2019年06月27日

早回しで考えよう

プロットや大筋を考えることが、苦手な人がいる。
ディテールにこだわり、大局が見えない人がいる。

そういう人は、早回しで考えることが出来ないかもだ。


たとえば起こった出来事を誰かに話すとき、
起こった順番でしか話せない人がいる。

詰まらない所を省略して飛ばしたりできず、
ピークのあと、本当に起こったからと言って、
ダラダラ続けたりする。

それは、
「話している時間の速さを一定にしている」
ということだと考えるとわかるかもだ。

正確な再現だと、1分で起こったことを1分かけて話すべきだが、
話す時点でそこは圧縮されている。

しかしその速度を、下手な人は変えられないということ。
仮に、
「10分かけて起きたことを、1分で話す人」
というものを考えよう。
分速10と表記することにする。

話の下手な人は、この分速を変えられないのである。

話し上手な人は、この分速を脳内でギアチェンジすることができる。

分速10、分速60、逆に分速1秒、
などのようにだ。
それぞれ、
10分で起きたことを1分で話す、
60分で起きたことを1分で話す、
1秒で起きたことを1分かけて話す、
ということだ。

この変速機能がついてないから、
話し下手な人は、「ダラダラ話している」
という印象があるのである。

省略すべきは省略し、
面白いところは引き伸ばし、
が自在にできることが、
ストーリーテラーの条件だろう。


ところで、
それは、あった出来事だけでなく、
架空のストーリーについても同じである。

ある架空のストーリーを考えるとき、
「そのストーリーの起きている速度」でしか、
考えられない人がいる。

つまり、
キャラクターが喋って、
次にこうして、
次に別のキャラクターが発言して…
などのようにだ。

これしか出来ないなら、
一生プロットを作ることが出来ない、
というのが本題。


もしプロットが作ることが苦手だが、
出来上がったものが極上の作品になる才能の持ち主ならば、
以下は読まなくて良い。
しかし、
プロットと実際の作品に乖離があったり
(プロットでは面白いが作品はつまらない、
あるいはその逆、あるいはプロットも作品も詰まらない)、
プロットが苦手でマスターしたい人は、
読むべき内容だと思う。


つまり、
プロットを作るには、
脳内速度を上げ下げできるかどうか、
ということが関係しているのだ。

ある二時間のストーリーを1200文字プロットとして書く、
ということは、
二時間の速度を上げて、1200字の速度で再生しなければならない。
ペラ5枚程度ならそれをもう少し下げるべきだし、
400字ならもっと上げないといけない。
そして均等に速度設定するだけでなく、
重要なところはわかりやすく、
重要でないところは削るべきだ。

そしてその脳内速度をマックスまで上げたものが、
ログラインだということが、想像できるかと思う。


重要でないことを切り捨てるのに、
使い勝手の良い武器は、
「なんやかんやあって」だ。

ストーリーがはじまり、
なんやかんやあって○○に到着し、
なんやかんやあって敵を倒した、
などのように、
正しく抽出すれば、
プロットの形式に近づけられるだろう。

しかし正しく抽出できるとは限らない。
「桃から生まれた桃太郎が、
なんやかんやあって鬼を倒す」
は正しいプロットの抽出だが、
「桃太郎がなんやかんやあって、
猿犬雉を味方にする」
は正しいプロットの抽出ではない。

はじめと終わりが重要だということがわかるだろう。


つまり、
はじめと終わりはやや慎重に速度を落として、
途中はちょいちょい速度を上げて、
が、
正しいプロットの捉え方だといえよう。


そのように、
脳内速度をあげたり落としたりして、
自由に粒度をコントロールしていけるようになると、
大掴みに見たり、
細かく見たりを、
繰り返して考えられるようになってくる。

絵を描いているときは、
筆先の距離で見たり、
全体を下がって観察したりするものだ。

絵は空間に関することだから、
距離が大切だ。だから移動がよい。

物語は時間に関することだから、
早回し、スローモーション、逆回転、
などが、その重要なオペレーションだということがわかるだろう。

絵描きが話をかけないのは、
移動はできても、時間移動が苦手だからじゃないかな、
と僕は考えている。
だから僕は美大出を信用していないし、
アートディレクターに対して強い不信感がある。
(出来る人もいるから、盲目的に出来る、
と考えているわけではないだけのこと)



で、その先の話だが、
「それが起きている速度で、
それを書いていく」ことが、
実際の執筆だ。
こんどはなんやかんやあっては通じなくて、
なんやかんやあってのディテールを書くことが、
実際の執筆となってくる。
posted by おおおかとしひこ at 14:15| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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