2019年04月21日

【自キ】自作キーボードの何がいいの?

流行ってるらしいけど、何がいいの?
お答えしよう。
今までにキーボードに不満を持ったことのある人が、
それを解消するために、
キットを設計したり、キットを作ったり、カスタマイズしているのだ。


人によっては毎日使い、
バイクや包丁や万年筆と同じような役割にあたる、
自分の延長のようなキーボード。
エンジニアやライター、ブロガーはヘビーユーザーだし、
そうでなくても現代人の必需品のひとつだろう。

しかし、ノートPCのキーボードは外せないし、
デスクトップは買った時についてきたやつのまま。

別売りの高級キーボード(リアルフォース、hhkb、
マジェスタッチ、ゲーミングメカニカルなど)を
繋いで使う人もいる。
故障や販売終了に備えて予備を何台も買う人もいる世界だ。

しかしそんな人ですら、不満は溜まってくるものだ。


いつも使うキーボードで、以下のような不満がないだろうか?

オシャレなキーボードだといいのに!
キーボードを使ってると肩が凝る!
キーが左にずれてなくて良くね?
キータッチが軽く柔らかいといいのに!
エンターやBSがもっと近くにあるといいのに!
キー数が少なくていい(何かを押しながら何かでOK)から、
コンパクトで持ち運べるといいのに!
あのキーがあの辺にあるといいのに!

自作キーボードは、これにすべて答えてくれる。


★オシャレなキーボードだといいのに!

「自作キーボード」で画像検索してみよう。
「#自作キーボード」でツイッター検索してみよう。
山程画像が出てくるぞ。
どれもオシャレな見た目で、地味でしょぼい家電とは一線を画す。
自作キーボードは自分だけの、
誰も持ってない道具だ。
オシャレに、カッコよくしてなにがわるい。

まずキーの色合いがオシャレ。
これは日本ではほぼ生産していない、
外国(主に中国と台湾、アメリカ、ドイツ)で生産されたものを、
個人で輸入したものだ。
自作キーボードは日本発ではなく、
外国でまずあり、それが日本に上陸した形だ。
キーキャップ(キーの上のプラスチック部分)
は、色やデザインだけでなく、
カーブの形(プロファイル)にも色々あり、
手触りとオシャレを両立させている。

キーキャップを輸入し、日本で買える形にしているのは、
TALP KEYBOARD
ゆかりファクトリー
遊舎工房(通販、実店舗)
があり、即日発送で手に入る。
ここにないものは、
AliExpress、KBDfansなどの中華サイトから取り寄せだ。
発送に二週間は見ておこう。
相場は数千円から、デザインがよいものは二万円までする。
たかがキーキャップなのに?
服みたいなジャンルだと思うと良い。


色合いに関係するが、自作キーボードはよく光る。
単なるライトオンだけでなく、
プログラミングされた発光パターンもある。
そして自作の名通り、それもプログラミングできるわけだ。

ボディのケースを色んな素材で3Dプリンタで作ったり、
アクリルプレートを金属加工したり、
キーキャップを3Dプリントしたり、
あるいはプラモデル的に作ったり、
様々なドレスアップをみなさん楽しんでいる。

最近の人気はツナキーキャップと苔キーキャップ。
画像検索していただきたい。


これはまず見た目の話。
見た目に凝るだけが自作ではない。

キーキャップの下にはキースイッチ(軸)があり、
これがキーの「押し心地」を決める。
キースイッチは現在50から100ぐらい種類が出ていて、
これが安価で手に入るようになった(中国で作っている)のが、
この自作キーボードブームの火付け役だ。
ベースはドイツのチェリーMXメカニカル軸なので、
これを変形した様々なスイッチがある。

その下はPCBというプレートで、ざっくりいうと基盤。
ProMicroというマイコンにプログラムを書き込み、
電子機器として動かす。
給電はUSB。
(ブルートゥース対応は、この給電問題で各自が工夫中)

これらの要素を色々工夫することで、
せっかく自作するのだから、
「使い勝手」を向上しようというのが自作キーボードだ。

勿論一から全てを設計する人もいるけど、
大抵は理想に近いキットを買って制作、改造して、
不満があれば別のキットも買い…
という人が多い。
新作が月に二個ペースで出る世界なので、
全部を網羅することは難しい。

meishiが最も簡単な入門キット(4キー)、
Mint60が組み立てが簡単なオシャレキット、
Ergo42、miniDox、Helixあたりが本格入門用、
CrnkbdやLily58あたりが人気キット、
Colosseum60やminiaxeが上級者用キット、
だろうか。

