2019年06月18日

アクションを描く

アクションというときに、何を想像するだろう。
格闘か。銃か。チェイスか。爆発か。
アクションは映画の華であり、
行動という意味の脚本上の専門用語のアクションより、
ずっと派手な印象がある。
さて。そういったアクションを描くとき、
気を付けることはなんだろう。


僕は、テンポと導線だと考えている。

アクションとは、非常に短い時間で、
大きくことが動くことだと思う。
怪我したり死んだりするだけでなく、
事態を左右する何かが奪われるとか、
それを取り戻すとか、
防衛線を突破されるとか、
逃げ切って行方不明になるとか、
そういったストーリー上のプロットが、
わずかな時間で大きく動くことがアクションの真骨頂だと思う。

つまり、ただ格闘したりチェイスするのは、
何も面白くない。
YouTubeでアクションシーンだけを15分とか連続で見てみるとわかる。
「この人たち、なに必死になっているんだろう」
と逆に冷めてくるはずだ。
つまり、アクションは必死で行われる何かだが、
結局ストーリー上の大事なポイント、
「なんのために必死なのか」が大事なのだ。
あるいは、
「これに失敗したらどういうことになるのか」
「これに成功したらどういうことになるのか」
が重要で、
それが大きな転換点になることが予測されればされるほど、
ストーリー上大事な緊張感が高まる部分だということだ。
それがテンポよく、派手な絵で行われるから、
アクションというのは面白いのである。

文脈から切り離されたアクションなんか、
ただの大道芸である。
大道芸がもつのは、せいぜい15分だ。
短めに、しかも次々繰り出さないと、飽きられてしまう。
大道芸は、逆にどういう台本でやられているか、
自分で脚本を書いてみるといいだろう。
いくつのネタがあるのか、
大体何分で何をしているのか、
そういったことを意識して台本を書いてみると、
どういう興味の誘導をしているか、把握できると思う。

で、大道芸はアクションそのものを楽しむものだが、
それは脚本家の仕事ではなく、
監督やアクション監督の人の仕事だ。
脚本家が与えるのはストーリー上の文脈、
すなわち、
目的や動機や成功や失敗の見通しや、感情移入である。
それを、速いテンポで行うから、
強いターニングポイントになり、
効果が強いのである。


第二に注意することは、
各人物の導線だろう。
二人でのアクションならそんなに問題ないが、
実際のところ、
そんなに重大なことが起こる場所には、
もっと多くの登場人物が、多くのそれぞれの目的をもって集まっているはずだ。
それが一瞬にして結果が決まるのだから、
咄嗟に行動を起こすだろう、
ということは予測される。
だから、各登場人物が、
何をその時思い、自分の目的に対して最大の利益を取るように動いているか、
チェックしなければならない。
多ければ多いほど、整理するのが難しくなる。
「いるけどただ驚いているだけ」のキャラが出て来てしまうだろう。
全員が妥当なアクションをするためには、
(逃げることも含む)
全員が今どこにいて、どういう軌跡を動くのか、
という動線の整理が出来ていなければならない。

警察や事件の整理の仕方で、
事件発生〇時〇分、
なになにが起こる〇時〇分……
のようにタイムテーブルを書き、
登場人物Aは最初ここにいて、
次にこう思ってこういうことをして……
などのようにその時間軸で動線を書く。
そのときBはここにいて、こういう行動を取り……
などのように図でも書いて整理しておくと、
迷わずに書けることと思われる。
それが複雑であればあるほど面白いし、
それが整理されていなくてややこしいほど面白く無いだろう。
優れた書き手は、7人でも8人でも、10人でも、
どういうアクションをどこでしているか、
うまく整理して見せられるはずで、
何もしていない待っている状態がない、
矛盾していない動線を持っているはずである。

アクションを書くのは、
とても楽しいが、とても難しい。
ピタゴラスイッチのように、
パズルを組むようなイメージだと思う。

で、結局それって、
テンポと規模は違うものの、
ふつうにストーリーを書くことと、
同じだということに気づくはずだ。

タイムテーブルや図をかくことで、
それらが整理出来るなら、
ふつうのストーリーでも同じことが出来るはずである。
アクションを書きなれている人は、
結局ストーリーを書きなれている人だ。
だから、アクションは、脚本の華でもあるわけだ。
posted by おおおかとしひこ at 00:53| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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