さあいよいよminiAxeをつくるぞ!
工程の俯瞰:
1 キースイッチとキーキャップの準備
2 届いたminiAxeのパーツの検品
3 半田付け
4 ファームウェアを焼く
5 ファームウェアの変更
では行ってみよう。
1 キースイッチとキーキャップの準備
36キーを何軸にする?
全部同じ軸でいい?変荷重もありえるぞ?
キーキャップは何がいいかな。
とりあえずのものにして、
あとで変更もできる。
miniAxeのいいところは、
MX互換軸のホットスワップ(キースイッチを半田付けしないスタイルで、
ソケットと呼ばれるものを半田付けする。
このソケットにキースイッチを抜き差しするだけでよく、
つまりはあとあとキースイッチを交換できるのだ!)
に対応しているところだ。
普通の自作なら半田付けを全部はがさないといけないところが、
一瞬でぽこっと抜けるのは快感。
海外からキースイッチやキーキャップを取り寄せるパターンだと、
かなりかかる。
とりあえず日本のすぐ手に入る何かを買って、
テスト用に使うといいかもしれない。
(僕はNiZ用に様々なキーキャプを買ってたので、
新しく買うことはなかった)
2 届いたminiAxeのパーツの検品
小さな段ボールで届くminiAxeに、
胸がときめいたことだろう。
最初にやることは、パーツの検品だ。
あまりに小さくて気を失うかもしれない。
まずは設計書の通りに数が揃っているかを確認しよう。
僕の場合、ソケットがひとつ、
フィルムが剥がれた隙間から落ちていて、
プチプチの中で発見された。
それぞれをまだフィルムケースから出さず
(出すのは半田直前!)、
パーツ名やどこにつけるのか(R1とか)などを、
マスキングテープをはって付箋がわりにすることをお勧めする。
なくしにくくなるだろうし、
万が一机から落とした時も目印になる。
(一度も落とさない保証はない!)
3 半田付け
さあ半田付けだ。
僕の場合、全部で14時間かかった。
初日8時間、二日目6時間の行程だった。
僕は絵を描くので、手先は器用なほうだと思う。
不器用な人はもっと覚悟した方が良い。
一発でうまくいかず、
半田吸い取り線でやり直したところもある。
そんなこんなの14時間。
呼吸するのを忘れているので、
松ヤニくさくなる前に換気した方がいいぞ。
その前に、絶対に必要なものはルーペだ。
抵抗とかコンデンサ見た?
僕は米粒の1/8(縦横高さ1/2ずつ)と表現した。
これを正確に半田付けするには、
肉眼では無理だろう。
せめて2倍、できれば3倍の拡大率のあるルーペが欲しい。
デカイ拡大率のものを求めてハンズに行った。
おじいちゃんが持つような虫眼鏡が拡大率もいいし、視野が広くなる。
新聞の小さい文字がサンプルで置いてあったので、
「影響」の線がどれくらい拡大されるか、
肉眼で確認しながらやってみた。
最も細かいUSBマイクロコネクタは、
一本の線が0.65mmらしい。
これを隣り合った5本、ショートせずに繋がなければならない。
その覚悟でルーペを選ぼう。
しかし僕は虫眼鏡を買ってしまったので、
作業台をどうつくるかが困った。
サードハンドでは重すぎてこけてしまう。
タブレットスタンドやらを組み合わせて、
結局ガムテでぐるぐる巻きのものをつくる。
カッターマットの作業台に対して、
ルーペが最大拡大率かつピントが合うような高さを、
先に出しておき、その高さに合わせた台をつくった。
あとあと、スタンド付きルーペの存在を知って、
悔しい思いをする。
さて、初手にして中ボスクラス、QFPの半田付け。
何度も何度も、コテを握り、
空半田付けを繰り返す。
隣り合った足に触れたら終わりだ。
(終わりではなく、あとあと直せることを知る)
線に対して直角にコテを当てる人と、
同直線上に当てる人がいるそうだ。
直角に当てた方が、
リードとランドの加熱を両方同時に出来るので、
僕は直角に当てるのが正解だと思った。
https://www.youtube.com/watch?v=5uiroWBkdFY
だといっぺんにみっつくらい一気にやってるけど、
僕は怖いので、ひとつひとつ確実にやりました。
半田付けの極意は、
前記事にも書いたように、
「冷たい液体の中に熱い液体金属を泳がせる。
そのとき液体金属は、
同じ温度の熱さの金属の間に滑り込もうとする性質がある」
ことを利用するといい。
具体的には、
1. フラックスを塗布して半田が泳げるだけの海を作る
2. コテ先に半田を乗せ、天側に液体金属を出現させる
3. コテを寝かせて、二つの金属、リードとランドに接触、
線で温める。このときフラックスが多すぎると、
ジュウって蒸発していくことで適温を知れる。
4. コテをくるんと軸ごと回転させて、
液体金属を熱い金属に触れてやる。
あとは毛細管現象で、熱い金属同士の隙間に液体金属が入っていく。
という手順が理想だとおもった。
温めが足りないと、半田が途中でダマになるし、
フラックスが足りないと、半田が途中までしかつかない。
しかしそうなった場合でも落ち着いて、
フラックスを塗布して液体金属の泳げるだけのプールを再び作り、
二つの金属を同時に温めると、
勝手に溶けた液体金属の半田は、
金属の表面に酸化膜を作っていく。
で、半田ごてを離せば冷えて固まるわけだ。
隣の足にくっつかないだろうか?
