「それ」とは、さっきまで気にしていたそれのことで、
今後どうなるかわからないことのそれで、
話題に上っている主語のそれのことである。
専門用語では焦点というけれど、
それ、itと考えると分かりやすくなると思う。
彼女には好きな人がいるのか?
が「それ」だとしよう。
いろんな人に聞いて回る。
どうやらいないらしいと分かってガッツポーズ。
しかし時々遠くに出かけることがあるらしい。
遠距離の彼氏がいるのでは?となり、
彼女のSNSの自撮りから、場所を特定しようとする。
さりげなくその場所の話題を振ったり、
思い出の場所かどうか探ったりする。
しかしそれは彼女のおじいさんの家があり、
その世話をするためにちょくちょく帰省していたことがわかる。
なんだいい子じゃないか、となるが、
「好きな人はいるのか?」が気になる。
こんどは「それ」がそれになる。
専門用語ではターニングポイントというわけだ。
ストーリーとは、
「それ」を常に追うことである。
気になり、解決しなければいけない「それ」があり、
それについて話したり、行動しなければならないことがあればやり、
それを結論に導こうとすることが、
ストーリーであると言える。
で、「それ」は、ある程度まで進むと、
別の「それ」にかわる。
同じ「それ」の別角度のことやより深いことになることもある
(上の例)し、
全く別の「それ」がやってきて、
同時進行になるパターンもある。
ずっと同じことの周りでぐるぐる回っていても飽きるので、
「それ」はちょいちょいかわる。
その瞬間をターニングポイントといい、
「あれ? そういえば」で変わる時もあれば、
劇的なエピソードで変わる場合もあるだろう。
電話がいきなりかかってきて、
「なにい? 殺し?」
となるのは、短くて良くできたターニングポイントパターンの一つだ。
どんな「それ」があったとしても、
いきなり「それ」を殺人事件最優先事項と出来るからである。
ターニングポイントというのは要するに話題を変えることで、
「そういえば」「ところで」が枕についたって構わない。
前の「それ」が消えなければいいわけで。
で、前に一時停止してあった「それ」と、
今の「それ」が融合して新たな「それ」になることもあり、
そうなって来ると話は俄然面白くなる。
今までのことが一つになって来る感じになるからだ。
これはいつやってもいい。
一般には展開部に多いが、
後半にしたがって増えて来るだろう。
風呂敷が畳まれていくからである。
「それ」はとても短くなることがある。
殺人鬼から逃げろ!
バイクだ!奪え!
やべえ奴も車に乗ってきた!
崖だ!
落ちた!
かと思いきやバイクから飛び降りてバイクだけ崖下で爆発!
車も爆発!
殺人鬼も飛び降りてた!
なんて一連のアクションは、
「それ」が次々に入れ替わる。
大きくは「殺人鬼から逃げろ!」だけど、
細かく「それ」を入れ替えることで、
息もつかせぬテンポを作り出すわけだ。
この、「それ」が発生している時、
ストーリーは進んでいる。
逆にいうと、
「それ」が発生していないものは、
ストーリーではない。
ストーリーのようでストーリーでないもの、
たとえば、
美しい風景や、
二人がイチャイチャしているだけの光景や、
窓際に座って物思いにふけっているなどは、
「それ」がない。
作者の中にはあっても、
登場人物と観客に共有される「それ」が存在しない。
ストーリーとは、
「それ」と、その行く先を描くものである。
あなたの話が面白くないのは、
「それ」がまず面白くなくて(興味が持てない)、
その行く先の追求も面白くないからではないか。
あなたの話の中で、
「それ」はなんだろう。
ここからここまで、「それ」=○○○、
などと脚本に表をつくってみたまえ。
それで流れが視覚化されるかも知れない。
2018年10月01日
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