2019年05月29日

【脚本添削スペシャル2019】8: 構造とテーマ

この話のテーマはなんでしょうか。
つくらないといけない。
タイトルはテーマを暗示するものです。それがヒントになります。


「大切な人を、二駅先に置いてきた」
という文学的なタイトルは、
綾が大切な人だったのだと分かる、
という落ちを暗示しています。

青い鳥のテーマ性と似ています。
「大切なものは一番身近なところにあって気づかないものだ」
ということでしょうか。
しかしそれと、「二駅先に置いてきた」との関連性はよくわかりません。

ところで、アパートと、実家の饅頭屋と、綾の勤める病院とは、
どのような位置関係になっているのでしょうか。

ラストをみる限り、
実家と病院が二駅離れている設定です。
ん?
近すぎない?

父と大喧嘩して家出同然に出てきたにしては、
アパートと病院がそれほど遠くないと仮定すると、
全体がこぢんまりしすぎていない?

最小で二駅、せいぜい一路線程度の範囲内で、
すべてが行われている設定ということになります。
なんだかへんです。
「二駅先」というちょうどいい距離感と、
関係ない感じです。

これは僕の憶測ですが、
タイトルを先に思いついていて、
(このストーリーを思いつくよりはるかに前に)
それを使った何かを、あとづけで考えたのではないでしょうか。

あるストーリーを書いてから、
それはこのタイトルしかありえない、
となったわけではなく、
タイトル先行の匂いがします。

このストーリー先行だとしたら、
これにぴったりのタイトルは「父の爆弾」
とかになるかもしれない。
そう考えると、綾とのラブストーリーパートと、
父の話の、二本が走っている構造だということが分かります。
メインはどっち?
僕は父の方だと感じました。
どんでんの大きさによります。
しかし、気持ちのメインはラブストーリーパートのような気がします。
タイトルにもそれは現れている。

ということは、このストーリーは分裂しているわけですね。
すなわち、このタイトルはタイトル倒れであると。


タイトルを生かすとして。

二駅離れたのは何か。
ラブストーリーメイン。
それがこの物語の読後感を決定しそうな気がします。



いろいろ考え、
僕は「二人が出会った公園」と設定してみてはどうか、
と考えてみました。

綾の勤める病院に、彼が迎えに来たところをラストシーンにして、
「大切な人を、二駅先に置いてきたんだ。
迎えにいかなくちゃ」と彼がいうのです。

「?」となる綾に対して、
「僕を助けてくれて、僕を支えてくれて、
僕が愛した大切な人が、
まだあの公園で漫画家になる日を待っているんだ。
彼女を置き去りに出来ない。
迎えに行かなくちゃ」
と、ある種へんてこなことを言うところをクライマックスにする、
ということを考えてみました。

電車で行ってもいいけれど、
歩いていきたいんだ、
なぜなら彼女に話す新作のアイデアをまとめたいから、
なんて言えば、
「じゃあ話してみて。彼女が喜ぶかどうか判定する」
と綾も言えるのではないでしょうか。

で、公園まで歩き出すところがラストシーンになると。

それがうまく漫画家を諦めないことと、
プロポーズの成功を意味できるようにすると、
タイトルにすとんと落ちるのではないかと考えました。


このように、ラストから考えることは、
よくあることです。

ではこれに落ちるような、中盤、
そもそもなぜ旅に出ようと思ったか、
ということを逆算で考えて行く必要があるでしょう。

次回。
posted by おおおかとしひこ at 01:32| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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