ストーリーというのはABCという、
少なくとも3要素が必要であることについては以前書いた。
この1セットをXとする。
このXは一度固定したらぐらつかせないこと。
「面白くないかも」と不安になって、
XにYを足してしまうことは、
よくある間違いだ。
Xが一度出来上がったら、
それは「軸」というものだ。
背骨がABCで構成されたら、
それをぶらせてはいけない。
ABDにするとか、EBCにするとか、
そうしたら面白くなるのかと不安になってはいけない。
それは面白くなくなると相場が決まっている。
なぜなら、
一度できたX前提での評価をしてしまいがちだからで、
「初見の人がどう思うか」を考慮に入れなくなるからだ。
Xだけでは不安になるので、
Xより面白くなりたいという目測の誤りが、
すべての原因である。
一旦出来上がったXを、改良できる、
という思い込みが間違いだ。
僕はABCが出来たら崩すべきではないと思う。
それが面白くないのはそれまでだと思う。
その面白さはABCのセットの限界だと思う。
だから、「そのABCの面白さ」をより増すように工夫すべきであって、
Xを否定する方向で改造するべきではないのだ。
これは化粧や整形に似ているかもしれない。
素材の良さを煮込めるかどうかが勝負であり、
新しい要素を足したら嘘が二重三重になっていく。
出来上がったXからCを引いて、
新しいY(たとえばDEという要素)を足して、
別物にしようとしてもムダだ。
それはキメラになるだけで、
完全体をなさない。
ストーリーとして出来ているかどうかは、
ABCという整った背骨の3要素が必要で、
背骨を二つ入れてはいけない。
あなたがやるべき「改良」は、
内臓やガワを足すことであり、
背骨を二つにしたり三つにしたりすることではない。
改良には深層から表層まで、
色々なレベルがあることを知ろう。
背骨レベルでの直しや、
内臓レベルでの直しや、
皮膚レベルの直しがあることを知ろう。
内臓の位置を変えただけで背骨の面白さが輝いたり、
皮膚レベルを整えるだけで背骨がまっすぐになり、
内臓が機能することだってある。
プロットを考えている時、
とくにXにYを足そうという誤りが起こりやすい。
背骨レベルの思考だからだろう。
Xが出来たら、
それ以上の改良は、一段表層のレベルでやることだ。
「根本的に間違っていたのではないか」
という不安が、
Xを歪めてしまいがちということ。
自信を持て、というのが正解なのだが、
それが出来ないからそうしてしまうループになる。
実際のところ、
自信とは覚悟だ。
仮に面白くないかもという不安に囚われたとしたら、
「そこはそれまで」と割り切ろう。
せっかく生まれたXに、
受肉させて完成させなさい。
受肉で面白くすることを勉強すれば良い。
ディテールは神に宿る。
凄く興味深いディテールを思いつけば良い。
ディテールから作った詰まらないプロットより面白いから、
安心しなさい。
最終的に、
ディテールがよく出来ていて、
しかし背骨Xは普通だな、という作品になるかもしれない。
しかし、
背骨が歪んでいて何がいいたいか意味不明な作品よりも、
数段レベルが上だということは言える。
また新しい背骨を考えればいいだけだ。
Xに受肉させるのだ。
YやZを継ぎ足してはいけない。
たとえば、表面的なセリフで面白くすることはできる。
シチュエーションで魅力的にすることはできる。
冗談を足したり、仕草を面白くすることはできる。
それが、Xを魅力的にするように作ると良い。
実は、プロットだけ、ディテールだけを思いつくよりも数段難しい。
コントロールの必要なクリエイティブだ。
だから初心者は不安になり、
(自分の支配が及ぶ)同じ層のものだけで、
コントロールしたくなるのだろう。
後輩の失敗例を。
「病室で死んだヘビメタのボーカル。
集まった仲間が死ぬなあああと言って演奏をする。
と、止まったはずの心電図が、
ドラムのリズムに合わせて動き出す。
ボーカルが生き返った!」
というプロットXが先にあった。
これをもう少し膨らませようというときに、
「医者が歌い出し、ボーカルとヘドバンを始め、
『これがデスメタルの誕生である』と落ちる」とか、
「メンバーが頭に装置をつけて、
死後の空間で再開してそこでバンドをする」とかの、
Xを歪めてYやZにしていた。
やるべきはXをそのままにして、
次の層を改良することだ。
つまり、たとえば、
「病室で死んだヘビメタのボーカル。
集まった仲間のうち、
ドラムが、ドン、ドン、ドン、と始める。
ベースもそれに乗り、演奏を始める。
心電図は止まったままだ。
しかしドラムは更に激しくし、
ベースもメロディを奏で出す。
ギターがリフを奏で出す。
そうすると、止まったはずの心電図が、
リズムに合わせて動き出す。
メンバーは顔を見合わせて、更に演奏を激しくする。
それに合わせて心電図が再開。
奇跡か、となった瞬間、
おっさんの医者がリズムを取り出し、
心電図は一回止まる。
メンバーが睨み、最初から演奏を始め、
心電図が動き出し、ついにボーカルは目を開けて歌い出す」
のようにするべきなのだ。
Xの背骨をあくまで固定したまま、
ディテールで(演奏の成功失敗や医者のくだりなど)、
膨らませていけばいいのだ。
これはXの背骨を維持したままの、
コントロール力が要求される。
Xを不安に思ってYやZに行くと、
もはや何が何だかわからなくなる。
「このストーリーはこうやって楽しむ」は、
強い一つしかない。
2019年07月10日
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