僕は、映画のポスターはその映画のイコンになるべきだと考えている。
イコンとは、
ストーリーの象徴になるべき一枚絵で、
テーマが凝縮されていて、
しかもオリジナリティがあるのが理想だ。
近所の銭湯に貼ってあったチラシをネタに、
議論してみよう。
https://motion-gallery.net/projects/pamphlet_uchuda
展覧会やりますという趣意があるのでみんなパンフ見てるけど、
それはとりあえずおいといて。
イコン的になっているのは、
「ミッションインポッシブル」と、
「オーメン」だね。
前者は、
潜入捜査の緊張こそがこの映画のイコンだ。
みんなギリギリで止まるのを真似する、
オリジナリティがあった。
(クライマックスのトンネルの中での列車の上のバトルは、
なにもイコンにならなかったね)
ストーリー、モチーフ、オリジナリティが結実した、
いい一枚絵だと思う。
後者は、
「少女が悪魔に取り憑かれる」というストーリーをよく表している。
首が180度回るのはこの映画がオリジナルだっけ。
そこのところは覚えていない。
でもオーメンといえば、
「ブリッジしながら階段を降りてくる」
のほうがイコンとしては有名だね。
まあ今回の「パンフを読む」ポーズにはしにくかったかもだが。
とにかくこの二つのワンビジュアルは強い。
他にないオリジナルだ。
これがイコンであり、
これこそが良いポスターだ。
(もっとも、それを提供するだけの、
オリジナルな絵が映画自身に必要だけど)
いまいちなやつを見ておこう。
「2001年宇宙の旅」はもっとマシな場面があるだろう。
モノリスを見る宇宙飛行士とか、
原始人が骨を投げたら宇宙船とか、
スターチャイルドとか。
これはデザイナーがあまり映画を理解してなかったと考えられる。
「ティファニーで朝食を」は、
「おしゃれオードリーヘップバーン」が、
時代のイコンそのものになったから、
ギリギリ成立しているかもだ。
これが新垣結衣や広瀬すずでは成立しない。
(そういう意味では、
「地下鉄の風でスカートを孕ませるマリリンモンロー」でも、
「ヌンチャクを構えるブルースリー」でも、
「飛ぶスーパーマン」でも、
「両手を挙げたロッキー」でも、
「親指を立てたターミネーター」でも、
「ムチを飛ばしたインディジョーンズ」でもいいことになる。
キャラクター=俳優のイコンの例だ)
「サタデーナイトフィーバー」も、
上と同様かな。
スタアがイコンになるパターンと、
ストーリーがイコンになるパターンの二種類があることが、
なんとなくわかってきたね。
ところで、
スタアがイコンになる場合、
「その独特の扮装と、ポーズ」がイコンになる必要がある。
これは、芸能人のポージングから出てくるものではない。
「その場面でそのポーズをする意味」
すなわち、ストーリー上のテーマ、
こそがイコンになるわけだ。
そしてそれが、キャラがたてばたつほど、
イコンになる。
最近のクソポスターは、
芸能人がただ並んでこっちを見ているだけだ。
特別な扮装も、特別なポーズも取っていない。
そしてそのポーズにはオリジナルがない。
仮に独特で面白く、オリジナリティあるストーリーだったとしても、
それがイコンとしてのポスターに反映させられなかったら、
そのポスターはクソだぜ。
「いけちゃんとぼく」のポスター担当はクソだと思う。
せっかく泣ける話を作ったのに台無しだ。
(僕は最後まで反対し、代替のデザインを提案したが、
「すでに印刷に回した」という政治的駆け引きにより、
件のクソポスターが出回ることになった。
デビューの監督が「印刷所を止めろ」と言えば良かったのか?)
ちなみに僕がつくった「いけちゃんとぼく」のイコンは、
野球に向かうヨシオを門柱の陰から見守るいけちゃんで、
「その角を曲がったら、いけちゃんは見えなくなっていた。」
というキャッチを書いたと思う。
映画の本質に迫った良いポスターだと思うんだがねえ。
次映画監督をやるなら、
脚本段階でイコンも用意しないと政治に巻き込まれることは、
教訓として書いておく。
つまり結局、
イコンの条件とは、
「ストーリーやテーマが一枚絵に凝縮されていて、
しかもオリジナリティがあること」
ということになるわけだ。
ということは、
その強烈なオリジナルとはなにか、
ということが大事になってくる。
強烈なオリジナルじゃないストーリーなんて、
だからクソだぜ。
2018年11月13日
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