2018年11月13日

【薙刀式】各音の位置

薙刀式の各音が、どうしてそこにあるのか、
という作者の意図を記しておきたいと思う。


薙刀式をより深く理解するために、
あるいは配列作者や研究者の参考になると思い、書き記す。

いちおう頻度表と配列図を貼っておく。
作った順になるように書くので、配列図に印でもつけながら解読していくと、
理解しやすいかもしれない。
頻度表.jpg

薙刀式v10配列図simple.jpg


【あ】J
僕はこの音から始めるべきだと考えた。
人生の最初の音は「あ」だ。
利き手人差し指から、それは始まるべきだと考える。
だから何も考えずJは「あ」。
この設計から始めるのが薙刀式で、そうでないものは違う配列である。

実際のところ、「あ」の統計的出現率は低い。
だから多くの合理的配列ではわりと低い地位にいる。

FJのホーム位置は、より多くの頻度を占める、
「い」「う」「ん」のどれかであることが多い。
しかし右人差し指は第一の音「あ」であるべきだ、
という信念でここに置いた。
書くことは何かを言う事だ。合理より意志を重視した。
だからこの「あ」の位置は書く者の魂がこもっていると、薙刀式は考える。

実際のところ、「あ」の出現頻度が低いので、
濁音同時押しキーを置くことで、
頻度的にJ位置を最大頻度になるように調整している。


【る】【な】【い】【す】IMKO
最強のアルペジオは、僕はJIだと考えている。
中指は長いので、中指のホームキーはIではないか、
と考える人もたまにいるくらいだ。
JKよりJIのほうが僕は打ちやすい。
次善のアルペジオはMKだと僕は思っていて、
その最強のアルペジオのふたつに、
存在の「ある」、非存在の「ない」を置いたことが、
薙刀式のアイデンティティだ。

「る」にひっかけて、「す」を決めたことも、
そのアイデンティティの3である。
物語の基本は動詞である。
そのもっとも原始的な「する」を第三のアルペジオとして、
「ある」「ない」「する」が組のアルペジオになっているのが、
薙刀式の心臓部だ。

これは合理で決めているわけではない。
「もっとも言葉の中心にいるべきことはなにか」
という本質的な部分を考えて置いたものだ。
ほかの音は、ここに合わせて頻度を調整しながら、
運指を最適化しながら、置いていくことにした。
(もちろん、僕が考える「本質」に過ぎないので、
これが言葉の本質ではない、と考える人にとっては、
薙刀式は体に合わないかもしれない)

このことによって、
人間の本質「あい」がいいアルペジオになったので、良しとする。
わりと出現頻度の高い「いる」が同指縦連になったのは、
しょうがないとしかいいようがない。
他でカバーするとする。


【か】【し】【て】【こ】【と】【は】FREVDC
薙刀式は、あるないするを右手に置いたことで、
本質的な音を右に、つなぎの音を左に置こうと試みた。
そのうち、つなぎの音でよくつかわれるもの、
これらを左に置いた。

中段のホームに置かなかったのは、
僕が弱い薬指と小指を信用していないかからで、
左の人差し指、中指だけで扱いたかったからだ。

これらをつまりRFVEDCの6つのキーに置きたかったのだ。
その6つのうち、よく使う言葉「して」「こと」が、
アルペジオになるように配置する。

もう一つのホームキーFは、
主格の格助詞「が」がくるべきだと考え、「か」を置く。
あとはうまく連接するように配置する。

ここは実はファーストバージョンで一番悩んだ位置で、
「か」がDだったりしたこともある。
とくにCに何を置くかは、何バージョンもくりかえして試すことになった。
現在助詞の代表「は」がいるが、
薬指中段だったときのものに比べ、
「大事な音は中指に任せたい」という意志で、
やや打ちにくいがC位置にいる。

繋ぎの音にはほかに、
「に」「を」「ま」「の」などもあるが、
これらはシフトとして、
結局ここまでのどこかの裏に入ることになる。


【濁音同時押し】FJ
薙刀式の特徴の一つは、シフトの複雑さにある。
それは日本語がそもそも「清音に記号を付けて、
濁音、半濁音、小書き、拗音外来音にする」
という表記システムを使っているからで、
それぞれに対応するシフトを用意しているだけのことである。

むしろこのような違う変化に対して、
一律なシフトキーを与えることのほうが、
かえって混乱するのでは、と僕は思う。
違う変化には、違うシフトキーを与えるほうが素直ではないか、
と僕は考えている。

濁音同時押しは、逆手中段人差し指同時押し、
というほかに類を見ない同時押しキーを採用している。
これは、僕が不器用で、
人差し指ほど他の指を扱えないことが、
そもそもの発想の始まりかも知れない。
(なぜか人差し指同時押しは、聞いたことがないんだよね。
使いやすくていいと思うんだがなあ)

