2019年05月28日

【脚本添削スペシャル2019】7: 構造をあぶりだす

僕が「大切な人を、二駅先に置いてきた」で惹かれたのは、
タイトルです。

なにやら物語の匂いがして、いい感じの結末を予感させます。
しかし本編はタイトル倒れだったと言えるでしょう。
それをタイトルで期待させる何かのレベルにまで添削することを、
自分への無茶ぶりとしてみます。


さて、構造を考えましょう。

このストーリーは、「行きて帰りし物語」
という構造をしています。
文字通り、ある場所にいって元に戻ってくる構造です。
「青い鳥」も同じです。

人生は旅路にたとえられます。
いまいるところから旅立ち、冒険をして、
帰還した時、ある種の成長をしていることはよくあります。
それを描くのは、物語の典型構造といえます。
(映画的名作に、「スタンドバイミー」があります)

日常とは違う旅の場所と、
そこでの試練越えがメインのストーリーになります。
そして、メアリースーの項で議論した通り、
それは他人による解決ではなく、
自分自身による解決である必要があります。

このストーリーでは「帰郷」が旅の内容です。

一幕:日常世界、
漫画家をやめようと思い実家へ帰る(第一ターニングポイント)

二幕:非日常世界での旅の内容
クライマックス(解決と最大の危険)まであと一歩(第二ターニングポイント)

三幕:たたかいと、その結末

という構造が映画的な構造です。

ところで、二幕あたりからその要件を満たしていないことに気づきます。
主人公が漫画家をやめずに続けることが結論ですが、
それに対して主人公は何か危険のある闘いに参加したでしょうか。

実家を継ぐという恐怖はあるけれど、
それを超えることはなく、
ビッグマザーなる父に足下をすくわれ、
うっちゃりの形で元鞘に戻るだけです。

ということは、このあたりが足りない部分だ、
ということが分ってきます。

また、
おやじが漫画家を目指していたからといって、
自分が再び立ち上がる力を得る、
というのもへんですね。

何が主人公にとって恐怖なのか、描かれていないからかも知れません。
没になることが怖いなら、
おやじの漫画だって没になることは明白で、
自分の新作がまた没になることが解決したとは思えません。

新しく面白いことを思いつくことが出来ないのが恐怖、
と設定する手もあります。
そうしたら、何かのきっかけで面白いことがおこり、
「それを漫画にかけば面白いぞ」とネタを得たことが結末になるかもしれません。
そして当然、それは主人公自身のことである必要があり、
けっしておやじからもたらされるネタではまずいでしょう。
棚ぼたはメアリースーなのですから。

ということで、
どうにかして主人公が越えるべき、
具体的な試練が必要になってきます。
「落ち込んでいたけど再び立ち上がる」
という話は、気分の問題だけではいけません。
おちこんでたけど笑ったから元に戻った、
では物語として物足りない。

(元でも足りないという自覚はあるので、
プロポーズという人生の一大事をラストに据えることで、
どうにかして話を大きくしようとした形跡はあります。
しかし、そのそもそもの理由、
主人公が立ち直るドラマがないので、
結論だけが大きなことになっていて、
中空なものになっています)

物語として物足りるには、
何かの克服が必要だと僕はかんがえています。

ピンチに陥ったからこそ、超えるチャンスが出来た、
というのが理想の流れだと思います。


元のログラインをみる限り、
それは考えに入っていないはずです。
「夢をあきらめかけた漫画家が立ち上がる話」
の内容には、そうした具体がはいっていません。
ということは、そこまで考えたわけではないということ。

また、この話のクライマックスはなんでしょうか。
おやじが漫画を描いていた、というどんでん返しでしょうか。
それは大きな事実であり、
主人公が勝ち得た何かではありません。
クライマックスでは、一番危険な橋をわたるべきです。
あるいは、綾に電話するところでしょうか。
たいした危険ではないような気がします。

行きて帰りし物語では、
旅の結果、宝を得て帰って来ることになっています。
(青い鳥の場合、庭までが冒険の旅路で、
家に帰るまでが遠足だったのです)

実家に帰って彼が得た宝はなんでしょうか。
「綾は大事だ」って分ったこと?
それは冒険の果てに得たものではないので、
宝とはいえないでしょうね。


さてと。
構造自体がとても足りないことが分りました。
ということは、これらを足していく必要があるということです。

ただしく見ることは常に大事です。
批評をつねにするべきです。
そうしたら、自分の足りない部分も批評が出来ます。


で、テーマにまたもどります。次回。
posted by おおおかとしひこ at 08:31| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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