日本では左右分割が人気だが、
海外では左右非分割が主流(GH60、Gehkinなど)。
日本では日本語入力が英語入力より複雑だからか、
海外のキー数(30〜60くらい)よりも多いものが好まれ、
結果分割してキーを増やす傾向にあるのではないか。
僕が非分割の情報を追ってないので、
ここではTreadstone48を代表としてあげるにとどめる。


さて、本題にもどろう。
自作キーボードの何がいいの?
以下のような不満を解消するためだ。


★キーボードを使ってると肩が凝る!

肩が凝る原因は、手を狭く使うからだという。
左右分割キーボードなら手を広げるから、
肩甲骨が開き、肩凝りが和らぐという。

僕は肩凝りではなかったが、
左右分割を使い慣れて非分割に戻ると、窮屈でしょうがない。
よくみんなあんな猫背で苦しいキーボード使ってるよ。

キーボードは割れるべき。


★キーが左にずれてなくて良くね?

何故キーは左に一行ずつずれるのか?
これはタイプライターのハンマーの干渉を避けた、物理の名残だ。
そんな100年前の設計を継承する意味ある?
だって左手を見ろよ、
左に捻られ続けてるじゃないか!
僕はこれのせいで腱鞘炎になった。
これを治すには、左手を左に捻らなくていいキーボードが必要だった。

格子配列(直交配列ともいう)、
コラムスタッガード(短い小指は手前に、長い中指薬指は奥に配置)、
など、自作キーボードの基本は左右対称だ。

なんで左に捻るの?手壊したいの?
その負担いる?


★キータッチが軽く柔らかいといいのに!

メーカー付属のキーボードは、
ほとんどが55gのキー荷重に統一されている。
これはピアノのキータッチと同じだ。

しかし私たちは、
ピアニストよりも多くキーを叩き、
ピアニストより指の才能はない。
もっと軽いキーであって問題はないだろう。

たとえば高級キーボードのリアルフォースやhhkbは45gで、
リアルフォースには30gモデルもある。

自作キーボードの最大の魅力は、
キースイッチを自由に変えることで、
自分好みのキータッチを作ることにある。
45g、35g、逆に60gあたりが主流。
キースイッチは、
カチッというやつ、押した感触のあるやつ、なくて沈むだけのやつ
(クリッキー、タクタイル、リニア)から選び、
バネの押下圧を選び、ハウジング(ガワ)を選ぶ。
Lub(オイルなどでスイッチの中の摩擦係数を変える)で、
ヌルヌルサラサラにしてチューニングすることもできる。

さらに、全部同じ感触である必要はない。
強い人差し指中指は普通の重さにして、
弱い薬指小指はやや軽い軸にする(変荷重)こともある。
文字キー部分は静かなものにして、
滅多に使わないESCなどをクリッキーにして、
感触の違いでブラインドタッチの基準にする手もある。

ちなみに僕は、オール20gと、ほぼ最軽量の赤軸に改造した。
もっと軽くていいと思っているので、いずれバネを輸入するつもり。


★エンターやBSがもっと近くにあるといいのに!

英語入力に比べて、日本語入力では、
BS、エンター、カーソル、シフトをよく使う。
これらが近くにないのを、何故おかしいと思わないのか?
僕は最初に日本語入力を知った30年以上前から、
ずっと不思議だったんだよね。

英語入力のキーボードを共用するからだ、
と理屈では納得してたけど、
「じゃあ日本語入力特化キーボードが別にあればいいのに」
とずっと思っていて、
二年前「作れる」ということを知り、作り始めた。

まずはキーの配列だけを変えられるキーエミュレータの存在を知り、
そのひとつDvorakJを使って、色々なキー配置を変えまくった。
それはカタナ式、薙刀式として完成した。おススメだ。
で、それが載る理想的物理キーボードを求めて、
自作キーボードに入った。

自作キーボードでの主流は、
「機能キーを親指に集める」ことだ。
文字入力は8指を使い、
時折親指で、
BS、エンター、シフト、コントロール、Alt、Win、
Lower、Raise(自作系特有のレイヤーキー。後述)
を押すタイプが主流。

勿論取捨選択できる。

自分のスタイルに合わせて、
どのキーにどのキーを配置するか、
変えられるのが自作の最大の魅力であり、
目的であると言ってもよい。



★キー数が少なくていい(何かを押しながら何かでOK)から、
コンパクトで持ち運べるといいのに!

