2018年09月30日

台本は手で書いたほうがいいよ

薙刀式の記事が脚本論を圧迫している説もあるけれど、
僕は手書きしか信用してない。

ものは手で書かれるべきで、
タイピングなんてそれをデジタイズする道具に過ぎない。
だからタイピングなんて0に近いに越したことはなくて、
だから僕はそこの圧縮に執心しているわけだ。
(今のところ、倍ぐらい圧縮できた)


何故手書きで書かれるべきか?
台本は見ながら読まれるものではないからだ。

記憶され、何も見ずに体から出るものだからである。


今日の買い物のメモを取ることを考えよう。

小さい紙に手書きでリストアップするか、
デジタル、たとえばスマホのメモアプリに書き出すか、
どっち派だろうか。

今はデジタルの方が多いのかね。
でも僕はアナログメモ推奨。

なぜなら、アナログメモは、
「そのメモを作ったら、もう見なくても良い」からである。
勿論忘れたら困るからその紙を持ち歩くことはするけれど、
アナログメモは一回作ったら、
大抵見る必要がない。

「メモを作る行為が、体に入れる行為」になっているからである。

メモとして整理することがすでに記憶なのだ。

デジタルメモの場合はそうでないことが多い。
一度作っても、
その場で何回も見直すことになるだろう。

デジタルメモは作るのは早いけれど
(コピペも出来るし)、
記憶に入ることがないので、なんども見る必要がある。
つまり、デジタルメモは外部記憶装置である。

主記憶装置、つまり自分にはない部分を、
スマホにやってもらってるわけである。
だから、記憶を利用しようとするたびにアクセス
(つまりスマホを取り出して、見る行為)をしなければならない。

一方、アナログメモは、
作るまでは時間がかかるが、
その行為自体が記憶の整理になるので、
内部記憶化されやすい。

あとで一回さっと見ればほぼ記憶になる。


カンニングペーパーの原理だ。

カンニングペーパーをアナログで作ると、意外と覚える。
要点をなるべく小さくまとめなきゃいけないから、
整理してしかも集中して間違わないように小さく書く。

この集中を極限までするから、意外と覚えるんだよね。

一方デジタルカンニングは、
おそらく教科書全コピーして、あとあと検索で呼び出すシステムになっているだろう。
それは何も覚えていないに等しく、
外部記憶装置化しているわけだ。



つまり、
アナログは記憶の内在化のことで、
デジタルは記憶の外在化のことだ。


台本はどっちだ?
役者の内部から湧き上がってくる感情、言葉。
これらは、
内在化されたものであるべきだ。

だから僕はアナログで書く。


印刷やコピペは、デジタルでやる。
デジタルはコピーに向いている。
バージョン管理も、
大体「old」とついたフォルダを作り、
ファイル名にナンバリングしとけば、
勝手に並んでくれるし。
常に最新のファイルだけ仕事フォルダの直下に入れとけば、
なんとでもなるようになっている。

それでも、
リライトするときのセリフは、
アナログで書く。



小説を書くときが困る。
今は全部手書きでデジタルに文字打ちをしているが、
地の文はデジタルで、
会話文はアナログで、
書いた方がいいのではないか?
なんて思っている。

内在化されるべき言葉がアナログで、
外部記憶的な「自分ではないもの」はデジタルで、
書くと肌理が変わってくるかなあ、
なんて考えている。

とはいえ、地の文にも肉声を使いたいから、
結局全部手書きだけど。
(白紙にレイアウトフリーで書いております)



書く行為は、うんこを出すような行為だけではなく、
脳の整理も含んでいる。

タイピングだと、うんこを出しておしまいのような気がしていて、
だから整理にものすごく時間がかかるような気がする。

数字で検証はしていないが、
デジタル第一稿の直し(それはBSで消して書き直すことも含めて)
の方が絶対多いと思う。


言葉の内在化と外在化。
僕にとってアナログとデジタルは、
真逆のことだ。



そういえば、
昔は、地図を買えと言われてて、新人のデスクには必ず地図があった。
これで東京の地図を覚えて、タクシーの運ちゃんに道を言ったり、
どのスタジオがどこにあるか頭の中に地図を作れと。
だから昔の人は地図を見なくても道に迷わずに歩いて付ける。

最近の人にはそういう習慣がないから、
スマホの地図アプリを毎回起動して、
ずっと「あれー?」ってぐるぐる回している。

昔の人なら「現場で迷わないように」と、
アナログで地図を書いて覚えたメモを作っていた。

地図を内在化する人と、外部記憶装置にする人の違いで、
僕は内在化してる人をプロだと思う。


優秀なプロほど、道具は使わない。
全てが内在化しているからだ。

マックブックを持ってる人を、だから僕はバカにしている。
posted by おおおかとしひこ at 12:06| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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