僕は、
「ブラインドタッチができる人とできない人では、
後者の方が圧倒的だったから」と考える。
ワープロの出始めの頃、
親指シフトやM式やJISカナその他があった。
qwertyローマ字は人気がなかったはずだ。
「二打かかるので面倒」がその理由として多かったはず。
一打一カナのカナに比べると、
ローマ字は無駄だ。
サイトメソッドだと特にだ。
「二個探さないといけない」は、
学習初期において大変ストレスだし、
標準運指すらみんな使えない。
ワープロコンテストが開催される頃には、
タイピングのスペシャリストが養成されてきただろう。
ブラインドタッチで、親指シフトが速かった。
ローマ字の打鍵数、JISカナの打鍵範囲は、
親指シフトに対してビハインドだったろう。
だがPCが発達して、
親指シフトはJIS化せず、
「とりあえず」qwertyローマ字とJISカナが選ばれた。
この選定の前提はサイトメソッドであって、
ブラインドタッチ前提ではなかったはずだ。
ブラインドタッチだと新JISはなかなかいいけれど、
サイトメソッドだとわかりにくいよね。
これが新JISの普及を妨げた。
大多数のポチポチ派と、ブラインドタッチの専門家が、
同じ道具を使うことに問題があったのだが、
当時は棲み分けていたのが、
現在に至って分からなくなっている、
伝承が途切れている、
というのが現状ではないだろうか。
サイトメソッドでqwertyとJISカナどちらかを選べと言われれば、
探すのが楽なqwertyローマ字だと思う。
PCの日本語入力初期においては、
qwertyローマ字サイトメソッドと、
PCを使わず文字入力は親指シフトワープロを使う人の、
二派があったと考えられる。
その構成比は、最初は1:1程度だったかも知れないが、
10:1や100:1に開いていったわけだ。
当時に、PCでブラインドタッチをし始める人が出てくる。
彼らは親指シフトにリーチする手段がないから、
qwertyローマ字かJISカナの二択だ。
で、qwertyローマ字が覇権を取ったのだと推測する。
qwertyローマ字かJISカナかでいうと、
qwertyローマ字の方が多かっただろうし、
ブラインドタッチJISカナは、よほどモチベがないと挫折する、
特殊能力が必要なもの(=万人には不可能)だと僕は思う。
たまたま、qwertyローマ字が、
超高速打鍵にも向いていた
(母音が全て指が違い、ロールオーバーできたため、
使用頻度はおいといて、秒10打以上打っても安定)
から、
高速打鍵者なるタイパーが生まれたのだと考えられる。
もし親指シフトがJIS標準だったなら、
みんな親指シフトをやり、
ロールオーバーの限界をどこかで感じて、
更なる高速マニアがqwertyローマ字を「発見」していたかも知れない。
つまり結局は、
大多数のサイトメソッドがqwertyローマ字を、
高速マニアがqwertyローマ字ブラインドタッチを、
それより少ない古参が親指シフトを、
使っているのが現状だと僕は考えている。
実際、ブラインドタッチ習得率は30%程度しかなく、
つまり70%の人は、
今日も画面とキーボードに視線を往復しながら、
ぽちぽちと打っているわけだ。
これは大変な無駄だと思う。
そう思う人がブラインドタッチをマスターしようとするのは当然だけど、
「qwertyローマ字のブラインドタッチ」
は、ブラインドタッチの中でも難しいレベルだと思う。
ふつう左手はそんなに器用に動かないし、
ホームポジションに疑問が残るし。
で、「そこまでする努力は無理」となって、
「ブラインドタッチ自体が無理」と思い込んでしまう。
たとえばカタナ式のブラインドタッチは、
ほとんど一日から三日でマスターできるし、
一週間もあれば実戦に使える速度になる。
qwertyローマ字よりも運指が合理的だからだ。
しかし70%の人はそれを知らず、
不合理なデファクトスタンダードを使い続けることになる。
少数の高速タイパーはどうだろう。
月や飛鳥である程度の結果を出した人もいる。
しかし層の数がqwertyローマ字と違いすぎた。
qwertyで結果を出してる人もいるから、
「特に配列を変える必要性を感じない」
だったのではないだろうか。
あるいは、qwertyでタイパーになろうとしたけど、
多くの人は単にタイパーにならなかっただけかも知れない。
そうこうしているうちにフリックが出てきて、
今のところ日本は、
大多数はフリック、
70%はqwertyローマ字のサイトメソッド
(この二つの層はほとんど重なり合う)、
少数のqwertyローマ字ブラインドタッチ、
極少数のタイパー、
さらなる少数の親指シフター、
さらに少数の、
