以前議論した、テーマが一意には決まらない、
という話。
これは表現がひとつに収束しないという、
根源的なことであるとも思うが、
同様に、
テーマがひとつであるとも限らない。
テーマは複数あってよい。
なぜなら、
物語にはサブプロットがあるからだ。
つまりサブプロットが抱えるテーマを含めれば、
複数のテーマが同一の物語に存在することになる。
極端な例を考えると、
主人公が行動するときに、
敵対者が存在するはずだ。
それは敵でもよいし、ライバルでもよい。
ストーリーとは複数の人間の目的が異なることから生まれる(コンフリクト)
なわけだから、
必ず主人公以外は、
主人公の目的と異なる目的を持つ。
その敵対者から見てみると、
ある動機と目的をもって行動するのだが、
主人公が目的を果してしまうので、
事実上目的をかなえられなくなる、
つまり敗北の物語になることになる。
ここから現れるテーマとは、
「そういった目的や動機や行動は、よくないし、
失敗するべきである」
ということである。
つまり、悪役は必ず敗北する。
「悪いことはよくない」ということがテーマになるからだ。
敵対者が悪い人間として描かれる理由がこれだ。
敗北するべき理由があるし、
悪はよくない、という王道のテーマになるからである。
主人公のテーマのサブテーマとして、
「主人公の行動や結果には価値があった。
そして、悪役の行動や結果から、
悪はよくない」
という負荷が加わる構造になるわけだ。
つまり、悪役のサブプロット(敗北する)
から立ち現れるサブテーマが、
テーマを裏から強化していることになるわけだ。
これは勧善懲悪ものでは必須の構造だが、
なにもそれだけではない。
敵対者が悪とは限らない。
別の価値観によるものがあるだろう。
そこに完全敗北ではなく、
微妙な勝利に終わらせることによって、
完全な悪ではない、ということにする手だってある。
ドラマ風魔の壬生がその例で、
彼の行動は悪として描かれているわけではない。
離反した夜叉の価値観がより悪としてえがかれるので、
壬生は完全な悪の価値観の代表ではない。
彼なりに正義があった、という描かれ方になっている。
そしてそれはメインテーマであるところの、
「絆」と対比されて、
孤独の壬生の敗北は、
絆の大事さを浮き彫りにするわけだ。
(死の間際、武蔵との絆をえがいたのは、
絆こそこの物語のテーマだと知らせるためである。
壬生は残念ながら退場するが、
絆というテーマを知ってから死ぬので、
人生としては勝利者だ。敗北者ではない)
このように、
主人公以外のプロットが、
テーマを持つ。
そしてそれは、テーマを裏から強化する構造になっているのが普通だ。
もちろん、主人公のもつメイン以外のサブプロットが、
その役目を果たすこともある。
事件解決がメインプロットななかで、
その主人公のラブストーリーがサブプロットになることが多いが、
そのサブテーマが、メインテーマと全く関係していないのだとしたら、
そのラブストーリーを挿入する意味がない。
ただの時間つぶしだ。
そうではなく、
すべてのサブプロットの、
すべてのサブテーマが、
メインテーマと関係するようにしておくべきである。
この物語のテーマは何か?
という問いに答えるとき、
メインプロットのテーマがそれである。
しかし、それだけではなく、
友情や努力の大切さや、
悪は栄えず滅ぶことや、
金より大切なものがある、
なんてことが、サブテーマになっていることが、
よくあるものだ。
だからテーマは一つとはかぎらない。
それらのテーマのセットが、テーマである、
と回答するのも、間違ってはいない。
ただ、それらのサブテーマたちが、
まったく関係ないものたちであったら、
わざわざ一本の物語にまとめる意味がないよね、
ということだ。
よくできた物語は、
サブプロットがまとまりがあり、
かつサブテーマがメインテーマを強化するものに、
整理されているものだ。
列伝形式では、
そうはいかない。
大抵それぞれ勝手な人生を生きているだけで、
それぞれ勝手なテーマの消化をしているだけである。
主人公のメインテーマでまとめるということは、
列伝形式の事象を、
サブテーマもふくめて、
ひとつのものに編み上げていくことを意味する。
何がいいたいかというと、
三国志演義は、ストーリーとしては拙劣である、
ということである。
(もちろん、キャラクターやエピソードのひとつひとつは面白い。
しかし、一本のストーリーとして、まとまっていないだけだ)
あなたのストーリーの中で、
サブキャラクターや、
主人公のサブプロットは、
どういう結末を迎えるだろうか?
それは、どのようなサブテーマに帰着することになるだろうか?
それらがメインテーマと、なんにも関係ないなら、
いれる意味がない、と断言してもよい。
テーマたちが、集合として、
興味深いひとつのテーマに編まれているから、
物語は面白いのである。
2019年02月26日
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