ロシアでは、バレエの後継者が減っていることが問題になっているそうだ。
ロシアのバレエといえば、バレエでも一流の一角をなす伝統がある。
伝統的によいとされてきたものが、
現在ロシアの若者に、
そんなに魅力的に映っていないらしい。
それは時代による価値観の変化と考えるか、
文化が侵略されたからだと考えるか、
人によって異なるだろう。
価値観の変化を肯定的に捉える人、
過去の因習を嫌い、新時代に希望を持つ人は、
それで滅んでも時代だと考えるかもしれない。
一方、
身体運動は記録しても再現出来ないから、
ここまで人が到達した文化は継承すべき、
と考える人は後者だろう。
むずかしい問題だ。
バレエは好きかも知れないが、
そんなに好きじゃない場合、
どっちにつくべきか、わからなくなる。
しかし、伝統文化は、だいたいがそうだが、
ものすごい努力と、ものすごい維持費がかかる。
当時は最先端だから客がすごい金を落として維持できた。
人気がなくなって、
最先端でなくなったとき、「そうまでして維持するべきか」
という議論が出てくるわけだ。
これは、バレエの話をしながら、
映画の話をしようとしている。
日本の映画はかつて最先端だった。
テレビがそれを追い越した。
テレビ業界が映画をつくりはじめた2000年代、
一瞬邦画が復活したようになった。
しかし、ドラマの延長でしかなく、
オリジナルはことごとく駄目だった。
ネットができて、
テレビは凋落した。
そのネットですら、最先端だともはやいえるだろうか。
さて。
映画づくりには膨大な金がかかる。
それだけではなく、職人を育て上げるのに、
膨大な時間と生活保障賃金が必要だ。
彼らはそれ以外で生計を立てるべきではない。
他の仕事をやればやるほど、成長が遅れる。
その渦が、そろそろ維持できなくなりかかっている。
コストダウンの波が、もう底を割っている。
ロシアのバレエと同じだ。
どうする?
たとえば、タカラヅカは、
あれだけのスペックを誇り、あれだけのファンがいながら、
赤字部門だそうだ。
しかし東宝は、決してそれを恥と思っていない。
タカラヅカを維持するために、
映画をつくり資金源とした。
映画もタカラヅカのようになってきたから、
不動産に手を出した。
東宝は、不動産王が、
赤字である映画とタカラヅカに資金提供する会社である。
松竹も歌舞伎を維持するために、
同様の事をやっている。
歌舞伎自体は赤字じゃないかもしれない。
そこの決算はしらない。
あるいは出版社も、
小説部門を維持するために、
漫画部門で儲けを出している。
さあ。
バレエ団はどうするべきか?
そこまでして守った、
芯の部分がしっかりしていれば、
それは志がある経営戦略だとほめられるだろう。
だが芯が腐ってきたら、
どうしようか。
東宝の映画は、年々レベルが下がってきている気がする。
日本の一人勝ちの映画会社として、
ここが倒れると邦画全体がやばい。
いや、やばいといっても、
もう邦画をみている人はほとんどいないから、
危機感がリアルじゃないかもね。
こういうときフランスならば、
文化保護政策があるから、国が資金を提供して守る場合がある。
日本は、歌舞伎までは守るだろうが、
タカラヅカや邦画までは守らないだろう。
時代は変化する。それは当たり前だ。
変化しても価値のあるものを守り続けるべきか、
いや、捨ててしまえなのか。
日本映画は、ロシアのバレエを笑えない。
だって最近のもの、
そもそもがレベル低いやんけ。
シナリオも稚拙だし、予算も低いし。
僕は映画監督になりたくて上京したが、
僕の好きな映画はハリウッド映画ばかりで、
日本映画はそんなに好きじゃなかったと、
最近つくづく思う。
岩井俊二や一部の監督が好きだっただけだ。
キューブリックやラッセ・ハルストレムのような映画を東京で撮りたかったが、
なかなかそうもいかないものだ。
ロシアのバレエはどうなるだろう。
とても気になっている。
2019年01月20日
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