2019年03月29日

お前、悪いこと考えるなあ

悪役は常に重要である。
主人公を引き立たせる、陰の主役だ。
その悪役を見事に覆せるのか、
ということが物語の重要な主軸である。

で、その悪役が面白くないやつは、
主軸がぶれて面白く無くなる。

つまり、悪役をどう面白くするか、だ。


悪役を考えるとき、
「新しい悪」を考えるつもりで考えよう。

主人公が新しいキャラクターで勝負するのだから、
それに対する悪も、新しいものであると面白くなる。

そこがふつうの悪役がでてくるなら拍子抜けというものだ。
そこがベタじゃなあ、って萎えてしまうからだ。


新しい悪とは何か。
世間を見ていればいくらでも出てくる。

窮屈な発言狩り、
何かを言わないことで、個を殺して組織を優先させる政治。
色々な悪は、沢山世間にある。

それをうまく悪役にすることまでは可能だろう。
しかし問題は、その倒し方だ。

一般のそのような悪の倒し方は分からないから、
(分かればそれは解消しているはずだから)
一般の悪にしてしまうと、
うまく倒すことが出来なくなることに注意しよう。

(しかしNGT運営サイドという悪に対して、
記者会見の場で被害者がリアルタイムツイートで、
発言に反論し、記者がリアルタイムで突っ込む、
というNGTの劇場型記者会見は、
新しい悪の倒し方だった。
私たちはこういったクライマックスを発明できるだろうか?)


方法で描けるのは、あなたの分身が解決できる範囲までだ。
できないからといって全知全能の何かに頼ると、
デウスエクスマキナの召喚になってしまう。

誰にでもわかりやすいようにうまく倒せないと、
見事に倒したことにならないから、
うまく倒せる範囲内に悪役を納めることも重要だ。

しかし、型破りで、しかも悪でないといけないから、
つまりは、世間の悪から悪役を作り上げる方法では、
倒し方が思いつかないことが、まれによくある。

(NGT記者会見の倒し方は、
よく考えれば誰にでも実行できる方法だった。
しかしコロンブスの卵である。
我々は、これを毎作品ごとに発明しなければならない)


おススメの方法は、
主人公の逆をひたすら考えて、
悪役が、どれかを要素として持つ事だ。

それは世間でいうところの、
正義と悪の価値観に縛られる必要はない。
主人公が悲観的で、悪役が楽観的でも構わない。

ポイントは、テーマに即することである。

つまり、最終的な勝利が主人公側にあるならば、
その証明する価値、テーマが主人公側に存在し、
その逆を悪役がもてばいいのだ。

で、その事に関して、
世間の悪的なことをやるといい、ということになる。


もし、悲観的な主人公が楽観的な悪役を倒す話だとしたら、
「世間で悪とされること、かつ楽観的」なことを捜すといいのである。
たとえば、
押しが強いリア充的な要素で悪いことをする悪役を描き、
楽観的に考えたがために、セキュリティが甘くなった、
と落ちにするとよい。

そのようにして、
主人公の証明する価値の反対のことをやり、
かつ世間での悪に関係しているとよいわけだ。


単純に世間の悪を模倣しているだけだと、
倒し方が分らなくなる。
単純に主人公の反対の価値だけだと、
現在性が薄く、いまやる意味が分からなくなる。

どちらでもない、両方の要素の強い悪役が出来たとき、
そしてその倒し方が見事なとき、
その悪役は時代を代表する悪役になるに違いない。


僕は「ダークナイト」の、「弁護士がヴィランになる」
ってアイデアを聞いたとき、凄く面白いと思った。
正義面した弁護士が本当の悪であるというのはとても現代的で、
トゥーフェイスというコンセプトが、それを後押しすると。

でもやったこと(実装)はたいして面白くなく、
ジョーカーとどっちつかずのヴィランになってしまったのが、
ほんとうに惜しいと思った。
(それはスパイダーマン3のサンドマンも同じだ。
サンドマンこそがスパイダーマン誕生の原点なのだから、
ヴェノムを出すことなく終わらせるべきだった。
つくづく、商売と物語の解離に嘆く)
(さらにどうでもいいことだが、いま薙刀式ではじめて、
実戦でヴィとヴェを使った……)


さて。

あなたの悪役は、どう主人公の裏なのか?
それとテーマとの関係は?
そして、それが現代の悪とどう密接に関係している?
その三角形の真中が見えたとき、
新しい悪役が誕生したと言えるだろう。

スターウォーズの新三部作(エピソード123)のラストを飾る、
「ウェイクアップ、ベイダー」
はとてもカッコイイんだけど、
ベイダーってどういう悪なんだっけ、
とよくよく考えると、たいした悪ではないことに気づく。

ベイダーは恰好だけの、ファッション悪役でしかなかったのだなあ、
とこのときに気づいてしまい、
以後スターウォーズはぼくにとって、映画ではなく、
できの悪いおもちゃになってしまった。


お前わるいこと考えるなあ。
それくらい、悪役を悪いやつにするには、
いま世間で何が悪なのか、
そしてそれとテーマがどう関係しているかを考え抜かないと、
出てこないだろうね。

悪を考えることは、何が正しいのか考えることで、
正しさを貫くためにはどう悪を倒さなければならないか、
考えることだ。
posted by おおおかとしひこ at 12:53| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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