2018年10月16日

つねにクライマックスであるように

面白い作品は、つねにクライマックスであるような感覚がある。
出来るだけそうするべきだ。


これは前半のクライマックスかも。
これは中盤の最大のクライマックスかも。
これはクライマックス直前の、最大のクライマックスかも。

観客も、作者も、そう思うように作るといい。


クライマックスとは、
緊張が最大に高まるところだ。

なぜそうなるかを考えると、
成功するか失敗するかわからない、
あやふやな状況で、
成功するとリターンがあり、
失敗すると取り戻せないリスクがあり、
運や他人任せよりも、
主人公の頑張りや工夫しだいで突破しなければならない状況で、
これをクリアするといったんは休める、
という状況が揃っているからだ。

あるいは、これに成功すると、
ストーリーが決着がつく、
と考えるから、緊張するのかもしれない。


そのような状況を作ろう。
つまり、
最初に提出された問題が、
「これで決着するかもしれない」
と思わせるような、
緊張感あふれる場面を作ることだ。

「これで決着するとは限らない」
と思っていると、
「まだまだ続くんだな」
という油断が出てしまい、
それがだれる原因になる。

ということは、「これで終わるかも」
を持ってくるといいわけだ。
「ファイナルファンタジー」
はつねにファイナルだ。そういうことである。
バトルもののインフレは、
毎回「これで世界が終わる最大の危機」とか言っている。
そういうことだ。


最初に提出した問題が、
これで決着がつくかも、という緊張感がクライマックスで、
それは最後に用意するのではなく、
惜しみなく前半から作っていく。

ということは逆に、
「それが決着したら、次の問題が勃発する」
ということになる。


それがそのクライマックスの問題と、
なにも関係ないと面白くない。
宇宙人を倒したと思ったら今度はエボラ出血熱が?
なんて展開は面白くない。
二本のストーリーになってしまう。
これが関係あるようにならないと、
それはストーリーではないのだ。

宇宙人を倒したと思ったら、
かれらが持ち込んだ宇宙の菌が増殖して、
エボラ出血熱に似た大感染状態が広まる、
という感じで、互いの問題は関連する必要がある。

つまり、問題そのものが発展的になるようにするとよい。


最初のころは、
ひとつ問題を設定して、
それを解決するクライマックスをただひとつだけ作る。
そんな簡単なことすら困難であると思う。
しかし慣れてくると、
「その問題は解決したが、
新たな問題が発生した。
本当に解決したわけではなかったのだ」
が出来るようになる。
問題を進化、深化させればいいのである。

だから、一見毎度毎度クライマックスが訪れるように作れる。
「これを解決すれば全部解決だ!」
→「やった!」
→「しかし、新たな深い問題に!」
の繰り返しになるわけだ。

こうなると、緊張の途切れない、
序盤から中盤が作れるだろう。


中盤や序盤のダレは、
こうした、
小さなクライマックスを用意していないことに尽きると思う。
作者が休みたがっている(緊張に疲れて、これを突破する方法が思いつかない)
ということは置いといても、
全体の計算がぬるい、ということになる。
起伏がないと、ダレる、ということを考えていない。
自分の設定した問題を解くだけで精一杯だ、
ということなのだ。

問いが出てきてそれを解くのがストーリーなのではなく、
問いを解決したら問い2が出てきた、
というのがストーリーであると思う。

もっとも、ごく短いストーリーなら問い1だけで終わるかもしれない。
しかし映画なみの長編になるなら、
その問いは4つも5つも6つもあってしかるべきだと思う。

それは一幕でもあるべきだし、二幕でもあるべきで、
つまりは三幕が唯一のクライマックスではなく、
三幕は最大のクライマックスであるべきだ、
という事なのだ。

つねにアップアップであるべきだ。
それが緊張感を続けて、ダレを防ぐだろう。

もちろん、緩急はつけてよい。
しかし「これを解決したらすべては解決するかも」
の緊張感は、常に予感させるべきだろう。

これを解決してもたいして進展しないな、
と思われたら負け、ということでもある。


彼女のハートを攻略した。
しかし、彼女には旦那がいた。
これがストーリーだ。
いつもクライマックスでいよう。

(そんな二転三転が毎回うまくいくとは限らなくて、
それでもうまくいく全体を先に設計するのが、
プロットなのだ。
プロットは思いついたものの下書きではなく、
念入りにそれらのクライマックスをどうつなげるかまで、
考えるべきものである)
posted by おおおかとしひこ at 15:18| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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