2019年06月14日

本筋と脇筋のリズム

もう少しこの話を続ける。

両者のバランスはどれくらいがいいだろうか?


僕は、
本筋の緊張を、脇筋がほぐせて、
脇筋の緩みを、本筋が締めれる程度、
というバランスがいいと思う。

観客が心地よく思ういい塩梅もいいし(王道)、
予想を外してドキドキさせるのもよい(奇道)。

そして、王道と奇道の使い分けすら、
リズムの変拍子を使えるはずだ。
王道だけでも退屈だし、
奇道だけでも飽きてくる。


分量はどうだろう。
たとえば3:1とかレシピがあるだろうか?
緊張の度合い、緩みの度合いによるので、
量ではない。
深さ(主観)なので、文章量(客観)からでは分からないことだと思う。
コメディは1:3、シリアスなら5:1とか、
レシピがあれば簡単なのにね。

むしろ、そのバランス自体も、
変拍子になり得ることに気づくべきだろう。


どれだけ緊張感をもって本筋をすすめ、
どれだけ脇に目をそらして落ち着けるか、
そのバランス感覚は、センスとしか言いようがないかもしれない。

編集の時に困るのは、
脇筋をひとつ切ったら、
その前後の本筋が繋がってしまい、
息を抜くところがなくなったりすることだ。
そのあとの脇筋のボリュームを増やしたくなるが、
それは撮影してないからなかったりする。
で、脇筋をもうひとつ挿入することになり、
その後のバランスが崩れていく…
なんてことが、まれによくある。

脚本時に本筋ばかり書いていて、
役者が気を抜くところがないから、
アドリブで(登場人物の気持ちになって)脇筋を加える人もいる。
その役者のアドリブが正解のこともあるし、
それが緊張感を削ぐこともあるので、
全体の流れで判断するしかないところだね。

編集時にシーンの順番が変わったことで、
切ったはずのアドリブを復活させることも、
もちろんまれによくあるよ。


脚本状態で気をつけるべきことは、
そのような編集を前提とせずに、
脚本状態で、
本筋と脇筋のバランスを整えておくことだろう。
それは、
細々としたシーンだけを見ていてもよくわからない。
全体を一気読みしたときのバランス感覚でしかわからない。
じゃあ最後に整えることになるのか、
というと、最初から整えられるべきことでもあったりする。


これらのバランス感覚をさらに研究したければ、
脚本の実際に、
本筋を赤、脇筋を青とか緑とか別の色に、
塗ってみるとわかるかもしれない。

たとえば脚本添削SPのものでやってみるとわかるかも。
大岡版の「大事な人を、二駅先に置いてきた」を例に取れば、
冒頭のアンコが、
本筋(現実逃避)から脇筋(ただの小道具)になり、
再び本筋に戻る様子が見て取れるだろう。
このときの「脈を取れない新人看護婦」の話は、
「そういう歳になった」前振りであり、
脇筋かと思いきや本筋に接続される。
(ついでにのちの伏線にもなる)

このような、本筋と脇筋のバランスや変化を、
丹念に分解してみることで、
自分の原稿との差異を自覚できるかもしれない。
posted by おおおかとしひこ at 15:37| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。