2019年03月31日

焦点の表をつくってみよ

プロットとは別につくってみることをお勧めする。


焦点とは、
「いま何に注目してストーリーを見ていればいいか」
という刹那的なポイントのことである。

作戦は成功するのか、
彼女の答えは、
犯人は誰か、
〇〇はゲットできるのか、
この先に起こることが何か、
彼に会って聞きださなくてはならないこと、
ミッションの成功条件、
などなどである。

そのもっとも大きな外枠はセンタークエスチョンであるが、
焦点とはもっと小ブロック、
時間にして数分程度の集中で保たれる何かだ。

それを変えるのがターニングポイントで、
ターニングポイントは、
このような小さなものの変更にも使われる。
映画全体には数十から百以上のターニングポイントがあるだろうが、
そのうち最大に大きなターニングポイントが、
第一ターニングポイント(一幕の最後という意味での第一。ファースト、ではない)と、
第二ターニングポイント(同。二幕の最後のターニングポイントの意味)
であることは、もうご存知であろう。


で。
物語には構造がたくさんある。

人物関係の構造、
テーマの構造、
メインプロットやサブプロットの構造、
位置関係や組織などの構造、
事件と解決の構造、
三幕構造、
などなどだ。

それらのうち、
「いま何に注目してみていればいいか」
という焦点と、
「次何に注目するか」
という焦点の転換のリストも、
また構造をなすだろう。

で、
だから、
そのリストをつくって俯瞰してみなさい、
というのがこの記事の趣旨である。


プロットや、テーマや、サブプロットや、
人物関係図や、
位置関係図などを書くことは、
とくに言われなくても事前に構造をつくることはするだろう。
しかし、
焦点に関しても同様のものをつくることまでは、
なかなか考えが及ばないのではないか。

これらをつくっておくと、
執筆がとても楽になっていく。


「いま注目して、必死に集中するべきことは何か」
をチェックすることで、
書き手が楽になる。
そして、
その後、
「その注目点に対して、もっと本気で注目するには、
どういうことを追加するといいか
(あるいは、何を省略するといいか)」
と、あとでリライトに使えることになる。

また、別の焦点を挟んだほうがいいか、あるいは、
この焦点を削ったとき、話はどう変わって見えるか、
などを焦点のリストでシミュレーションできる。


あるいは、
ストーリー上の焦点と観客の注目点が異なると、
詰まらないストーリーになる。

ストーリー上は、
「一体犯人は誰なんだ?」
って右往左往しているのに、
観客が、
「この女優、プライベートで誰と付き合ってたんだっけ」
なんてことを焦点としているならば、
それは退屈だということだ。

ストーリー上、
「一体犯人は誰なんだ?」
ってことがとても大事なら、
観客の感情も、
「一体誰なんだ?」
ってならないと意味がないということだ。


そうなる為には、
新規性が高く、読みづらいものにすることや、
新しさで注目しやすいものを選ぶことや、
感情移入でこの先を見たいものにすることや、
状況をきちんと与えて、
頭の中でシミュレーションしやすいものにすることや、
予想がある程度当たり、かつ外れるようにして、
緊張が途切れないものにすること、
などのいくつかのコツがあるかと思う。

そういう工夫が足りているのかどうかは、
いま観客が、
ストーリー進行上の焦点に、焦点を本気で合わせているのか、
チェックすることだ。

客観的に自分の物語をチェックできないと、
これがうまくいかない。
自分だけ滑ってたり悦に入っていたりすることが、
自分でわからないとこれが出来ない。
(書き終えてしばらく、ときに数か月開けてからリライトするべきだ、
という経験則は、このような客観性を得る為の、
ある種の技である)

何もしらない観客の気持ちになって、
ストーリーの焦点と、
見ている人の焦点が同じであるように、
リライトしていく為に、
「焦点のリスト」は重宝するだろう。


リライト以前でも、
執筆のその瞬間、脱線しないために、
そのリストに忠実に書いていくことは、
とても大事かもしれない。
もちろん、脱線しようとする欲望がでてくることがあり、
それを書いてしまうことは悪い事でない。
しかし、焦点に対して結局不要であったなら、
カットする必要が出てくるだろうことは、
分っておくといいだろうね。
脱線自体は全でも悪でもない。
むしろ緊張緩和に役立つかもしれない。



焦点のリストを書こう。
それに本気で集中してしまうような、
原稿をつくろう。
そしてそれがうまく転換して次の焦点に替わるような、
面白いターニングポイントを書き、
次の焦点に本気で集中するように書こう。

それが途切れずに続くのが、
うまく書けている、面白い物語だ。


(僕は三幕構造以前に、
これをまずきちんと設計するべきではないかと考えている。
まあそのへんの話は別にあらためて)
posted by おおおかとしひこ at 18:33| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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