【半濁音同時押し、小書き同時押し】VM、シフトVM
濁音が決まれば半濁音だ。
同様に人差し指の下段とした。
とくに大きな意味はないが、人差し指で統一したかったのがあるかも。

小書きは、当初半濁音同時押しで兼用していたのだが、
「こう」が「ぅ」に化けやすいため、
シフト同時押しに落とした。どうせあんまり使わないしね。

【シフト】Space
センターシフトを採用したのは、
僕が不器用で、左右を咄嗟に区別するのが出来ないからだ。

連続シフトにしたのは、
単純にそうすると便利な運指が仕込めると思ったからだ。

実際には目論見ほどには、連続シフトで紡げる言葉は多くない。
「もの」「おも」はとくに気に入っている。

【う】L
「いう」のアルペジオから決めた。
右手には、
「する」「いう」「あう」「いる」「おもう」
「かんがえる(かは左手だが)」「やる」「える」「くる」「いく」
などの基本動詞が集まっている。そのパーツになるようにした。

【ん】[,]
「なん」の運指から決めた。
元々ここはカタナ式でも「ん」の位置でとくに深く考えずに決めた。

しかしあとあと考えると、
もうちょっといい位置にしたほうが良かったかもしれない。(たとえばFとか?)
もう慣れてしまったけど、
「ん」の位置は出現率ベスト3の大事な位置であったことよ。
しかし「なん」「たん」「らん」「れん」などが下段アルペジオで打てるのは、
なかなか気に入っている。

【た】N
前身となるカタナ式でエンターだった位置に、
決定や断定、過去の事実である「た」(だ)を入れた。
この位置で確定する、という感覚があるので、
丁度よかった。
右手は決定打を打ちたいから、右手かつ人差し指であることが、
必要だと僕には思えた。

【お】【も】【の】シフトNKJ
このあたりは単打にするか、
シフトにしてでも内側に置くかで迷い、
シフトとした。
「もの」「おも」を連続シフトで打つ事にするためだ。

「もう」をいい位置で打とうと思って、「い」裏に置き、
それから逆算で配置している。

【、。】シフトVM
カタナ式と同じ位置、人差し指下段に置いた。
句読点を打つときは思考の切れ目だと考えたので、遅いシフトでも問題ないと考えた。
(しかし、最近打鍵が速くなるにしたがって、
単打でもよかったのではないかなあと反省している)

当初はVNだったが、
人差し指のひねりが気になり現在はVMに落ち着いている。
右人差し指にとっての下段はNMのどっちであるべきか、
僕はまだ考え切れていない。

【っ】(促音)G
「って」「っと」「った」をいい運指にしようと考えた。
「っ」は音未満の記号のようなものだと考え、
4つの指の範囲にない境界位置、人差し指伸ばし位置のエリアに置くことにした。
左手担当としたのは、つなぎの音という感覚が強いからだ。

【そ】B
それ、そう、を打つときに最も使うだろうと考えた。
これ、それとペアにして、「こ」の近くに置くべき、
かつむこうとこちらをわける、左右の境界線におきたくてここにしている。
頻度的にはたいしてないので、Bという位置にはちょうど良いかと思う。

【ぬ】シフトB
もっともマイナーな音は、もっとも打ちにくい場所に置くことにした。
まあ順当でしょ。
しかし、ぬ関係で一番多く打つことになる「沼」を同指にしてしまったことは、
ちょっと悔しい。

【く】H
下駄配列でここにあったのを真似した。

漢音の第二音は8音しか来ない。
「ういんきくちつっ」だ。
これらは右手に置こうと決めていたが、
そのうち「く」「う」「い」「ん」は右手単打に置けたことになる。
「き」「ち」は拗音同時押しの関係で左手に置かなければならない制限が出た。
「つ」はあとで述べるが、「ゅつ」の運指で決めた。


【拗音同時押し】使用二音を同時押し
拗音同時押しのアイデアは、当初なかった。
イ段カナと、小書きシフトヤ行の二文字を打つ事にしていた。
しかし二音同時押しを開発中に思いついてしまったのが運の尽き。
濁音キー、半濁音キーと3キー同時押しで、
濁拗音、半濁拗音もできるぞ、
などと思いついてしまったのだ。

これまで母音が右手に集中していたことから、
8母音をすべて右手に置き、
イ段カナはすべて左手に置くことにする。

外来音の一文字目もすべて左手、という手もあったが、
「ふ」「つ」「う」などは他との兼ね合いで右手に来ている。

またこのアイデアにより、
濁音、半濁音、小書きに関して排他的配置でよかった配字が、
さらに拗音、外来音に関しても排他的配置にしなければならず、
なかなかの強い制限がかかることになる。
しかしこれを粘り強く解いた結果、シンプルな配列図に納まったわけだ。