「qwertyブラインドタッチや限界に挫折して、
ほかの配列を始めた人」
という分布に、
結果的に落ち着いただけではないか。
色々な人の経験談によれば、
「配列がその人の速度を決めるのではなく、
その人の速度が速度を決めるのだ」
という説が支配的だ。
極端に言えばどの配列だったとしても、
ブラインドタッチは、
その人の最終速度に落ち着く。
つまり、
「最初からqwertyを使い、
今日まで脱落しなかった人」が、
30%いるだけのこと。
こうして、
qwertyローマ字が覇権を取った。
ように見えているだけだと僕は考えている。
実際はフリックが日常覇権、
タイパー的にはqwerty(多数)かJISカナ(少数)が覇権、
なのだろう。
qwertyは覇権の原因ではない。結果だ。
コカコーラが最も売れているから最も美味しいと限らないことと同じ。
シェアは、合理と関係ないところで起こるだけだ、
と僕は考えている。
TRONやソニーのβは、政治で普及しなかった。
ITの時代になって、合理的でシンプルな、
アマゾンやグーグルやアップルやフェイスブックが覇権を取った。
合理と覇権は相関が強くなった。
しかしデファクトにまみれた日本企業は、
合理で押せなかったので、覇権を取れなかったのだろうと、
僕は考えている。
僕は、普段は無刻印キーボードを使っているが、
qwertyと印字されたキーを見るたびに、
こんなことを考えたりする。
それと、すでにご存知かもしれませんが
大岡さんが書いていらっしゃる時期より少し前の話(QWERTY採用まで)は京大の安岡先生がいろいろと書いてらっしゃいますね。
http://kanji.zinbun.kyoto-u.ac.jp/~yasuoka/publications.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/isciesci/47/12/47_KJ00001013425/_article/-char/ja/
ただ、大岡さんが論じてらっしゃるような、80年台にどのようなプロセスで普及していったのかは、パッとさがしたところ、なかなか見つからないですね。
安岡さんの論は大体把握してます。
で、現代に繋がるミッシングリンクを議論する上で、
「ブラインドタッチ出来る専門家」と
「ブラインドタッチ出来ない素人」が初期にいて、
「ブラインドタッチ出来る人が(一部)増えた」
という視点がないなあと思ったので書いてみました。
キーボードを扱う上で、
ブラインドタッチ有り無しは、別物の道具の使い方だと思います。
包丁に例えれば想像はたやすいかと。
出来る人にとっては無刻印で十分だと思うのですが、
みなさん躊躇うのが象徴的ですね。
https://srad.jp/~yasuoka/journal/308687/
フリックのシェアについては
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/702105.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/konpyutariyoukyouiku/43/0/43_67/_pdf/-char/ja
学生で多く見積もって80%程度、社会人だと半分以下と、意外と低いみたいです。(2015年時点なので増えているかもしれませんが)
ガラケーでトグルに慣れていた年代にとっては、フリックに切り替える動機も生まれにくいんじゃないでしょうか。
やはり昔においても、よほどの専門家でない限り、
フルキーブラインドタッチは念頭になかったかもですね。
フリックの普及率調査に関しては古いかもですね。
ラインやツイッターの普及度などと相関があると考えます。
フリックをブラインドで打つ人はいないので、
多くの日本人は、結果論的に、手元を見ながら入力していると考えられます。
回答数が最も多いのは神戸新聞のアンケート2018年2月3日
https://twitter.com/kobeshinbun/status/959696691241734144
フリック66%。たぶんフォロワー層に社会人の割合が多いでしょうね。
個人のアンケートはフォロワーが偏るし票数が少ないものがほとんどなので例には出しませんでした。
あとは文字/日を知りたいところですが、
それは如何ともしがたいですね。
実際のところは、
スマホでフリック、PCでキーボード
(ブラインドかどうかは置いといて)という人が、
ボリュームゾーンと思われます。
「それしか使わない」というより重なってるでしょうね。
ツイッター開いて、PCからもスマホからも書いてる人も見るし。