2019年02月23日

変化の不安に作者が耐えられていない

前記事のつづきのこと。
挫折の原因のひとつは、これにあるのではないか。


物語とは変化である。
それももとに戻る可逆的変化ではなく、
おこった出来事に影響をうけ、
元に戻らないぐらいの劇的変化を描く。
影響を受けるだけではなく、
影響を与え、互いに影響しあうわけだ。
これによって、
ストーリーが始まる前とはまったく違う、
人格、性格、人間関係、世界の在り方、価値観が変容すること、
しかも全く元に戻らないようになることが、
物語の結末であり、その意味である。

ということは、
元に戻らない変化をどう作るのか、
ということが物語を書くことである、
と言っても過言ではないだろう。

変化は不安で、怖いものだ。
どうなるかわからないから、
なるべく元に戻りたい。
本命に振られるのが怖いから、キープをつくる、
みたいな心理だろう。

この恐怖に耐えられないから、
物語を前に進めることができなくて、
挫折に至るのではないか、
というのが本題である。

人間関係が壊れるのが怖くて、
告白できない、みたいな心理だろうか?


なにも現実ではないのだ。
やってみればいいではないか。
そのときに違う方向にいってしまったな、
と感じたら、
その前に戻ってリライトすればいいんだよ。
壊れるのが怖いから、時間を前に進められない、
できるだけこのままでいたい、
なんて思うから、
ストーリーはちっとも進まずに、
トンネルに入らない状態で、
ずっとキープがかかっているんじゃないか?

物語は起伏である。
変化の起伏である。
もう元に戻れなくなると知って、
ゴールを目指す冒険だ。

もちろん主人公は、それを知ったうえで、
冒険の旅に出る決意、宣言をしたうえで冒険に出る。
それが第一ターニングポイントであることは、
すでに多少の勉強をしたら知っているだろう。
それはストーリーが始まって、
わずか1/4のポイントであることも、
知っているだろう。
あとは、元に戻れない海を、
ずっと泳ぎ続けることに等しいのだ。


変化を恐れて冒険しないのは、
第一幕にとどまりつづけ、
物語が始まらないことを意味する。

恐がる女が、冒険を怖がり、
トンネルを抜けようとしないのだろうか。
これは女差別だろうか、僕はわからない。



変化を恐れるな、
なんて通りのいい結論になるのは、
あんまりおもしろくないね。
変化にはリスクがある。恐怖や不安もある。

リスクを取ってその先を描き、
その冒険を成功に導くのが、
あなたの仕事なんだよね。

だから第一幕は大事なんだ。
そのリスクをいとわないくらいの、
動機を描く必要があるからね。
モチベーションのない人が、
変化の恐怖を乗り越えて、冒険の旅に出るはずがないからね。

もう元に戻れない。
それを覚悟で、よっぽどの理由で、賭けに出る。
そしてそれを成功させる。
物語というのは、
バーチャルでそれをやり遂げることだ。
posted by おおおかとしひこ at 13:24| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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