【ま】シフトF
「まで」をアルペジオ運指にするために。
「ます」「しま」も悪くないし、頻度的にもいいのでここに。
「こま」が同指であまり良くないが、しょうがないと考える。

【り】シフトE
「つまり」を連続シフトにしようとした。
「ま」からのアルペジオでいける場所に。
「あまり」なども運指がよい。
「て」の裏で拗音は被らないと思っていたのだが、
「てゅ」があるとは気づいていなかった。不覚。
(「てゅ」はシフト「て」「ゆ」。唯一の例外)

【に】シフトD
拗音を配置するうえで、単打にするか迷ったもの。
しかし、助詞にも使うし、「は」同様、
人差し指または中指で担当するべき大事な音だと考えたので、
残ったDCのシフトの二択からいいほうを選んでいる。
(Rは「し」がいるため、拗音の排他条件から裏に置けない)

【を】シフトC
なんにでも繋がる音だと思ったので、
左人差し指中指で打てる、余った場所に置こうと考えた。
「を、」がアルペジオになったのは偶然だが、
なかなか気に入っている。


【や】【ゆ】【よ】【え】シフト[;][,]IO
8母音は右手に置く法則で考えた。
最も使う「ょう」がいい位置になるように、「よ」の位置を取る。

これらは、J(濁音)M(半濁音)同時押しとも同時押しになるので、
なるべくいい位置にある必要がある。
「く」との位置関係も考える必要がある。
「ゆ」は「ゅう」の位置で決めた。
「や」は「え」のO位置と迷ったが、
「える」と「やる」の運指のうち、
「える」を取ることになる。
「え」は「じぇ」があることを意識しての配置。

「゛ゆ」は今考えるとあまりいい運指ではない。
なのでv9から、「゜ゆ」でもOK、ということにしている。
「や」「ゆ」「よ」をシフトにしたのは、
「しよう」と「しょう」が打ち分けやすいのでは、
と思ったからだ。

【ー】[;]
長音を単打に置いている配列はそう多くないらしい。
でもカタカナ語を打つためには必須だと思った。
語尾に来るだろうから、
横文字の最後のイメージ、最後の指で打つ、右端にした。
「く」が先に来ていなかったら、Hの選択肢もあったかもしれない。

【ら】[.]
「なら」「たら」のアルペジオで置いた。
あとに述べるが、「られ」の運指が良くないのは、あまり気にいっていない。

【つ】シフトL
「しゅつ」の運指でいいところに置くためにした。
本来下段の[.]に置いたほうが運指は良くなるが、
そうすると「ふ」の置き場所がなくなるため、
ここに追いやられた感じだ。

ここに「つ」が来たことで、
濁点「う」で「ヴ」が出なくなったので、
「ヴ」キーを特設することにした。
(そもそも初期版ではQは空白だった。
それくらい僕は嫌いなキーだ。単打でESCでも置きたいくらい)
「やつ」が連続シフトでアルペジオになっているのはなかなかだと思う。

【ヴ】Q
前出。
左手に置いたほうがヴァヴィヴェヴォが組めるため。

【ふ】シフト[.]
ファフィフォフェの外来音を打てるのは、
右手で余ったところはここしかないか。
左手が理想かもしれないが、
Jが「あ」かつ濁音なので、「ふぁ」「ぶ」が区別がつかなくなる問題があり、
右手に逃がした。
「フェ」の打ちづらさはしょうがない。
そんなに使うこともないだろう、という読み。
「フォ」が意外と打ちづらく、僕は人差し指小指に最適化している。


【さ】シフトU
UにBSを置いていることからわかるように、
U位置はあまり押しやすい位置とは考えていない。
なのでBSのような「すぐそばにほしいがあまり頻度は高くない」キーに向いていると思う。
そのシフトに「さ」を置いたのは、
頻度的にあまりないことと、
「さい」「さつ」「さる」の運指を重視するためだ。

【へ】P
頻度的にここらあたりが妥当か。
他にあまり連接しないし、
「へん」が打ちにくくなければ良しとした。
Pは僕は薬指で打っている。
「スペース」は薙刀式の悪運指のひとつ。

【わ】シフトH
「吾」が古代の一人称だったことから、
右手の近いところに置きたかった。
(右手に一人称、左手に二人称、という構成を狙った。
すべては成功していないが、「きみ」が左手なのは狙い)
「わる」「よわ」などの連接は結果として悪くないと思っている。

