2019年03月13日

セリフのレッスン

「そのストーリーの中で、
ひとつだけ『そのセリフの言葉通りの意味と、
本心で言いたいことが違うが、
(嘘をついて騙すのではなく)真意が伝わる』
というものを入れる」
練習をしてみたまえ。


言いたいことを、
100%正確に言えば、
100%意味が伝わると思うのは、
小学生レベルの国語力だと思う。

人は嘘を付くし、
騙されるし、
うまく言葉に出来ないことを沢山持っているし、
雄弁家も一方でいるし、
あまつさえ言葉以上の期待をさせるように、
誤解や意図的誘導がひろがっている。

世の中は、
言葉と意味と意図が、一致してないのが前提だ。

そんな中で、
ストーリーだけが、
100%言いたいことを言って、
100%額面通りに受け取ってもらえて、
100%言えてないと100%伝わらないと恐れるのは、
小学生レベルの国語力だと言わざるを得ない。

CMをみたまえ。
嬉しそうにコンビニ飯を食っていて、
「わあ!おいしそう!」なんて100%思うかね?
あんなにうまそうなのはCMの中だけで、
ほんとには美味しくないことぐらい、
バカでも知っている。

人は人を騙そうとする。
いいように誤解させようとする。キャバ嬢とか。


さて。

嘘をついたり、その嘘を暴く場面を、
まずは書けるようになろう。
言葉を操る者として、
言葉の額面上の意味と、
意図が乖離している場面を書けるようになろう。

その上級者編が、
今回のレッスンだ。

たとえば、
「終電なくなっちゃったね」
「ウチ近いよ。ゲームでもして朝を待とう」
は、
「やりたい」
「やりたい」
の意味だ。

セリフの額面と、
意味が異なっている良い例だ。

額面通りにゲームを朝までするやつはいないだろう。


仮にこれがアイドルの熱愛だとしても、
「友達の家でゲームをしていただけです」
と言い訳をすることが出来る。
言い訳を用意してあげるというやつだね。
()に本当の意味をいれるなら、
「友達の家でゲームをしていただけです
(セックスしてないとは言ってない)」
だろうか。

言葉の100%が、
意味の100%になると考えるのは、
小学生レベルの国語力だ。


さて本題。

あなたのストーリーに、
そんな場面をつくろう。

違う言葉なのに、違う意味だと、
皆がわかる場面をつくろう。

僕は枝野の「ただちに影響があるわけではない」
は歴史に残る名言だと思っていて、
額面通りでは嘘をついてなくて、
裏の真意は「やべえぞこれ」だと伝わる、
すごい一言だと思っている。

リテラシーが低いバカは額面通りに受け取って安心した。
そして社会的パニックを起こすのも、
リテラシーが低いバカだと歴史が証明していて、
件の名言は、
賢い人には避難を促し、
バカのパニックを止めた、
非常に賢い言葉だと考えている。

どんなに放射能が降ろうとも、
東京に残るしかないな、
とみんな判断した時点で、
日本の一極集中の没落は、決定的となったのだが。


ここまでの名言でなくとも、
どんな小さなことでもいいから、
言葉と意味が全然違うセリフを作ってみよう。

それは、
「ストーリーの文脈でわかること」だということがわかる。
言葉だけいじっていても出来ない。


なんだ、結局文脈ではないか、
と、魔法の正体に気づくことだと思う。


文章に魔法があると思うのは、
その魔法の正体を知らない素人だけだ。
あなたは、こっちのマジシャン側に来ないといけない。

100%の言葉で100%の意味を伝えないやり方に、
ダブルミーニングがある。
言葉が得意でない人も使える技のひとつだ。

しかし、ターミネーターのラストシーンのように、
「嵐が来るぜ」(目の前の黒雲を見て)
「知ってるわ」
(それは未来のことだと分かっている、というダブルミーニング)
のような、キレの良い使い方も可能である。

これは、言葉の100%に対して、
200%の意味をこめるやり方だ。
単純な言葉の方が200を作りやすいだろう。

今回のレッスンは、
100%に対して、-100になるような感じ
(逆の意味をマイナス符号で表現)
だろうか。

「愛してる」という代わりに「大嫌い」と、
「死ね」の代わりに「愛してる」
と言わせてみよう。
posted by おおおかとしひこ at 12:37| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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