2019年04月30日

転び方3: 評論家も人である

傷つき方、治り方のシリーズ3つめ。

ボコボコにされたとき、
「誰に」言われたかを問題にする。


そもそも、
その人は全ての作品をフラットに見て、
表現する目を持っているだろうか?

極端な話、嫌韓ネトウヨの人は、
韓国映画だったらなんでも糞というのではないか?
極左なら、無政府主義ならなんでも万歳というのではないか?

これらの意見は偏っているだろうか?
真ん中の意見があり、
これらは偏っているから無視するべきか?

僕は、どんな評論であっても存在してよいと思う。
偏っているだけで意見を封殺することは、
全体主義を生む。
全員が一つの意見になるまで粛清する、
間違った民主主義を生む。

正しい民主主義は、
全員の偏った意見を尊重し、
全体が幸福になるにはどうすればいいか、
意見を交わし合うことである。
数の暴力は民主主義ではなく、全体主義だ。

SNSでも、「こういう意見が多いから」と、
偏った考えを封殺する傾向にある。
日本の民主主義教育は浸透していない。
これは、村社会の意見封殺である。
言論の自由はこれに反対して生まれたのだ。
我々は近代以前の土人ではない。
どんな偏りも自由である。

また、全体主義はいずれ行き詰まりを迎える。
それを変えるのは、誰も理解できなかった、
たったひとりの新理論だ。
我々はその一人にならなければならないから、
常に偏っていることになる。


さて。
「その人の評論は元々偏っている」
ということを認識しよう。

世の中には二種類の人間がいる。
偏っている人と偏っていない人ではない。

「自分の偏りを自覚して、なるべく公平に評論しようとする者」と、
「自分の偏りを自覚しないまま、これが絶対だとする者」だ。

前者が正しく、後者が間違っているとも限らない。
なるべく公平にしようとした結果、
本質を見誤ることもあるし、
ガリレオのように異端裁判にかけられる場合もある。

私は未熟だから、経験豊富な人の意見を尊重しよう、
という態度は謙虚であるが、
その人が間違っていない保証はない。
その人だって悪意をこめて間違えているわけでもない。


さあ。わからなくなってくるね。
だからその1が大事になってくるのだ。

あなたの確信は、
これまでの歴史や現在を踏まえて、
なされたはずで、
そもそもそれに触れていない評論なんて、
主観で好みを言っているに過ぎないのだ。

主観的な好みを読み取り、
それに合わせてカメレオンのように形を変える者は、
道化師という。

あなたは道化師ではない。
船の舳先に佇み、次行くべき所を指し示す者である。
船に乗せている人が多いほど、
船が大きいほど、
あなたの責任が大きいだけだ。


すべての人は、主観で「面白くない」と語る権利がある。
しかし身になる評論というのは、
「過去のこの作品のこれと比べて、
このようであった」と、
来し方から批評するものである。
なぜなら、検証可能な具体があるからだ。

もっとも、その評論自体が、
偏っている可能性は否定できない。

あなたが何が妥当かを検証して、
次の作品に活かせばよい。

どの段階でどう思えばそれを思えたか?
を、シミュレーションして、
次はそこでそうしてみよう。
これが正しい反省会だ。


ではあなたは、何に傷ついているのか。
「バレたら困ること」を恐れていて、
その図星を指されたから傷つくのではないか。

禿を例にとる。
禿は個性の一つで素晴らしい個性だが、
世間では欠点と捉えられているので、例に出す。
僕は、「髪が後退しているのではない。私が前進しているのだ」
という言葉が大好きだ。

自分は禿だとバレるのではないか、
と恐れている人がいる。
自分は禿だと薄々感づいていて、
しかし認めたくなくて、
それを勘付かれないようにしているが、
お前禿だなと指摘されて、
「やっぱりそうなのか…そうだよなあ…」
と落ち込む。
それと同じに過ぎないのである。

自分の欠点は、何回も書けば書くほど、
薄々勘づくものだ。
しかしそれはバレちゃいないだろうと思っていたら、
案の定バレた。
あるいは、意識的ではなかったが、
無意識にそう思っていた、
そこに傷つくのである。

事前に、
「髪が後退してるのではなく、私が前進している」
と割り切って笑えるほどに客観視できていれば、
意外な伏兵に傷つくことはない。

もっとも、
それに気づいていたら、
リリース前にリライトしてこいよ、
という話でもあるが。
むしろ、「禿大好き!」になるまで練り込むのが、
クリエイティビティというものだ。



自分の弱点を把握して、
そこに上手にかさぶたをつくるようにしよう。
初めて弱点に矢を受けたら、
そりゃなかなか立ち直れないぜ。
posted by おおおかとしひこ at 14:06| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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