とヒヤヒヤしていたが、
「液体金属は、同じ温度のところへ流れる」
(=熱い金属は冷えた金属を嫌がる)
という性質がわかれば、
フラックスで隣の足を保護して温度を常温に保ち、
隣の足を温めさえしなければ、
隣の足はフラックスと同じ温度の何かでしかない。
熱い液体金属は、熱い金属の方へ流れていく。
この原理が分かるまで、
動画をたくさん見たり、
実際にやってみるとよいだろう。
半田をコテに載せすぎたとしても、
流し込みを少なくすることは、
コテの回転角で調整出来るから、心配しなくていい。
ただし一箇所を半田付けしたら、
耐熱水スポンジにつけて、半田をコテ先から毎回全部拭うことだ。
常に同じ状態から始めるようにすると、
失敗を避けられる。
うまい人は連続てして出来るんだろうけど、こちとら素人だ。
このようにしてQFPの一辺をやれたら、
残り三辺をやるとよい。
最初にマスキングテープをうまく貼っておくこと。
足を露出させて半田の邪魔にならないようにしながら、
かつ上下左右の位置をピタリと決めよう。
また、長めのテープにすることを勧める。
フラックスの海が出来たとき、
そのヌルヌルがテープと基盤の間に入り込み、
ヌルッとテープが剥がれるからだ。
長いテープなら、手前がやられても奥が生きている。
また、半田が失敗しても、
落ち着いてはんだ吸い取り線を使おう。
フラックスを塗ってから使うこと。
(とにかくヌルヌルさせとけば焦げ付きを防げるから。
ヌルヌルは断熱材だ)
僕は何度も吸い取り線を左手で直接触ってしまい、
340度の熱を指で受けた。
ケースを持ってやろうね。
まずは一つつけられたら、
miniAxeの、最初の山を越えたと考えてよい。
僕は毎回、
左手→右手と同じパーツをつける段取りで繰り返した。
また、フラックス洗浄液(イソプロピルアルコール)で、
丹念にフラックスを除去すること。
手についたらベタベタが他にも移っていく。
PCBの穴を通じて、裏、下のカッターマットにも付着する。
これがあとあとよくないので、
毎回マットごと洗浄液を付けてはふき、綺麗にしよう。
さらに、半田をつける前に、
つける場所も洗浄液で掃除しておこう。
僕は綿棒と、面を拭くのにキッチンタオルを使ったが、
糸くずとか出てそれがフラックスに絡むので、
いっぱいまで使わずすぐに替えていこう。
ルーペを使った手元の細かい作業には、
いいライトも必要だ。
幸い僕はコンテを書くときに使う、
いいスタンドライトを持っているので、
それが役に立った。
第二の山は、
水晶発振器、抵抗、コンデンサだ。
とにかく小さい。
フィルムから外した瞬間にピッて飛んだら終わりだ。
ピンセットできちんと挟まないと、これまたピッて行く。
慎重に、ゆっくりと、爆弾処理班のように。
また、これらをマスキングテープで仮止めすることが難しい。
一応ギリギリ止めても、
フラックスのヌルヌルで動くことがあるし、
半田ごてを接触させて熱を伝えるときにも動いてしまう。
結局左手でピンセットで押さえつけ、
右手の半田ごてで接触するという、
ステーキを切るときみたいなのがうまくいった。
しかしピンセットでは隔靴掻痒の感があったので、
直接左手の指で押さえたこともある。
これまた340度の熱が伝わってくるので、
短時間の一瞬でやることだ。
この集中力で、一日の集中力全部使うよね。
(あとあと知ったのだが、まず一個のランドに半田を置いておき、
パーツを正確に置き、ピンセットで支えて、半田に熱を与え、
片方のはんだ付けを終える、というテクニックがある。
これを知っていたら、手を火傷しながらやることもなかったのう……)