【ち】シフトG
「しょうちょう」を打ちやすくするためにこことした。
あまり左手領域にイ段カナを置くと自由度がなくなるため、
頻度の低い「ち」をここに退避させた感じ。
しかし「チェック」「ちょっと」「ちっとも」「あっち」「こっち」
などが同指連打になってしまったのはちょっと痛い。



ここまでは、大体全バージョンを通して、あまり変わらなかった部分だ。
これ以外はわりと変わった。
運指をこれらベースで最適化するために、頻度と導線の両面から調整した感じ。
最終的に決まったのが以下だ。

【き】W
「てき」をアルペジオにするためにこことした。

きは頻度は高く、拗音を形成するため、
左手かつ単打であることが必要。
しかしもう中指人差し指エリアはいっぱいで、
薬指に担当させることになる。
当初はセオリー通り中段においてみたが、
「てき」の運指をよくするために上段とした。
とくに前滑り打ちが推奨されるキーだと思う。

【け】S
「け」と「き」は当初逆だったが、
「てき」をよくするため、
「けど」をアルペジオにするために中段とした。

「げき」「ひげ」が同指縦連になるが、しょうがない。
中段小指も考えられるが、その場合、ほかのものの収まりが悪いので、
調整用に結果的にここになっている感じ。
「けて」「げて」あたりもここならましな運指になる。
かつて右手の/だったこともあるけど、
そのときは「ける」がしんどかった。

【ひ】X
左手下段はどれも苦手だが、
左薬指腱鞘炎に伴って、
薬指をなるべく頻度の低いものにすることにした。
Xはシフトもなし、という特殊なことにしている。
「ひ」は濁音、半濁音、拗音になる特殊音なので、
シフト側に排他的条件を満たすものがあまりないので、
シフトなしと思いきっている。

【み】シフトS
「みて」を重視して置いている。
左手は拗音になるカナがひしめいていて、
「け」の裏か「は」の裏しか居場所がない。
「け」の場所は「み」の場所で決まったところもある。

【れ】/
「これ」「それ」「あれ」「どれ」「だれ」「われ」「おれ」の代名詞と、
「れて」の連接で考えている。
当初は左手薬指だったが、薬指を保護するために移動。
連接がよいのはここしかなかった感じ。
そのかわり「られ」がアルペジオではあるものの、
良い運指かどうかといわれると微妙。
「されて」もあんまりよくない。「させられて」とかも微妙。

【ほ】A
最後までZ位置と迷った。
「ほうほう」を打つのがZではちょっと辛いので、
最終的にこことした。

【ろ】Z
「ろ」は多くの配列ではシフト側に落とされる頻度のカナであるが、
「だろう」を滑らかに打つ為に、
ほとんどのバージョンで単打としている。

【せ】シフトZ
頻度で考えるとここではないと思うが、
濁音にならないカナ「ろ」の裏しか居場所がないため、
あおりをくってここにいる感じ。
「せん」「せい」「ぜん」「ぜい」などがよいようであれば良しとした。
「せき」が段越えの打ちにくい運指。
「せつ」が連続シフトになるのはちょっと好き。

【ね】【む】【め】シフトWRP
最後まで調整していたもの。
「むり」「むら」を打ちやすくするため、
「めて」「ため」を打ちやすくするため、
こうなっている。
「ねぎ」が同指連打になるのでちょっと痛い。



薙刀式の配字は、排他的配置
(濁音になるカナ、半濁音になるカナ、
小書きになるカナ、拗音になるカナ、外来音になるカナが、
単打とシフトで被っていない)
という強い制限を受けている。

そのかわり、
1モーラ2文字表記の拗音外来音をワンアクションで打て、
小書きと半濁音の、頻度が少なく記憶することが困難な音を、
配列図から追い出すことに成功し、
「清濁半濁小拗外来音同置」という極めて特殊な配列を作ることに成功したわけだ。

結果、
28キーというカナ配列最小クラスのキー数のカナ配列が誕生した。
(しかも、うち5キー、Q/UAXは1音しかない)
少ないキーは運指経路の組合せ爆発が抑えられ、
記憶の定着や運指の練りを早くするだろう。

最速であるかどうかでいうと、
ほかの最速配列に席を譲ることになるかもしれない。
しかしそれは実戦速度が遅いということを意味しない。
タイピングゲームの速さで現実の原稿を書く人はいないだろうからだ。

マスターしやすく、
忘れてもその場で組み合わせて使えて、
しかも運指がわりとアルペジオが多くて良好な、
配列であることは間違いないと考える。

運指の良さについては、文字で説明するよりも、
動画を見ることで判断していただきたい。

打鍵動画: https://youtu.be/elPWApPuvH4 https://youtu.be/6lLfgJuc7YM https://youtu.be/VX3b0syQ3Tw
posted by おおおかとしひこ at 16:58| Comment(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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