キャラが出来てもストーリーが出来ない人は多い。
キャラとは時間軸を持たないもののことであり、
ストーリーとは時間軸に沿った変化だからで、
キャラとストーリーは存在する次元が違うからである。
もし魅力的なキャラを思いついた時、
どうやったらストーリーになるかを考えよう。
ありがちなのは、
「そのキャラの活躍する場面」を考えることだ。
あるいは活躍だけではなく、
落ち込む場面や辛い場面、ほっこりした場面、
一息つく場面を考えつくかもしれない。
これらはフラッシュ的にやってくる。
それは閃きという神の啓示なので、
まずはそれをメモしておく。
この閃きがないならば、あなたには才能がない。
この閃きこそを、ストーリーの源泉にしている人もいる。
さて。
これらはあくまで閃きに過ぎず、
時間軸を持たないことに注意されたい。
時間軸を持たない?
数分は持つではないか。
いや、数分しか持たないのは時間軸を持つとは言えない。
看板が動く看板になった程度だ。
時間軸を持つとは、
「看板が別の看板になること」
とたとえてもいい。
つまり、そのキャラが、
どうやって別人になるのかを考えることが、
時間軸を考えることだ。
なぜ別人になってしまうのか?
陽気な人が陰気になってしまうのだとしたら何が原因か?
未熟な人が成長して大人になるのだとしたらなにが原因か?
引っ込み思案だった人が勇気を持てるのは何が原因か?
頭脳明晰な人が狂ってしまうのは何が原因か?
そんなことを妄想しよう。
何が原因か?
事件があったはずだ。
人は急に変わらない。
恒常性の維持機能があり、
「大体アイデンティティが保たれる」ことになっている。
それが別人になってしまうほどの、
どんな事件があったというのか?
大きな事故か。誰かを失ったのか。
トラウマやコンプレックスが原因か。
それとも何者かによってねじ曲げられたのか。
なにかを守るために余儀なくか。
大切な人のためか。
色々な妄想をしよう。
強く別人になってしまうからには、
強い事件や影響が必要で、
それはストーリーの強さになる。
マックス別人になるほどの、
マックス強力な事件や変質を考えると良い。
その強力な落差が、あなたのストーリーの最大振幅になる。
そしてここが重要なところだが、
その最大振幅は、
現在でなく過去にあってはならない。
ついついやってしまいがちなことに、
「過去に大きな傷を受け、人を信用しなくなってしまった」
など、
最大振幅を現在ではなく過去に求めるのは良くない。
なぜなら、ストーリーは現在と未来のことであり、
過去にはないからだ。
今は今と言った瞬間過去になる。
ストーリーは過去ではなくこれから起こることの名称である。
仮に過去に傷を受けて別人になっていたとしても、
「それ以上の別人に変化する」が、
これから起こるストーリーの中でもあれば良いのである。
最大振幅は過去設定ではなく、
ストーリーの中であるべきだ。
逆に言えば、ストーリーとは、
「そのキャラクターが人生の最大振幅で変化する様を描くこと」
だと考えられる。
だから、極論すれば、
ストーリーとはキャラクターを使い捨てる。
あるキャラクターがストーリーの主人公になったら、
ほかのストーリーで主人公になることは出来ない。
続編がなぜ難しいかの答えがこれだ。
1での最大振幅を、2が超えないといけないからだ。
3が難しいのは、2の最大振幅を超えなければいけないからだ。
長く続くシリーズでは、
主人公の変化を早々に諦めて、
最大振幅の変化をするキャラクターが、
そのストーリーの主人公になることが多い。
また、スピンオフが生まれやすいのも同じ理由だ。
あるキャラクターの最大振幅を描いたら、
別のキャラクターの最大振幅を描きたくなってしまうからであり、
そのキャラクターのさらなる最大変化を描くことが困難だからである。
さて。
変化には事件が必要だ。
きっかけがあり、それが拡大して、
いろんな人を巻き込んで大事件になっていき、
連鎖的に広がっていかなければならない。
それをそのキャラクターが自ら解決することで、
その事件は収束し、
その際に大きく変化して別人になる。
要するにそれがストーリーだ。
事件発生から主人公がその解決に乗り出すまでを、
大体30分で書き、
事件解決の過程やあれこれを60分で書き、
クライマックスから落ちまでを30分で書けば、
映画シナリオになるだけのこと。
つまり、
事件発生から解決に至る複雑な組み立てこそが、
ストーリーの本体である。
その事件はどういうものなのか。
戦いなのか、殺人事件か。
どうすれば終結するのか。
即解決を妨げるのはなんなのか。
悪意や善意がそれを邪魔したり手助けするのか。
一旦解決したと思ったら、
全解決ではなかったとどう深みにはまっていくのか。
そうしたことを考えることが、
ストーリーを考えることだ。
あなたのキャラクターたちを、
その渦に放り込むことを妄想しよう。
いずれ勝手に行動を始め、
いずれ解決して、別人へガラリと変わるだろう。
そして、ひとつだけ決めておくと良い。
そのキャラクターの目的だ。
人生でいつか達成したい遠くのことでもいいし、
ちょっと先のことでもいいし、
今すぐの何かでもいい。
目的があるから人は行動する。
行動の裏には目的がある。
なぜそのキャラクターは事件を解決したいのか。
その目的をきちんと決めよう。
あるいは、その解決を邪魔するキャラクターは、
なぜそうしたいのか、
その目的をきちんと決めよう。
協力するキャラクターも、なぜ協力したいのか、
目的をきちんと決めよう。
なにが目的でもいい。
場面に対して目的がないキャラクターがいては、
ストーリーにならない。
目的の遂行こそストーリーである。
そして目的が異なるから、
衝突したり回避したり融合したり離散する。
そのぶつかりをコンフリクトといい、
事件発生から解決の間に、
何度も起こることである。
ここまで妄想できたら、
一度全体図を描いて俯瞰するといい。
フォーマットはいろいろあるが、
A4の白紙に手書きでいろいろ書くのがおススメ。
A4じゃ足りないなら、
B4やA3でもいい。
一枚に書くようにすること。
俯瞰するには全体が一枚になっているべき。
これをもとに、
「1からそのストーリーを語るには、
どこから語ればいいか」を考える。
事件発生からか、その前の前提からか、
あるいは途中から始めて事件発生に遡るか。
あるいは全ては回想で語られるのか。
何が何年何月何日目何時に起こるのか、
年表を書いて整理してもいい。
時間軸で起きたことを、適宜シャッフルしながら語ってもいい。
うまく最後まで語るには、
これで必要十分か?
何かが足りなかったり、
何かが余分だったりしないか?
それを確認するには、
A4数枚程度にプロット形式(台詞なしで出来事だけ書く)
で書き出してチェックするのが良い。
文章形式でもいいし、
起こることの箇条書きでもよい。
途中で、「あれ、なんでこうなったんだっけ」
と思うなら何かが足りてないし、
途中で、「あとあとこうするなら、ここは無駄だな」
と思うならそこが無駄だから無くしてもよい。
そうこうしているうちに、
何パターンかストーリーができるだろう。
こうなったらプロットができたようなもので、
それがストーリーだ。
あとは納得いくまで練り、
調べ物が必要なら徹底して調べ、
高まったら書き始めることだ。
2019年07月06日
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