記憶に関する文献を読んでいた時に、
不意に出てきた記述。
「漢字の縦線や横線を一々意識せず、
ひとつの漢字を書くのは手続き記憶による」
たしかに。
それでいうなら、
ある言葉を一文字一文字意識せず、
打鍵の流れとして打てるようになるのが、
それに相当するかも。
ブラインドタッチができない人は、
「あんな文字の数を一々覚えられない」
という感覚がある。
一方、出来る人は、
「ひとつひとつを考えてない。
流れのままに指を動かすだけ」
という感覚になる。
ある言葉や言い回しが一連の運動のようになり、
ひとつひとつの文字は無意識下になる。
その証拠に、
○の下の文字は何?
と尋ねても咄嗟に答えられない、
という現象がある。
網羅的なテーブルから写植文字のようにピックアップしているのではなく、
一連の芋づるのように引っこ抜いてきている感覚だからだ。
で、
配列というのは、
この芋づるをどう合理的に配置するのか、
という目的に対して、
シフト方式と文字の並び替えという手段で、
解決しようとするものだといえる。
配列図を見ただけでは、
配列というのは理解できない理由がここにある。
配列図を見ただけで複雑に見えると敬遠しがちで、
新下駄や飛鳥が一瞬ためらわれるのも、
それが理由だと思う。
見た目ほどは難しくないし、
むしろ運指はシンプルになるのだが、
それは触って見ないと理解できない。
しかも、
「言葉が芋づる式に運指として出てくる」
状態にならないと、
それを実感することができない、
というもどかしさ。
だから、
どういう芋づるがあるのか、
を動きで示すのが、
配列のデモンストレーションで良いと僕は考えていて、
それは薙刀式の動画の、
オープニングダイジェストで一部を示してはいる。
新下駄や飛鳥をもう少し使いこなしていたら、
そういうデモが撮れたかもしれないが、
そこまで僕は無意識下に擦りこめなかったので…
配列には色々な性格があって、
シフト方式をシンプルにして配字もなるべく減らそうとする、
新JISや月系もあれば、
文字面だけで1モーラ1アクションで、
運指を人差し指方向へ帰着させる新下駄もあれば、
シフトはあくまで2つで、中下段中心に運指を練りまくった飛鳥もあれば、
4段で単打に拘り、拡張入力を入れて、
シフト込み二打二文字で擬似単打を実現する蛇もあれば、
配字はなるべく減らして28範囲として、
シフト方式を複雑にして打ち分ける薙刀式もある。
しかしそれはあくまで、
見た目の配列図でしかなくて、
実際どういう芋づるが眠っているのかは、
ある程度打てるようにならないとわからない。
ここが、配列の普及しない問題点なんだろうなあ、
なんて思っている。
だから、よくわからない人にも、
その配列で普通の文章を普通に打って、
時々速い部分があるぞ、
という動画を作ることが、
「それが一体どういう感じなのか?」のベールを剥がす、
大事な役割だと思うんだよね。
薙刀式は最速ではないだろうけれど、
大事なフレーズが楽そうだな、
なんてことを印象として持ってくれれば、
こちらとしては動画を作った意味があると考えている。
手続き記憶とはすなわち運動で、
運動を記録するには、
配列図のような静止画ではなく、
動画である必要があると思う。
飛鳥が速いと思われているのは、
tomoemonさんの動画のおかげだし、
新下駄が良さそうだと僕が思ったのも、
作者kouyさんのマスターコースの動画だった。
他の配列のそれがもっと見たいのは、
やはり配列図を見ていても動きが想像しにくいからだろう。
80年代、中国拳法が写真でしか伝わらず、
カンフー映画の中でしか存在しなかった頃は、
中国拳法が最強だと信じられてきた。
今は色々な動画が出回り、
最強というほどでもないことはみんな分かってきている。
しかし練度を上げれば強い部分は強いことは、
やっぱり動画で説得力を増してきた。
配列の世界はまだ、80年代の中国拳法でしかないと思う。
親指シフトが速いというなら、
その動画を見せて欲しいんだよなあ。
(申し出てくれれば撮りに行きます)
芋づる式に言葉が指で紡がれていく様を、
一時間ぐらい見ていたい。
それを真似してみて、
なるほど楽で合理的だぞ、
と僕は納得したい。
配列は芋づる式の運動だ。
だから、自分の手に合う合わないがある。
現状合わなくても、鍛えれば合う可能性もあるし、
鍛えても合わない可能性もある。
そして、手というのはとても繊細で、
ミクロン単位の感度を時に発揮する。
合わない奴はとことん合わないし、
逆に合わせられる適応性が凌駕することもある。
運動用のシューズ選びに似てるかも知れない。
運動の目的は?
何が得意で何が不得意?
履いてみて潰してみて、それからまた別のを履いてみて。
そうやって、合うやつを探すしかないよね。
配列を作ったり、
自作キーボードを作る人は、
既製品にないから靴を作ってしまった人かも知れない。
気軽に配列を試せたり、
キーボードを試せる場が、
靴売り場や万年筆売り場のようにあるといいのだが。
2019年03月27日
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