ストーリーを始める時、
たとえば、
「突然エレベーターが止まり、閉じ込められる」
から始めるとする。
掴みとしては十分だと思うが、
これから展開するのはとても難しい。
その前に、一場面書いておくと助かるのだ。
エレベーター停止したとき、
たとえば美女が乗っているとしよう。
彼女とどうにかして脱出しなければならないわけで、
「脱出できるかどうか?」が焦点になるわけだ。
エレベーターからどうやって脱出するのか、
それともしばらく待つのか。
しかし、次にいきなり、
主人公の男が、
「実は僕はサーカスの軽業師なのです。
ロープを伝って助けを呼びに行きます」
という展開になったらどうなる?
唐突にすぎるし、
後付けにもほどがあると思われるだろう。
では軽業師は使えない?
そんなことはない。
事件の前にひとつシーンを作ると良い。
急ぐ男。
遅刻したのだ。
電話する。
「すいません、寝坊しました。本番は7時ですよね?」
カットバックしてサーカス団長。
テントの中ではサーカス団員たちが軽くリバーサルしている。
「だったらお前だけぶっつけ本番になるぞ?」
「大丈夫です。今日のロープは低いんで」
エレベーターに乗り込む男。
美女が乗ってきてラッキー。
と、エレベーターが止まる。
というふうになれば、
「僕はサーカスの軽業師なのです」と美女に言っても、
我々観客は何も無理を感じない。
同様に、美女の前のシーンも作れるとしよう。
たとえばトイレに駆け込むが行列になっていて、
時計を見て諦めてエレベーターに乗り込む、
としてみようか。
彼女が異常に閉じ込められたエレベーターから出たい、
と言い始めるはずだ。
軽業師は「待てば管理会社の人が来る」となだめるけれど、
彼女は聞かない、
なんて場面を作ることができる。
「おしっこ漏れそう」とはなかなか言えないから、
なんだかんだ理由を嘘つくことになるだろう。
さて。
「突然、エレベーターが停止する」
という掴みから書くと、
次の展開に困るのだ。
美女が脱出を急ぐ理由も、
男が天井の蓋を開けて軽々登っていくことも、
事件から始めていては、
唐突で無理のある展開に見えてしまうわけだ。
事件からはじめない。
始めたいなら、必ずワンシーン前に何か書いておくこと。
事件が起こったら、それを利用して展開していくこと。
ストーリーは順序で語る。
前のものを利用しながら、次へと進む。
いきなり事件から始めるのは、
あなたが掴みたいと焦っているからだ。
数シーンは掴まなくても見てくれる。
そこに何かを仕込めば、それで事件は始められる。
2019年04月09日
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