僕が「今日はやめとこう」と思ったのは、
USBコネクタの半田付けだ。
オーバーハングしていて、
ここにコテが当たることが容易に想像できる。
また、斜めにコテを入れるには狭過ぎる。
いままで基盤を水平においていたが、
基盤を斜めに保持する必要がありそうだ。
そうなると影が邪魔にならないように、
ライトも動かす必要が出てくる。
僕の一日目はここで終わった。
翌日、
動画検索して、USBコネクタの半田付け動画を見る。
https://www.youtube.com/watch?v=fj0QnScWy24
が、失敗からのリカバリーも含めて役に立った。
ずいぶんフラックスをつけるんだな、
仮に隣とくっついてしまっても吸い取ればいいんだな、
仮に固まってしまっても、熱で溶かし直せばいいんだな、
ということがわかった。
じゃああとは角度だ。
やりやすい傾きをつくり、
マスキングテープできちんと固めて、
ひとつひとつやる。
途中、オーバーハングしてるところにコテが当たり、
上にも半田が付いてしまう。
しかしこれはあとで吸い取り線で取ればいい、
ということに気づき、下側の4点の半田付けに集中した。
フラックスが多くて相当ベタベタになったけれど、
5×4つの結線に成功した。
この山さえこえれば、
あとはなんとかなる。
36個のソケットは総仕上げだ!
…と思いきや、
アクリルプレート保護の紙剥がしが、
案外難しかった。
端を爪でこすり(爪の方がアクリルより柔らかい)、
ちょっとしたギャップが出来たらそれをピンセットで摘めばなんとかなったけど、
ちゃんとしたやり方あるのかなあ。
miniAxeのロゴの部分の、斧の中とAとeの真ん中の紙が、
なかなか剥がれず、意外な強敵でした。
スイッチの取り付けは、
スイッチの金属の足が曲がってることが多いので、
毎度まっすぐになってることを確認すること。
(銅だから手で曲げられる)
僕は確認ミスで、一個曲がったまま押し込んでしまい、
銅の部分を真ん中から曲げてしまった。
まっすぐに復元することは難しく、捨てることにした。
こういう事故や、スイッチ不良(2/36)があったので、
スイッチは大目に買っておこう。
また、アクリルプレートなどを組み立てる前に、
フラックスのベタベタは出来る限り洗浄液で拭いて置くこと。
何回拭いても皮膜を作って一生ベタベタするが、
ある時点で諦めざるを得ない。
さあ、いよいよケーブルをつなぐぞ!
この時点でテンションがあがり、
20gのスイッチをバシバシ薙刀式で空打ちした俺がいた。
4 ファームウェアを焼く
ひとつ忘れていたのは、
「USBコネクタの中の洗浄」。
USBを挿すときは分からないけど、
抜くときにものすごい抵抗がある。
抜かれたケーブル側のコネクタを見ると、固まった松ヤニが。
丁寧に中を洗浄しておくこと。
幸いアルコール洗浄液は揮発性なのであとに残らないのがいいよね。
さて。
僕は初めて繋いだとき、右手からマシンに繋いでしまった。
左がマスターで右がスレーブらしい。
なので左の左のコネクタからPCに繋ごう。
一発でデバイスと認識されたときには、
大声出したものだよ。
あとはドキドキしながら、make miniAxe:default:dfu。
書き込みが終わって、文字を打った時の高潮よ!
デフォルトのキーマップはこれでいけた。
さあ、いよいよ本番、キーマップを自由にしていくぞ。
その3につづく。
2019年02月23日
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