落ちをうまくなるにはどうすればいいだろう。
単に一番面白いことをやればおしまい、
ではない。
もっとも簡単なものは、
最初の部分を使って落とすことだ。
じゃあ次のSSをきちんと落とすにはどうすればいいだろう。
一緒に考えよう。
http://www.vsnp.net/archives/30882346.html
言葉の端々に小林製薬っぽくなる男のストーリーである。
ツカミは抜群だ。
展開も悪くない。
しかし落としきれていない。
それまで架空のネーミングだったものが、
本当にある商品が初めてでてきたことで、
落ちとなったように設計された跡がみえる。
しかしそれは、落ちのコツをはずしている。
では、最初に出てきたものを使って落としてみよう。
はい、シンキングタイム。
たとえばこうだ。
おっかけて、熱さまシートまでは生かすとする。
「け、結婚してください!」
「あっ、よろこんで」
「あっ、てなに?」
「あっ、うつっちゃった」
「あっ、て小林製薬かよ!」
みたいなことか。
「この人小林製薬かも」ということを、
女に対しても使うことで、
最初の構造をリフレインして終わらせるわけだ。
別パターン。
結婚を決めたところまではそのままとして。
父親に結婚を申し込む場面をつくる。
「お、お嬢さんを…ぼくにクレール」
(あ、この人緊張して小林製薬調に…!)
「よ、よし…ヨロコーンデ」
「お父さん!」
あるいは、
女の父が小林製薬社長、
というどんでんにする。
「しゃ、社長だったんですか!」
「結婚を申し込みに来たんだろう?」
「はい。お嬢さんをぼくにクレール」
「ヨロコーンデ」
という手もある。
小林製薬調の言葉はもっといいものがあるだろう。
見事な落ち、とまではいかないが、
冒頭のことを使うと、
落としやすいことを覚えておくといいだろう。
見事な落ちにさらにするには、
落ちに関するものが冒頭に出ていると良い。
しかも、その落ちがテーマになると最高だ。
この場合、
「小林製薬は効果がよくみえるように、
親しみやすいネーミングになっている」
がひとつのテーマであるから、
「何を言っているかわかりやすい!」
と無理矢理落とすと、
一応テーマにもどっくることができる。
勿論、別のテーマで落としても良い。
その場合、ネタであるところの、
小林製薬の特徴で落とすことが、
この場合の縛りになってくるだろうね。
テーマは教訓でなくても良い。
だいたいこの話はこういうことでまとまった、
というものでよい。
ストーリーはネタのツカミだけで成立しない。
落ちとテーマが必要だ。
さらにいうと、
落ちに向かって誘導しやすいように、
展開は考えるべきだ。
今回のものは男女ものなので、
結婚をゴールにせざるを得ないかもしれないが、
「配属先の先輩が小林製薬調で…」
というツカミだってあるはずで、
そうしたら話の展開やゴールはまるで変わってくるだろう。
ツカミが抜群でも落ちない例はたくさんある。
あなたならどう落とす?
