2019年06月19日

【新JIS配列】るの位置

新JISや月系列で面白いのは、
「る」のM位置ではないかと思う。


個人的には「る」の筆の止め位置が、
M位置と非常に近い感覚があり、
とても直感的な配置だと思う。
「。」(.位置)への相性もいい。


また、「る」は様々なカナと沢山の動詞をつくる。

ある、いる、なる、やる、える、
する、とる、きる、しる、てる、
まる、にる、そる、おる、もる、などなど。

それぞれ(【】を連続センターシフト表記)、
BM、KM、:M、【O】M、【U】M、
ZM、FM、;M、DM、RM、
【H】M、CM、QM、【J】M、【K】M。

多くの頻出系動詞が打ちやすく感じる。
ロールオーバーやアルペジオなどの快速な打鍵に貢献している配置だと考えられる。


ただ、動詞は終止形だけでなく活用するので、
「る」だけで終わる形だけではないのが残念。
つまり、思ったほど「る」は使わないのだ。
出現率を見れば1.8%。
打ちやすいMはもっといいカナがあったのでは?
と思ってしまう。
(ちなみに薙刀式では、M位置は2.7%の「な」)


新JISは高校の教科書、天声人語がソースらしいので、
「である」調が多く含まれていたことが予測される。
だとすると「る」の多さは倍以上あったかもしれない。
逆にいうと、
新JISは教科書超以外はそんなに得意ではないかも知れない。
官公庁納品の制式ビジネスの道具だった文脈を考えると、
さもありなんの戦略だ。

(親指シフトは、日本語文章では使わない「.」「,」を、
デフォルトで持っている。
これは官公庁文書が理系論文の影響を受け、
句読点に「.」「,」を制式採用しているためだ。
これは省庁による縦割りで決まっていて、
「,」「。」、「、」「.」の組み合わせもあると聞く。
そもそもの縦割り行政批判はおいといても、
現状に合わせた適応現象のひとつだろう。
当時ワープロは高級機で、
日本人全員がデジタル文字を打つ未来は、
開発時点で想定されていなかったはず)

…などということを一通り考えると、
「る」のM位置は、使いやすい新JISの利点ではあるが、
他にもっといいカナの立場を奪っているとも感じる。


再び薙刀式と比較すると、
薙刀式の「る」はI位置で、
同様に優遇しているものの、
右手中指はほかに「い」「ん」の主役級を扱うため、
不遇配置ではある。
ただし「ある」「する」を特例的にアルペジオで打てるように配慮されている。
(JI、OI)


冒頭の動詞たちを両配列で比較する。

ある、いる、なる、やる、える、
する、とる、きる、しる、てる、
まる、にる、そる、おる、もる

新JIS:
BM、KM、:M、【O】M、【U】M、
ZM、FM、;M、DM、RM、
【H】M、CM、QM、【J】M、【K】M

薙刀式:
JI、KI、MI、【;】I、【P】I、
OI、DI、SI、RI、EI、
【F】I、【D】I、BI、【N】I、【K】I
(ただし「る」の裏が「よ」のため、
きる、しる、てるはロールオーバーすると、
きょ、しょ、りょに化けるので、
このみっつは一文字目を離してから二文字目を打つ必要)

これだけを比較すると、
両者の差はそれほど感じられない。

ただ、デスマス調や口語体などの多様なことばへの対応は、
薙刀式のほうが勝ると感じている。
たとえば「です」「ます」系で比較すると、

です、ます、でした、ました、ですが、ますが

新JIS:
RLZ、【H】Z、RLDG、【H】DG、RLZSL、【H】ZSL

薙刀式(()は同時打鍵):
(EJ)I、【F】I、(EJ)RN、【F】RN、(EJ)I(FJ)、【F】I(FJ)

のような違いがあり、
薙刀式のほうが洗練された運指だと僕は思う。
(個人差があります)


僕は「る」ひとつから大体この辺までを考える。
ああ、句読点との関係もあったなあ。
こうしたことの新JIS側の考えを聞きたいのだが、
月系列の人なら考えているだろうか。

たかが「る」だけど、そうしたことの反映が、
言葉と指の関係を繋げていく。

僕は筆記具が文章や思考に影響を与えると考えている。
ついでに、姿勢や環境や食べ物すらもだ。
理系の計算配列のスタンスはそうは思ってないかも知れないが。
posted by おおおかとしひこ at 11:39| Comment(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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