2019年01月13日

動機の弱さ(「クリード2」評)

周りは万全のお膳立てだったのに、
真ん中が全然ダメだった。

映画としては中の下か下の上どまり。


以下ネタバレ。




往年のファンとして泣き所たくさんありましたよ。
ロッキーが「お前の時代だ」って最後拳(利き手)でタッチして、
座ってしまう、という引退シーンも泣いた。

ドラコが「あの体育館」に帰ってきたときも鳥肌が立った。
あのドラコの嫁(スタローンのリアル嫁だよね)が帰ってきたのも良かった。


でも、それだけだ。

これは、ロッキーとドラコの物語であるべきではない。

アドニスの物語であるべきだ。
アドニスって名前すら覚えてないぜ。
ドラコの息子は名前すら覚えられなかった。


「Zガンダム」で、
カミーユよりもアムロとシャアが目立ってしまったように。
「キン肉マン二世」で、
万太郎よりもラーメンマンが目立ってしまったように。

二世よりおっさんが目立つべきじゃないんだよ。
それが失敗の、大きな原因だね。


脚本論的にいうと、
動機の弱さが致命的だ。

「お前が親父を殺したんだ!
なんで壁に写真なんかかけてんだ!」
と、アドニスとロッキーは感情的に決裂するべきだ。
「俺はクリードかも知れないが、
その前にアドニスだ!」
という場面を見たかった。

シリーズをなぞるだけのものになってしまっていて、
アドニスオリジナルのストーリーが全然なかった。

一方、
ドラコ親子は最高だった。
彼らが主人公であってもいいとすら思ったよ。

母に捨てられた感じ、
試合の途中で帰られてしまった感じは最高だった。
彼が主役ならば、
母不在のまま勝利する場面だよね。
自立を意味するシーンとしてね。

ドラコとロッキーの、
レストランでの対面の場面。
「俺にとっては昨日だ」
というドラコのセリフは最高だった。
この凄まじい動機の強さ。

これに匹敵する、
あるいは勝る、
アドニスの動機がなければ、
彼は主人公とはいえない。


「俺にとっては昨日だ」に対するセリフが、
「What's your name?」「Creed!」
「What's your name?」「Creed!」
では、
やっぱり弱いね。

前作の「I'm not a mistake」に匹敵する、
いや、凌駕するほどのものがない限り、
今作は続編たり得なかっただろう。
娘が耳聞こえない程度じゃ、
逆境としては足りない。


物語は動機である。
お前はなぜ戦うんだ?
に対する、
明確な答えがない限り、
戦う物語は物語たり得ない。

続編で、
ドラコ親子をやるつもり?
タイトルは「DRACOS」かな。
ちょっと見てみたい。
彼らが死ぬ気になる物語は、
今回のぬるさを突き抜けてくれるだろう。
敵はMr. Tの息子ですかね。
posted by おおおかとしひこ at 00:01| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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