦難を神の試練だと考える。
これを乗り越えれば、神への愛を示したことになる、
という「ストーリー」の中で生きている。
神がストーリー設定の中であるならば、
これはストーリーとして成立している。
マイナスがより意味のあるプラスになるからだ。
我々日本人はこの神について懐疑的なだけだけどね。
もしかしたら、西洋で発達したストーリー論は、
このキリスト教の考え方が根底にあるかもしれない。
我々はキリスト教ベースでないが、
マイナスがマイナスのまま解決しなかったり、
マイナスが小マイナスに改善した程度で終わったり、
マイナスがプラマイゼロになったり、
マイナスが小プラスでちょい儲けで終わった程度では、
満足しない。
一度マイナスになったからには、
それを生かした、意味のある、
大逆転が見たいのである。
そしてその行動に憧れ、
その哲学をリアルでも実践しようと思うから、
我々は映画が好きなのだ。
あなたのストーリーはそうなっているだろうか?
マイナスは何でもいい。
デカくても小さくてもいい。
それをどうプラスに転じるか?
マイナスになる前以上にプラスに出来るか?
しかもそれらが行動によって、
(1ステップではなく、アップダウンのある沢山のステップだろう。
また単独行動ではなく、呉越同舟で挑むかも知れない)
なされているだろうか?
そして、
そのマイナスからの大逆転に、
どのような意味があるのだろうか?
それらが矛盾なく、嘘がなく、リアルで、
興味深く夢中になれて、
見終えた後その意味に満足し、
その意味に影響されるくらいが、
良いストーリーというものだ。
(その大きなことを「テーマ」みたいな一言で済ませてしまうと、
この複雑な部分が分からなくなるので、
安易にテーマという言葉は使うべきではない。
逆にこの記事は、テーマという言葉を使わずに、
テーマの要素分解と機能について説明しているといえよう)
2018年09月21日
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