2019年04月08日

オープニングのクライマックス2

それはターニングポイントであるべき、
という話。


気持ちの盛り上がり、危機の盛り上がり、
テンションの高まり、重大なこと、
これらはクライマックスに必要なものだ。

始まって、3分から遅くとも10分程度までに、
一旦ヤマが来るだろう。
それをオープニングのクライマックスと呼ぶことにする。

で、
それは、盛り上げて一旦休憩、
にしてはいけないということ。

なぜなら、そこで流れが途切れるからだ。

作者的に見ると、
苦労して盛り上げ、綿密に立てた計画を一気に放出したのだから、
休憩したくなるのはよくわかる。
しかし観客から見ると、
せっかく好調な滑り出しをしたのにテンションが下がり、
「頭だけだったな」となってしまうのはよく経験してるはずだ。

だから、
オープニングのクライマックスを、
切れ目にしないこと。
流れを途切れさせない最も有効なものはターニングポイントだ。

つまり、
そのクライマックスまでの焦点が、
一旦決着がつき、
「次の焦点が発生して、
興味がそちらへ移る」ようにするべきなのだ。

テンションは一旦落ち着いたとしても、
新しい焦点に話が移れば、
興味は持続する。

危機が去ったとしても、
落ち着いて次どうするべきか考えることで、
興味は持続する。
つまり、切れない。


たとえば開始5分、
へんてこな事件が起きたとする。
主人公はまず関わろうとするだろうか。
普通は避けたり逃げたりする。
厄介な人に追いかけられるとしよう。
それがクライマックスだ。
やっと振り切った。
だが、家に帰ったら、大家さんが同じ問題を持ってきた、
とかすればよい。

厄介な人から、同じ問題だが大家さんに焦点が移る。
なんだかおかしなことが起こっている、
という興味は持続するわけである。


このようにして、小さなターニングポイントで終わると、
次が書きやすくなる。
大家さんと話したり、誰かを呼び出したりと、
展開を作りやすくなる。


仮にターニングポイントで終わらせないとしてみよう。

へんてこな事件に巻き込まれ、
厄介な人に追いかけられる。
振り切った。
ああ、今日も大変な一日だった、
と夕焼けでも眺めて一日の終わりを感じるとしよう。
なんなら暗転してもいい。
で?

次のシーンが書けなくなるよね。

どうする?
次の朝何か起こる?
でもそれは前に伏線のないことだ。
関係ない話を始めてしまうと、
前のものとの連続性がない気がして、
何をしても繋がらない感じがする。
だからついつい、
「振り切った筈の男が、また現れる」と、
「これまでにあったことの延長上」
を続けたくなってしまう。

これは興味が薄れる。
一旦終わったことを蒸し返してもなあ。
で、
「追って来る男が二人に増えている」とか、
前のものを増幅して使いたくなる。

でも、焦点は同じものでしかないから、
そのうち飽きてくる。
こうして、つまらなくなってゆくのだ。


作者が休憩したくて夕日のシーンを書いてしまっているからだ。
せっかく始めた話が、そこで終わっちゃったんだよね。
一拍置いてしまったわけだ。
ただ休憩したから、休憩明けに同じことをしてしまった。

「男を振り切って家に帰ったら、
大家さんが同じ厄介ごとを持ち込む」と、
続きではあるが違う焦点にすると、
繋がりがあり、かつ新しい興味に写ることができるわけだ。



このように、
小さいターニングポイントで、
焦点をずらしていくことは、
プロット段階では(まだ)考えていないことが多い。
プロットとはもっと大枠を決めることであり、
執筆レベルのことは考えない。

逆にいうと、このような細かい、
シーンレベルやシークエンスレベルの構成は、
「書きながら考える」のが実情だ。

だから、
プロットという地図を横目で見ながら、
あなたはアドリブで、
シーンやシークエンスの構成や、
どこでどうテンションを上げ、
どう興味を誘導するのかを、
考え出さないといけないわけだ。

それのパターンが少ない奴は、
すぐに思いつきの発想が途切れ、
すぐに「これ以上思いつかない!」ってなってしまう。

だから、普段から短編を書け、というのである。
短編でいろんな実験を沢山しておけばおくほど、
とっさのアドリブが豊かになる。

このような途切れを感知し、
流れをつくるためにターニングポイントを創作するようになるわけだ。



さて、
うまく焦点を次へ移動させたことで、
ようやくオープニングは終わる。
真のクライマックス、
つまり物語のラスト付近までは、
このコツはずっと同じである。

すなわち、
興味を持続させるように、
次々と流れが途切れないように、
焦点を移していくことだ。

それはヤマでやってもいいし、タニでやってもいい。
posted by おおおかとしひこ at 10:46| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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