2018年10月21日

どうしてもしたい

動機を強くするとストーリーは立体的になる。


「もう家帰りたい」と思っている人物がいるとする。
場所は会社の飲み会だとしよう。
さっさと切り上げていいのだが、
だらだらいるとしよう。

これはストーリーとして面白くない。
現実には良くあるかも知れないが、
ストーリーとしてつまらない。
だらだらしてるからだね。

これを「どうしても家に帰りたい」に変更しよう。
理由は何でも良い。
「それは無理もない」と観客が思えれば何でも良い。

彼女が初めて家に来るから、
猫が死にそう、
家に忘れたかどうか確認したいものがある、

などをとりあえず例としてあげておく。
これは特殊であればあるほどストーリーは面白くなる。

で、動機が面白くなると、障害を強くすれば良い。

つまり、「どうしても帰れない状況になる」とよい。

上司のパワハラがある、
ここでしか話せない秘密の暴露が行われる、
実は好きでしたと告白がある、
なんとか電車に乗ったら人身事故で止まる、
痴漢に間違われる、
そこで猛烈な便意に襲われる、

などなどである。
勿論障害はエスカレートするべきで、
どんどん不可能になっていくことと、
どうしても家に帰りたいことの対決になるわけだ。

コンフリクトとは状況ではなく、
対決だと考えると分かりやすい。
コンフリクトを葛藤と訳すのは誤訳だ。
コンフリクトは対決だ。

具体的に対決し、それを乗り越える(かわす、なども含む)
ことがストーリーである。


ということで、
動機が強ければ強いほど、
障害が強ければ強いほど、
その対決が面白くなる。

今は亡き「PRIDE」の煽りVは、
「この試合の動機」を非常にうまく作り込んでいた。
僕が泣いたのは、
美濃輪が何故超人を目指したのかのやつと、
ヒョードルノゲイラの頂上決戦のときだった。
桜庭関係も熱かったなあ。

どうしてもしたい。
これが面白ければ、
物語は半分勝ったようなもの。
逆にいうと、ここがつまらないものは、
いつまでたっても感情移入出来ないし、
起伏のないものになるだろう。

全編通して「どうしても○○したい」を貫いても良いし、
途中で変更しても良い(ターニングポイント)。
首尾一貫して矛盾や破綻がなければ、
それは一連の時系列になる。

途中で変更した場合、
前の○○に新しい○○が勝てないと、
「つまらなくなった」となるので注意な。

(もちろんすぐに面白くならなくてもよくて、
一拍あって面白くなってもよい。
だだ下がりになるのはよろしくない)


で、
たとえばその「どうしても家に帰りたい」を達成したとき、
そのストーリーに何の意味があったのか?

「会社の付き合いなんて意味がない」だろうか?
「外より家がいい」なのか?
そのへんはストーリー全体からあぶり出されるだろう。
それがテーマであることは、
今までここを読んできた人には理解できるはずだ。

つまり、
動機と障害と乗り越えから、テーマは発生するということで、
逆にテーマは、
動機と障害と乗り越え方をコントロールすることで、
コントロールできるということだ。


うーん、「やっぱり家が一番」なんてテーマはつまらんな、
と考えたとき、
どんなテーマに落ちるのなら、
この「どうしても家に帰りたい」というストーリーは良くなるのだろう、
どんな動機に変更するならそのテーマに落とせるだろう、
どんな障害にすればその逆を作れるだろう、
どんな乗り越え方にすればそのテーマに落ちるだろう、
などと考えて、
具体を変更していくわけだ。

ということで、
これを面白く変更できなければそれでおしまいで、
プロットのメモに残しておき、
「シチュエーションは面白そうだが、
テーマの落ち方がイマイチ」
などと批評を書いてネタ帳の肥やしにしておく。

もし面白く変更するアイデアが浮かべば、
プロットを起こし直すと、
何かになるかも知れない。


当然、
眠ったままのアイデアのプロットを、
「どうしても○○したい」と、
動機を強く面白くすることで、
そのストーリーは俄然面白く立ち上がる可能性がある。

一番つまらないのはだらだらやってるストーリーで、
そこには「もう早く家帰りたいなあ」ぐらいの、
普通の思いしかないからつまらないのだ。

ストーリーは、普通の日常から外れた、
「特別な一日(または一連の何か)」だ。
普通の思いではない時のことをいう。
posted by おおおかとしひこ at 12:10| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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