それを考えるのもトレーニングだ。
女「ガスピタンは?」
男「いけね!会議中にオナラはまずいもんな」
女「なんだか私も・・・」
男「お前もガスピタンか?」
女「・・・イマケッタ」
男「・・・あっ、」
女「・・・あっ、」
男、女「あっ、」
「はじめの部分と関係させる」が弱いと思います。
本落ちがあっての、
後日談的エピソードならあり得ます。
「男女が付き合う→結婚→子供が生まれる」
は時系列に過ぎず、物語ではありません。
人生の一大イベントの劇的さに誤魔化されています。
この例だと、
「付き合った男が小林製薬だと思ったら(ここまで冒頭)、
最後にはそれに染まった(落ち)」だけで、
冒頭の強さに対して落ちの強さは普通です。
どうせなら、赤ん坊が初めて覚えた言葉が小林製薬的なもの、
まですっ飛ばせば、ありえるかもなあ。
誤魔化されてる、というのは確かに、と(笑)
こういうチャレンジ企画みたいなものは、
脚本募集以外で大岡さんと交流がもてるので
楽しいです。
脚本全体ではなく、「部分の添削」というような
趣もありますし。
また、よろしくお願いします。
副社長「さすが女君が開発しただけのことはあるな」
女「恐縮です。ただ副作用の・・・語尾が」
女「次第に自覚症状もなくなってくるようですし」
副社長「気にするな。万一のときは私が全責任を取る」
女「強引ですね・・・でも私は好きだな。そんな副社長」
副社長「・・・」
女「我が社を陰で支えているのは、間違いなく副社長ですよ」
副社長「・・・ホメスギン」
バッドエンドが悪いわけではないですが、
今まで出て来ていなかった副社長が、
デウスエクスマキナ感がつよく唐突かなあと。
「ホメスギン」と冒頭の違和感に落としたのは悪くないけど、
小林製薬社内のちいさな話に閉じてしまったのが、
いいと思えません。
結局内輪揉めにしかならないので。
広い世界が、
主人公の存在や活躍によってどう変わったか、
というほうが面白いかと思われます。
この落ちの場合、真の主人公は女だったわけだから、
この女が社内の男を実験台にして、
結局何をしようとしているのかよくわからない。
惚れ薬開発は小林製薬の業務と関係ないので、
そのへんが小林製薬の本来持つ間抜けさと合わない気がします。
つまりテーマが行方不明になっている。
どんでん返しをしてやろうという意欲は面白いですが、
どんでん返しが落ちとして機能してないということです。
ただどんでん返しをやりたかっただけになっている。
あと単純に、
ホメスギンはそんなに面白い言葉ではないので、
その後たくさん現れるダジャレの中に埋もれてしまい、
最後まで記憶に残らないと思います。
「言葉の端々が小林製薬になる」部分が面白いのであって、
ホメスギンが面白いわけではないと。
なのでホメスギンに落としても、落ちた感じは弱いかと。
男「俺がネーミングした商品が大ヒットして昇進だ!」
女「あら、おめでとう! 最高よ。あなた」
男「ホメスギン・・・・・・じゃなくてほめすぎだよ」
女「あら、あなた。ドシタノン?」
男「いや、もうネーミングにこだわることはなくなったんだよ、俺」
女「ソナノネン・・・…あらやだ私ったら」
男「どうしたんだよ、お前まで」
女「イヤダーヨ、なんだか……オカシーノ」
男「どうしたんだ? 俺はネーミングのことが頭がいっぱいで……てことはお前、今ネーミングのことかんがえてるのか?」
女「ソウナーノ。オナカノコーノ」
男「そうか! やった! ありがとう! これからは名前を一緒に考えような! オナカノコーノ!」
女「うん! オナカノコーノ!」
テーマを貫くのが実力的に難しかったので、ジャンプさせることに注力しました。
でも作品の色が暗くなったこと、整合性のなさなど、自分でもあまり納得できていないオチでした。
結婚・子供がすでに例としていて挙げられていたので、それ以外でと思ったのですが「小林製薬社内のちいさな話に閉じてしまった」や「「言葉の端々が小林製薬になる」部分が面白いのであって、ホメスギンが面白いわけではないと」という指摘に納得です。
時間が飛んだにしてはあまり世界が進んでいないので、
時間を飛ばすなら内容を飛ばすべきです。
結婚したら特殊能力がなくなる、
という定番を持ってきたのはアイデアとしては面白いですが、
ラストシーンなのに説明が多すぎてだめですね。
これを3行くらいでスパッと落とせればありですが。
あと、
小林製薬の、微妙なセンスの悪さとなぜか残るネーミングに、
あまりなっていないのが残念です。
たしかにキレが悪すぎました。
また言葉選びがゆるすぎました。
アイデアを思いついたことに興奮してしまって、言葉を吟味する手間をおろそかにしてしまいました。
まだまだです。精進します!