親指シフトをマスターするくらいなら、
薙刀式のほうが難易度が少なく、便利な点が多い、
という話をする。
親指シフトは便利な配列だ。
JISかなよりマスターも運用も楽である。
ローマ字よりもすぐれた入力方式であると思う。
しかし、いくつかの欠点がある。
1 半濁音、小書き(とくにぁぃぅぇぉ)を覚えづらい。
(小指シフトでの半濁音を除く)
2 句読点、いうんという頻度の高いものが薬指、小指に集中している。
3 親指付近に丁度いいキーがあるキーボードでしか使えない。
薙刀式はこれに比べ、
1の事に関して、
・半濁音はハ行文字の半濁音シフトなので、位置や運指を覚えなおす必要がない。
小書きもア行文字の半濁音シフトなので、同。
・拗音や外来音、つまり小書きを使う音は、
「使う音ふたつの同時押し」なので、これも位置や運指を覚えなおす必要がない。
「しょ」や「てぃ」を打ちたかったら、
しとよ、てといを同時押しするだけでよい。
(じょやぴゅなどの濁拗音、半濁拗音は、
それぞれ濁音シフト、半濁音シフトとの重ねで3キー同時押し)
のような処理をすることになっている。
濁音シフトは人差し指中段との同時押し、
半濁音シフトは人差し指下段との同時押しと、
人差し指シフトになっているのが薙刀式の特徴だ。
これは中指や薬指や小指よりも、
人差指のほうが使いやすい、
という直感に基づくものだ。
また、これらの文字領域同時押しは、
「どれかを押しながら他を押す」
という相互シフト方式なので、
同時押しの微妙な秒数を気にしなくてよい。
3キー同時押しについても同様。
どれかを押しながらどれかを押しながら、どれかを押せば認識する。
つまり速い打鍵においても、
「同時に押されている瞬間があれば同時押し」
なので、速く打っても遅く打ってもよい。
親指シフトにおいての半濁音と小書きは、
「濁音は逆手シフト」という
分り易い親指シフトの法則から外れた例外である。
親指シフトの鬼門といってもよい。
使用頻度が少ないため、練習が足りなく、
実戦で滑らかに打てることはそうそうない。
薙刀式では、
半濁音と濁音が静音と同置のため、
思い出すまでもないという斬新さだ。
小書きは、
「小書き文字を使わずに拗音外来音を出す」
という方式を採用しているので、
そもそも単独小書き文字を打鍵することはほとんどない。
(どうしても単独で使いたいときだけ、
スペースキーを押しながら半濁音シフトで出る)
つまり、小書き文字も同置だ。
親指シフトは、濁音のみ同置。
薙刀式は、濁音半濁音、小書き、拗音外来音が同置。
記憶負担や練習量が少なく、知らない文字でも出せる、
という点において、親指シフトを凌駕している。
2の論点。
親指シフトは、薬指と小指の負担が大きいと思う。
僕は、薬指や小指が弱い。
他の人に比べて弱いかは分らないが、
できれば人差し指と中指と親指だけで打てたらいいとおもっている。
親指シフトの運指思想は、
「薬指と小指には大物を任せておいてそれに固定し、
他のこまごまとした文字はすべて人差し指と中指に」
という考え方があると思う。
薙刀式はそうではない。
「薬指と小指を信用しない」が運指思想である。
人差指中指だけで80%を使用する。
(親指シフトの人差し指中指の4本合計使用率は62%)
薙刀式は頻度の高い文字を、
人差指と中指に集中させている。
むしろ、人差し指と中指だけで打てないか、
くらいのことで配字をしている。
(こぼれたマイナーな文字を薬指小指で打とうとする)
しかも打ちにくいTYUは使わない。
(Uはシフト文字のみ使用)
3の論点。
親指シフトはキーボードを選ぶという欠点がある。
親指キーに使いやすいキーボードを探すことは、
シフターが最も苦労する部分かも知れない。
(マックが相性がよいのも、
マックはキーボードのデザインがずっと変わっていないからだ。
一方ウィンドウズはメーカーや型番によって、
親指キーの配置はバラバラだ)
薙刀式はキーボードを選ばない。
USキーボードでも使える。
親指キーはスペースキーの一つだけだからだ。
また、
IMEのオンオフ、カーソル、エンター、BSが、
文字キー領域の単打や同時押しにバインドされているため、
ホームポジションに手を置いたまま、
文字入力を続けることができるのが最大の利便性かもしれない。
(文字編集に必要なショートカットも、
3キー同時押しで定義されている)
30キーとスペースキーだけで、
日本語文章に必要な、
(ほぼ)すべての文字入力や編集を完結させているところが、
他の配列とは設計思想が異なるところだ。
(他のキーは死んでなく生きているので、
使いたければ使っても勿論OK。
また、IMEをオフにすれば英数モードになるので、
半角記号やアルファベットはそのまま直接入力)
もっとも、
安価なキーボードでは3文字同時押しを認識しないものがあり、
高級なキーボードが必要だというのは、
薙刀式の欠点ではある。
しかしNキーロールオーバーなものなら確実だし、
それ以外にも3キーさえ同時押しできればよいので、
そこそこの値段のものなら大抵対応している。
(2000円くらいだと怪しい)
僕は一度親指シフトをやってみたが、
小指と薬指の頻度にめげた。
また、「声と一致する」という親指シフトの便利性に、
魅力を感じなかった。
僕は脳内発声がなく文字を書く人間なので、
脳内発声が邪魔する配列は使いづらいのだ。
薙刀式は脳内発声があってもなくても使える配列だ。
ひょっとしたら親指シフトも、上達すれば脳内発声がなく打てたかもしれないが、
それにしても小指がすぐに痛くなったし、
人差指中指が余っている感じがした。
すべてにおいて凌駕しているわけではない。
薙刀式にも欠点はある。
「ん」の位置が最高とは言えないとか、
ながら同時押し機構のためそこまで速く打てないとかだ。
(ロールオーバーすると同時と認識されるため、
離してから打たないといけない組合せがある)
しかし1000文字(変換後)/10分程度では、
さほど問題とならないことは、
僕が実戦で日々使っていることから保証する。
(タイピングゲームのような、
トップスピードを競うようなときは不利かも知れないが、
たとえばゲームで分速300字の速度を出したとしても、
10分で3000字の原稿が書けるわけではない。
僕は調子のいいときで、1000文字/10分のペースで数時間書く。
とはいえ、一度に一万字を書くわけではない)
長い文章を書く為に、
ローマ字を捨てて、合理的なカナ配列を使うのは、
とても合理的な判断だと思う。
それに親指シフトは伝統的によいとされてきたが、
ここ一年で生まれた薙刀式は、
それを習得難易度、キーボードを選ばないことで、
凌駕していると考えている。
もちろんその唯一の配列というつもりもない。
月配列や新JISやTRONや蜂蜜小梅が、
同程度の候補になると思うし、
もっと難易度が高くてもよければ、
飛鳥や新下駄のほうが速さや運指効率においては優秀だと考えている。
もう親指シフトしか使えない、
という人は親指シフトと心中してもいいと思うけど、
ほかにもっと何かないのか、
と考える人は、
薙刀式が乗り換え先候補になるかもしれない。
最近、意識が高い人が、
親指シフトをマスターしようとしては、
挫折するのをよく見る。
それは練習方法に問題があることもあるけど、
親指シフトが体に合っていなかったからかもしれない。
僕は記憶が苦手で、
指も器用ではない。短いし。
そういう人は、薙刀式が使いやすいかもしれない。
候補のひとつにどうぞ。
2018年12月28日
この記事へのコメント
コメントを書く