前記事のつづき。
なぜ小林製薬の話(オリジナル)は、
冒頭を面白いと思い、
落ちをいまいちと思うのだろう。
ジャンプの距離で考えてみよう。
日常によくある詰まらない出来事から、
浮遊した非日常を、
日常からジャンプしている、
と考えることにする。
そのジャンプの距離が面白さと比例するように思う。
もちろん、
飛距離が遠すぎると、
ぶっ飛び過ぎていてついていけない。
小さなジャンプでは、見世物として面白くない。
そのあたり、
オリジナルのツカミは抜群だ。
ちょうどいい離れ具合で、
だからぼくは記事に目を止めて、
最後まで読んだわけだ。
しかしながら、
途中の展開で、
男が小林製薬の人だとなってからは、
ジャンプが減ってくる。
理想はどんどん飛距離が伸びていくことだが、
どんどん日常の予想の範囲内に収まって来て、
日常からのジャンプの距離が減ってくる。
ここが、そんなには盛り上がらない理由だ。
作者もそう感じたか、
社長という飛び道具を使って、
更なるジャンプを試みた。
これは功を奏し、再び上昇気流に乗るかと思われた。
だが落ちで失速する。
ジャンプの距離が足りないからだ。
場面場面で感じる微分的面白さは、
ジャンプの距離に比例すると思う。
(ついていけないぶっ飛びは除く)
一方、全てを通じて感じる積分的面白さは、
落ち方で決まる。
で、落ちの飛距離が、
日常とほぼイコールになってしまったのが、
この話の、
「冒頭は面白かったが落ちが弱い」
という印象につながっている。
つまり、
落ちの飛距離を、冒頭レベルにしなければならない。
僕らが冒頭で、
「なかなか飛ばしてるな」
と思うくらいのジャンプを、
もう一度決めなければならないのだ。
しんさんの作例では、
超えたと言えないだろう。
だから微妙なのである。
大団円ではあるものの、
冒頭を超えていないので、
凡庸に見えてしまう。
冒頭が面白く、その後が微妙になるのは、
出落ちといわれる。
出落ちとはすなわち、
出たときのジャンプが最高で、
その後それを超えなかったもののことをいう。
落ちは、もっと飛べ。
単純にそれだけのことだ。
そしてなお、
冒頭と関連したものにして、
かつテーマに落ちるものが、
最強の落ちだ。
男「実はもう一つ、君に謝りたいことがあるんだ」
女「・・・何?」
女「それって・・・サロンパス!久光製薬!」
男「元カノが忘れられなくて」
女「ひどい!」
男「でも、今日でコイツとはもう・・・」
秘書「社長、オイカケロンのあと、彼になんと?」
社長「いい加減、肩の荷を降ろせ、と」
男「僕と一緒に・・・え?熱さまシ・・・」
女「もう・・・冷ます必要なんてないから」
男「・・・肩、クサいよ?」
女「ふふ・・・キニシナイン」
そもそも、落ちは冒頭にあるものを使う、
というのが元記事の趣旨です。
ツカミの部分に元カノの話があればオーケーですが、
これまでなかった要素で落とすのは、
ただのデウスエクスマキナというものです。
かといって、
「今彼女がいなくて、元カノが忘れられない男と初めてのデート」
などと冒頭に付け加えても、
ただの説明にしかならず、
ツカミのジャンプ力が落ちるので賢明な策ではないでしょう。
また、ツカミは、掴むだけでなく、枕の必要があります。
枕とはすなわち落ちへの伏線と考えるとよいかと。
落語「まんじゅうこわい」のテーマは、
「人の欲望には際限がない」です。
「今度はお茶が怖い」という落ちのための枕は、
「この世に何も怖いものがない、
なんて男がいるのでしょうか?」
だったりします。(語り手によって異同あり)
「この世に怖いものがないだって?」
が、ツカミかつ枕になっているわけです。
小林製薬の話の問題点は、
実はツカミだけに特化していて、
枕が考えられていない、
というところにあるかもしれません。
しかし、冒頭(や途中)にあるものだけを使って、
上手に落とすことも不可能ではないでしょう。
ただ面白いことを言えば落ちになるわけではない、
ということを考えにいれてください。
こんなに真正面から受け止めていただけるなんて。
つい主旨を忘れ、勢いで書いてしまいました。
真夜中のおかしなテンションだったとはいえ、僕も真剣に考えたつもりです。
朝、目覚めと共に、恥ずかしさの波が一気に押し寄せてきたのですが、
それでも、大岡さんなら何かしらのリアクションは
必ずしてくれるはずと信じて、
こうして今、ページを開いた次第です。
二回、投稿するのはしつこいかなと思いましたが、
とても手応えのある記事だったので、
チャレンジさせていただきました。
本当にありがとうございました。
精進します。
女「急に真面目な顔して。そこは、結婚してクレールじゃないの?」
男「小林製薬がダジャレを使うのは、消費者に響く言葉で伝えるためだ」
男「今、これ以上のネーミングは考えられない」
男「結婚しよう」
女「・・・はい」
今回は勉強になったのではないでしょうか。
テーマに落とそうとすることはいいんですが、
今度は冒頭のツカミと関係なくなっていますね。
ツカミの枕をうまく使い、
かつテーマに落とし、
かつジャンプしなければいけない。
落ちこそがストーリーのすべてだとぼくは思います。
監督のおっしゃる通り勉強になりました。
貴重なお時間を割いてくださったことに感謝します。
いつもオチに四苦八苦するのですが、上手なオチを生み出す為の練習方法などないものでしょうか?
数をこなすのが最適です。
「自分で」落とせるかどうか、という能力の領域なので。
そのためには短編がサイクルを回せます。
その一方で、名作の落ちをたくさん研究するのがよいです。
「落ち」だけをネットで検索するとどんでん返しばかりが引っかかるので注意。
丹念に古今東西の名作を幅広く見て、
それらがどういうものをどう落としているか研究して、
自分ならどう落とすかをシミュレーションし続けることですね。
ネットフリックスなどでは古今東西ぶりが分かりにくいので、
物理で陳列されているツタヤなどで、
棚を丹念に見て回ることをおすすめします。