2019年07月10日

【配列】自作配列のつくりかた(カナ編)

カナ配列を自作するのは、ローマ字より困難だ。
アルファベット26文字(+アルファ)の並び替えよりも、
遥かに要素が多いからだ。
(組み合わせを考えれば二乗程度差がある)

とはいえ、ローマ字より明らかに打鍵数が減るカナ配列は、
逆らい難い魅力がある。
その重力に惹かれる人は、以下を読むと良い。
(勿論名作配列の使い手になっても良い)


自作配列のつくりかたは、
ローマ字編を一通り参考にしてもらうとして、
カナ配列の自作段取りは、

1. 打鍵範囲を決める
2. シフト方式を決める
3. 煮詰める

の順だろうか。



1. 打鍵範囲を決める

カナ文字の多さ(50以上)に比べて、
キーの数が足りないのが問題の根本だ。

・文字キー3段の30に収める
・数字段の4段の40を使う
・小指伸ばし部も使う
・親指キー部分を使うかどうか

の選択肢がある。
その中でも、
・指を伸ばしにくいキーは使わない
(QP、TY、Z/、56、10-などなど)
という手もある。
逆に、
・ESCやシフトやタブにも文字を置く
いろは坂のような例もあるよ。
(ファンクション段まで使った例は今の所ない)

僕はブラインドタッチが苦手なので、
薙刀式は3段30キー以内、かつQTYはほぼ不使用にした。
逆にいろは坂配列は最も広い打鍵範囲を持つ。

打鍵範囲が狭いということはそれだけ被るキーが多いから、
シフト方式を工夫しないといけない。
逆に広いと、単打が多くて楽だけど、
使いこなせるとは限らない。
キーピッチがとても狭い、
たとえば14とか16のキーボード前提ならば、
打鍵範囲が広い配列もあるかもしれない。


また親指部分は、キーボードによって物理位置が微妙に違うことを、
知っておくべきだ。
JIS統一規格は親指部分を定めていないため、
適当な配置が多い。
共通するのは真ん中のスペースキーだが、
短い(2U)のから長い(6.25U)のまでいろいろある。

また、スペースキーの両脇のキーを配列に含む場合もある。
親指シフト系列では、無変換、スペース、変換の、
どれか二つを親指キーに定めるが、
これがいろんな位置がありすぎて、ここでは語りきれない…
また、変換無変換を持つのはJISかつWinのキーボードのみで、
USにはそのキーはないし、Macは別のキーが来る。
(自作キーボードでいい親指位置を持つ、
新しい配列を作るという選択肢が、最近増えた)


薙刀式はこれらの事情を鑑みて、
スペースキーしか使わないように割り切った。


2. シフト方式を決める

限られた範囲にそれ以上の数のカナを置くからには、
さまざまなシフトで重ねないといけないわけだ。

このシフト方式がその配列の第一の性格を決めると考える。
先行する配列には、さまざまなアイデアがある。


何キーをシフトキーにするか?

・親指2キー(ニコラなど親指シフト系)
・スペースキー(新JIS、薙刀式)
・中指キー、薬指キー(月系、下駄系)
・人差し指キー(薙刀式)
・小指のシフトキー(JISカナ)
・定められたマトリックスの同時(下駄系、蜂蜜小梅、姫踊り子草)
・使用する二音ないし三音同時(薙刀式)
・行と段を同時押し(よだか)

どういうシフト方式か?

・同手シフトと異手シフトを区別する/しない
・連続シフトあり/なし
・同時打鍵のみ(親指シフト系、下駄系)
・同時打鍵かつ連続(飛鳥系)
・先押しかつ連続(JISカナ、薙刀式)
・前置(月系)
・後置(濁点符など)
・相互シフト(薙刀式)

何種類シフトがあるか?

・親指2シフトのみ(親指シフト系)
・親指2シフトとマトリックス同時(蜂蜜小梅)
・濁点半濁点後置と小指シフト(JISカナ)
・濁点半濁点後置と、中指前置(月)
・中指薬指と同時のみ(新下駄)
・センターシフト、人差し指同時、使用二音三音を同時(薙刀式)

などで分類できるだろう。

先行配列をいくつか使ってみて、
自分に何が向いてるのかを知ることは良いことだ。


また、
濁点をどう打つか、半濁音をどう打つか、
小書きをどう打つか、拗音外来音をどう打つか、
で、使用カナの数やシフト方式は様々にある。
(一覧表作りたいけど複雑すぎて手をつけてない)

特に数の多い濁音、拗音をどう打つかは、
そのカナ配列の性格を大きく決定づけるだろう。
(濁音は頻度も種類も多い。
拗音は種類が多いのに頻度は少ない)


また、「排他的配置」について述べておく。

TRON配列で初めて導入された考え。
「濁音は逆手親指シフト」というシフト方式で、
「そのキーには濁音になるカナは一つしかない」
ようにしておくと、濁音シフトしたとき、
一意に濁音カナが決まる方式。
これで裏にも表にも濁音キーが置ける自由度があがった。
これを濁音に関して排他的配置ということにする。

たとえば、
下駄配列、蜂蜜小梅配列は濁音に関して排他的配置。
英月配列は、濁音、半濁音、小書きに関して排他的配置。
薙刀式は、上に加えて拗音、外来音に関しても排他的配置。


3. 煮詰める

ローマ字と違い、カナ同士は何にでもくっつきやすい。
(ローマ字は連接しない子音の組み合わせが沢山ある。
漢直は大抵ここに漢字定義をもってくる)

濁音と清音が同じ位置(清濁同置)なら、
一部運指経路を使いまわせるが、
それが最適経路という保証はない。

また、何にでもくっつくとはいえ、
そこにはよく出る連接とそうでないものがある。

これらを計算で求めることは事実上不可能
(組み合わせ爆発の桁が違う)なので、
ある程度計算機でやれるとしても、
最終的には人の手による評価、並び替えが必要だ。

何が良い運指なのか、何を立てて何を引っ込ませるのか。
指運びの楽さ、速度、疲労度。
自分だけが出来るのか、他の人も出来るのか。
これには年単位かかると、経験者としては思います。


また、
左右交互打鍵が多すぎると、
右が左を追い越すなど、左右の同期が取りづらいことがある、
片手アルペジオが最速運指である、
アルペジオは外指→内指が速い、
しかし片手連続運指は悪運指(段越えや打ちづらいキーの組み合わせ)が増える、
指の長さは異なるので、長い指の下段は打ちづらいし、
短い指の上段や最上段はつらい、
チルトや奥チルト、テント(山形)や逆テントで打ちやすさが変わる、
打ち方(上から指を落とす、手首を浮かせる、撫で打ち)によって、
向く配列とそうでないものがある、
などの知見もある。



もし自作カナ配列を作ってみようという酔狂な人がいたら、
このやり方を参考にされたい。

ローマ字と同様、
先人のものを自分アレンジするのが、
比較的とっつきやすいかもしれない。


この続きとしては漢直編やIME編や自作キーボード編があるべきだけど、
僕は詳しくないので省略します。

WindowsならDvorakJが色々改造を試せるので、
一番開発が楽だと思われる。
その後の実装はQMKやらかえうちやら、
選択肢が他にもあるよ。


全体像をまとめたものがないので、
まずはまとめてみました。
posted by おおおかとしひこ at 11:27| Comment(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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