2018年10月31日

オウム返し

セリフにおいて使えるテクニック。
まずそのオウム返しの部分を見てみよう。


たとえば、
「還付金が二倍に増えるんですよ」
「ええっ? 還付金が二倍に?!」
なんてのはCMで見るだろう。

強調するべきことは、
このように二回繰り返すものだ。

これは、
ただ二回繰り返しているだけではないことに注意したい。

わかっている人→知らない人への情報伝達、
という形をしていることに注目しよう。

つまりこの会話には流れがある。

知らない人が知っている人の情報を聞き、
それに応じて考え方を変える、
というのは「展開」の一つだ。

だからCMでは、
「よし、○○に申し込もう」という態度変容がそのあとにある。
状況に応じて対応を変えたわけだ。
そしてその変化=購入こそが、CMのテーマである。

さて。
ここで感情移入を伴えば、それは自然な心の動きに見え、
私たちの心も動くのだが、
大抵のCMでは感情移入しないため、
わざとらしく、無視すべき、害悪電波である。

これはCMだけではなく、
あなたのシナリオでも同じだ。

情報伝達による態度変容の展開において、
その態度変容に感情移入が伴っていない限り、
それはわざとらしい下手くそなCMと同じでしかない。

「Aなんです」
「Aだって?!」
とAに驚くとき、
その驚きと同じぐらい、
私たちは驚かなければならない。

我々と登場人物の感情が一致しなければ、
感情移入ではない。
一致するのが(結果としての)感情移入だ。

それはその一点だけでは決まらない。
これまでの流れで決まる。


仮にXが死んだとしよう。
我々は登場人物と同じぐらい、
Xの死を悲しみ、痛ましく思う。
その時にXが生きていたことがわかる。
「なにい!Xは生きていただと?!」
ってなったとき、
僕らが登場人物と同じぐらい驚くことが出来るのか、
ということだ。

どうでもいいキャラXが死んでいれば、
生きかえろうが何しようがどうでもいい。
つまり、
死に感情の揺れを伴うように、
それは出来ていなければならない。

「生きていただと?!」の驚きに、
我々が驚く為には、
Xが魅力的でなければならず、
かつXの死にショックを受けなければならない。
つまり、「生きていただと?!」の驚きのために、
二段階の仕込みが行われているということだ。

僕が逆算とか仕込みとかよくいうけれど、
「Xは生きていた」
「生きていただと?!」
のオウム返しに、
すでに二段階の逆算仕込みが仕込まれている、
ということになる。

つまり、
オウム返しのガワには、
その点には見えない、線の二段仕込みがある。
オウム返しのガワだけを見て、
それが効果がある/ないを議論するのは素人だ。
プロはオウム返しを見て、
それまでに仕込まれていた二段仕込みを読み取るべきである。

ガワなんて意味がないというのは、
そういうことだ。


「証拠が見つかったんだ」
「証拠が?!」

「好きな人がいるの」
「好きな人…」

「それはお前だ!」
「俺か!」

「なんでやねん!」
「こっちこそなんでやねん!」

「諦めよう」
「諦めるか…」

など、
オウム返しの例は数多く見つけることが出来るだろう。
代表的な強調、誇張の例だからだ。

それを見つけたら、
そのガワではなく、
何段仕込みでそれが用意されていたかの、
仕込みの方を見てほしい。

脚本が読めるとは、そういうことだ。


何も仕込まずに、
「還付金が二倍に増えるんですよ」
「還付金が二倍に?!」
なんて言ってるCMなんてクソだ。
最近はクソが開き直るからたちが悪いが。
posted by おおおかとしひこ at 05:08| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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