キー数を減らすのは正義。
たとえば数字なんてあまり使わないから、
「何かを押しながら何か」に定義すれば、
10キー減らせるし。
記号も同様。ホームとかエンドとかファンクションキーも同様。

こうして、キー数は、109(フルキーボード)から、
テンキーがなくなり、
ファンクションキーがなくなり、
数字キーがなくなり、
機能キーもなくなっていく。

勿論、物理的にないだけで、
「何かを押しながら何かを押す」で定義される。
この「何か」に当たるキーをレイヤーキーといい、
Lower、Raiseの名で呼ばれる。
もちろん、二つでなくていくつ定義してもいい。
人によっては、
ボリュームアップダウンや、
LEDの発光パターン変更キーを新設する人もいる。

この全体を、キーマップという。
「キーマップ見せてくださいよ」
なんて挨拶があるくらいだ。
キーマップは洗練の結晶なのだ。

物理キーを減らして、レイヤーを増やすのが、
今のところの主流だろう。
「ファンクションは減らせても、数字キーは減らせない」
「いや、数字キーなくてもいけたわ」
みたいな会話がよくある。
「じゃあどこまで減らせるか」
の実用最低が、僕はminiaxe(36キー)だと考えている。

物理キーのレイアウト、
そこにどんなキーマップを載せるか。
これを考えているだけで一日が終わるぜ。


で、大抵は、「俺の考えた最強キーマップ」があって、
それを実現する自作キットを探して、
多少改造しながら生きていくわけだ。
もし物理がない時は、設計に手を出すだろうね。
(僕は出しかかっているが、CADを一からやるのが面倒)



★あのキーがあの辺にあるといいのに!

僕は、qwerty配列に昔から疑問があった。
日本語で一番使うAが最弱の左小指とはどういう了見か。
ホームポジションと教えられるFJをほとんど押さないのはどういう了見か。
最強の右人差し指のホームポジションにAがないのはなんでやねん。

色々調べると、qwertyの歴史は、
最適化ではなく妥協の産物であったことがわかる。
そしてそれを何度か覆そうとしたが、
「すでに普及してるから」が理由で、覆せなかったことがわかる。
つまり前例主義なだけだった。
あほか。

僕はqwertyの不合理に二年前見切りをつけ、
右手人差し指のホームにAのある、
新しい日本語入力方式をつくりはじめた。
それはローマ字配列カタナ式、
カナ入力薙刀式としてそれぞれ完成した。
(トップにリンクあり。動画もあるよ)

もちろん、
これを使ってくれれば嬉しいが、
人によって手の能力も違うし、
文体も文章の目的も違うだろう。

様々に配列を開発した人もいる。
親指シフト(ニコラ配列)、TRON配列、飛鳥配列、蜂蜜小梅配列、
新JIS配列、月配列、新下駄配列、
SKY配列、行段系ローマ字配列、
漢直配列(漢字直接入力)。
これらを自作キーボードに乗せることも、
勿論可能だ。
(ファームウェアのC++言語の知識が必要。
僕は現在格闘中で、とりあえずDvorakJとの組み合わせで実装)

また、自作キーボード上で動く、
独自の配列を開発している人もいる。
Eucalyn配列、Harmony配列などだ。


気になるやつを使って見るもよし、
他人のものを改造してもよし、
独自のものを開発してもよしである。




キーボードは自分の延長だ。
なぜ他人の決めたものに従わなくてはいけないのか?
厨房をデフォルトで使う料理人がいるだろうか?

自作キーボードは、
「このままでは微妙」という不満を、
すべて自己責任で解消する。

だから流行る。
つまり、それだけみんな不満だったのだよ。


メーカーに頼る時代は終わった。
日本の家電メーカーは落日の一途だ。
我々の不満を解消する明日はない。

各自が各自で、各自を改良せよ。


不満のある者は立ち上がれ。
ない者は現行機種を使え。
それだけのことだ。
posted by おおおかとしひこ at 11:00| Comment(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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