2019年03月08日

キャラクタービジネスと長期連載

漫画はキャラクターなどとよく言われる。
ストーリーなんぞどうでもいいのかな。
(そんなことはないけど、
ストーリーとキャラクターの配分が、
よりキャラクター寄りなのかもだ)

一方映画は、ストーリーこそ最重要だと考える。

その差は、触れている時間の差だと思う。




二時間と、数年。
一気に見る二時間と、
週一で部分だけ見て、間に別のことをする。

その差のような気がする。

一気に見る二時間は、
焦点で引っ張り続けて、
それがどうなったかで落ちをつける。

休み休み見る長期連載では、
焦点だけで来週まで引っ張ることは難しい。
ネットのある今では、
特に予想が広まったりしてしまって、
焦点そのものだけではすぐにネタも尽きるだろう。

だから、長期連載では、
キャラクターの人気で持たせることが多い。

毎回ストーリーの焦点を都度考えるより、
一度作ったキャラを振り回す方が、
楽だし安パイだから、ということがあるような気がする。


ついでに、キャラクターは、
キャラクタービジネスになる。

これは歌舞伎の時代からあった、役者絵、
つまりブロマイドビジネスだ。
(もっというと、神の図像を売る、偶像崇拝ビジネスだ。
どんな宗教も最初は偶像崇拝を禁止するが、
そのうち偶像でキャラクタービジネスをお布施という形で展開する)

キャラクターグッズ、
コスプレ、ゲームなどの他メディア展開、
二次創作などのファンアート、
全てはキャラクタービジネスになる。

それはストーリー展開で稼げる、
一次ビジネスの額より全然大きい。


たとえばジャニーズのコンサートでは、
コンサートそのものの収入、楽曲での収入よりも、
コンサートでのグッズの売り上げ(物販)
の方が圧倒的に売れる。

ジャニーズは写真を他メディアに使わせないことで有名だ。
役者絵なるブロマイドは、
ジャニーズの独占商売にしているわけだ。
一時期ジャニーズ主演の映画のポスターなのに、
主役の写真が使えない時代があった。
今では解禁されてもいるけど、
似顔絵にしたり、別のビジュアルを強要された事情がある。
女性誌の紙面をネットに載せられなくて、
ジャニーズだけ塗りつぶされて、
「かまいたちの夜」状態になった事件も記憶に新しい。

それはすべて、一回のコンサートで数億円売り上げるという噂の、
キャラクターグッズのためである。

ジョージルーカスは、
スターウォーズを作った時、
脚本家や監督の微々たる権利を放棄して、
キャラクターの版権だけ確保したという。
これが、のちのちキャラクタービジネスの、
巨万の富を築くことになるわけだ。
オモチャやフィギュアやその他その他、
それでルーカスは一生食える。


長期にわたって触れるものは、
ストーリーではなくキャラクターだ。

ストーリーは、わずかな短時間で集中して見るものであり、
それは巨万の富を生まない。

だから、
よくわかってない人も、
「キャラクターが大事」と、
誤った認識を持つ。

たとえばキャラクタービジネスをやろうとしていて、
ストーリーの出来不出来のことをよくわからない、
製作委員会のメンバーなどだ。


どんなに魅力的なキャラクターでも、
クソみたいなストーリーなら詰まらないのに。

どんなに魅力的なキャラクターでも、
クソみたいなストーリーなら、
キャラクタービジネスには至らないのに。

役者絵で稼ぎたいなら、
その本番の舞台を最高にするべきなのに、
役者絵の出来不出来しか言わない、
プロデューサーや編集者が増えたのだろう。


キャラクターは、だから金になる。
その悪魔の囁きの正体を、よく知ろう。

あなたは魅力的なキャラクターを作らなければならない。
それは、
キャラクタービジネスや、
長期連載の為ではなく、
ストーリーをより面白くするためである。

キャラクターとストーリーの両方が
本気で面白かった時だけ、
キャラクタービジネスは大成功する。


そしてストーリーというのは、
わずかに限られた期間中に、
一気に駆け抜ける様式で書かれるものである。

本末転倒的な、
ストーリーとキャラクターの関係を知っておこう。


たとえばゲームの世界では、
レアキャラガチャとか言ってるよね。
これもキャラクタービジネスだ。
キャラ集めのゲームはすべてキャラクタービジネスだ。
ゲーム内経験がシナリオに相当するが、
プレイヤーによってシナリオが同じにはならないので、
ゲームとはもはやシナリオを放棄した、
仕組みの遊びになっている。

野球にたとえれば、
野球のルール=ゲームの仕組み、
野球選手=キャラ、
ストーリー=試合展開
ということだ。

つまりあなたは、
「二時間の試合展開をどう面白くするのか?」を考えてるだろうか、
ということだ。

二時間集中させるだけの、
興味深い焦点の移動を計算し尽くしているだろうか?


長期連載のものをコミックスで読むと、
また違うものになるだろうね。
でも人間の集中力は、
一巻から数巻程度だろう。
それ以上は、やっぱり長期的な付き合いになる。

ということは、やはりキャラクターが重要だ、
となってくるのかもしれない。


付き合う時間や集中力の差異を、
意識して見るとわかることがあるかもしれない。

そして、
映画とは、野球にたとえれば、
独自のルールをつくり(世界観)、
魅力的な選手を出し(キャラクター)、
最も面白い試合展開(ストーリー)を考え出さなければならない、
ということである。
posted by おおおかとしひこ at 09:54| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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