2019年07月03日

途中の作り方

ストーリーはスタートからゴールまでの謎解きだ、
と言うことはわかったとしよう。
じゃあその途中はどう作れば良いか?




スタートをA、ゴールをBとしたら、
別の要素Cをいれれば良い。
これは以前にも議論した。
Aが即Bに直結したら、
ストーリーもクソもない。

ところで、最初からBを目指すのに、
間違ったCへ進む人はいない。

では何故Cへ展開するのか?
色々なパターンがあり得る。


最初にCが目的地だと勘違いしていた
Cが目的地だと敵に誘導された
Bへ行くためにはまずCへ行くとよい、とわかる
たまたまCに脱線したが、実はBへのショートカットだった
BはCを経由しないと行けないことがわかった
Cを解決した方が、連鎖的にBを解決することだとわかる
Cがショートカットだと教えられる
逆算してCの攻略が先だと判明

BやCは、人でも場所でも解決でもよい。

とにかく、
「Cへ行くことが最善手である」
ことさえうまく作れれば、
自然にCへ流れて行く。

(敵に誘導された場合をのぞく。
この場合も、間違ったCに誘導されてると、
わかっている場合と分からない場合があり、
前者だと敵への恨みが焦点になり、
後者だとあとでのネタバラシが感情のヤマを作るだろう)

つまり、焦点Cへの視線誘導だ。

これさえうまくいけば、
「最終ゴールがBでありながら、
当座のゴールはCである」
ということを全員が理解しながら、
最終焦点をBに合わせたまま、
今の焦点をCに合わせることが可能だ。

ここで軌道変更がうまくいけば、
ストーリーは自然に流れる。(ターニングポイント)

ターニングポイントは、
180度変わる(最も強いリバーサルポイント)もあるし、
ちょっと違う話題になる90度ぐらいの曲がり角もあるし、
電車の軌道変更のように、
並行している路線にいつのまにかずれている、
程度のものまである。

強引に曲がれば強引な転換だなあ、と思われ、
自然な転換ならば誰も気づきすらしない。

あるいは、
あとからBかCかの分かれ道がここだったのか、
などと回想するくらいの、
印象強いターニングポイントを作ってもよい。


「四畳半神話大系」は、
「一回生の春、無限にサークルが勧誘してくる」状況下において、
「このサークルに入っていたらどうなったか」
を考え、毎回ここから始めることになる、
並行世界ループものだ。
特に原作の4サークルを10サークルに拡張したアニメ版が素晴らしい。
分かれ道を選択するのは完全に興味とか趣味のレベルの、
物語的動機がない。
だから「向こうのルート」に途中で興味が出てくる仕掛けになっている。

「バタフライエフェクト」や「オールユーニードイズキル」
も同じ構造で、
これらの映画の場合は「ある目的を達成するために、
初期状態Aに戻り並行世界ループを繰り返す、
という目的ありの構造となっている。
(未見だけどシュタゲも同じ匂いがする)


これらは「一本道でない構造」の物語の例だけど、
一本道の場合は、
「一端Aに戻る」が、
「既に初期状態のAでないA2になっている」
と面白い(時間経過を利用する)と、
展開しやすいことは以前にも議論した。

時間経過を利用しない場合、
話がスプレッドになりやすいので注意されたい。

スプレッド=時間方向でなく空間方向に広げること。
ああいう場合もある、こういう場合もある、
と紙の上で並べるときは面白いが、
時間方向に並べると、「話が進まない」感覚になるので、
これはストーリーではないと自覚しよう。

近々の例で言えば、
「we are little zombies」の前半部、
4人の過去の告白パートは、
設定の羅列(スプレッド)に過ぎず、
時間が進まない(目的への行動がなく停止している)から、
ひどく退屈だったのだ。

「四畳半神話大系」のアニメ版では、
「各サークルでの人生」の見本市が、
「毎週同じ時間に見るテレビ」という視聴習慣に合致したことで、
スプレッドが心地よくなった計算がある。
(だから一気見は、あんまり面白くない)

「バタフライエフェクト」では、
「ジャンプするたびに、ヒロインの過去が次第に判明する」
などの謎解きがあり、
時間的には進行していた。
「オールユーニードイズキル」では、
「毎回死ぬからそれを上手に抜ける」が面白パートになっていて、
ゲーム攻略のような面白さで、
ループパートを進展させていた。

スプレッドは時間進行とセットであるべきで、
「ただ開陳したい」こととは真逆の計算である。


話が逸れたが、
この逸れが大事な結論へのショートカットになったよ。

時間展開には様々なパターンがあり得る。
Bが目的だとわかっているが、
そこに至る足がかりをもとめて試行錯誤することも、
C、D、Eという展開になっているわけだ。

「Cはダメだった、次に可能性の高そうなDをやろう」
は、立派な展開になるので。
(これを「壁と迂回」と呼んだりする)


こうして、
最終ゴールから遠ざかりつつ近づいていく。

それが展開だ。
posted by おおおかとしひこ at 14:56| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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