「スパイダーマンファーフロムホーム」の出来がいいと聞き、
これは見ておかないと、と思いようやく見れた。
こんな傑作なぜ誰も騒がないのだ?
しばらくネタバレ無しで評する。
スパイダーマン側の話としては、
サム・ライミ版で完璧に出来ている。
「偉大なる力は、偉大なる責任を伴う」
のストーリーは、もうあれで完璧だ。
リブート版は同じ轍を踏み、
前作を超えることはなかった。
今回はそれを捨ててきた。
スパイダーマン側にテーマはない。
なぜなら、
より大きな正義が、すでにアベンジャーズ シリーズでやっているからだ。
だから今回のスパイダーマンは、
隣人としてのヒーローに徹する。
スパイダーマンの魅力は何か?
普通の高校生だからいいのだ。
身近な人が敵になり、
身近な人が味方になる。
世界の広さと人間関係がちょうどいいのだ。
リブート版はそこを読み違えた。
サム・ライミ版は隣の女の子に恋して、
親友が敵になり、教授が敵になり、
叔父を殺した男が宿敵となった。
(ヴェノムは余計だった)
この距離感が絶妙なのが今作だ。
敵バルチャーのトップシーンが素晴らしい。
街の解体屋の好景気が仕事を奪われる様。
ただのおっちゃんが悪役になって行くその瞬間。
ここで心を掴まれる。
しかしこの物語の本当の凄さは、
第二ターニングポイントにある。
ミッドポイントの塔のアクションが良く、
「まあまあやるやんか今回は」なんて思ってたけれど、
ストーリーとは何か、この脚本家は完全に知っている。
以下ネタバレ無しでは済まされない。
しばらく改行で。
彼女との初デート、
家に迎えに行き、ドアを開けたその瞬間。
それがこの物語の全てだ。
もう最高だ。
スパイダーマンの魅力は、
世界の広さと人間関係とのバランスだ。
普通の人間関係でも、
好きな女の子の父親は、最強の敵である。
ラスボスになってもいいくらいだ。
それが今回のヴィラン、バルチャーの正体とは。
見事すぎて拍手が出た。
あとはもう楽しむしかない。
車の中のシーンが何から何まで最高だ。
ピーターの正体を勘付く父、
降りるときに脅すこと。
その後ダンスに向かわせたと思い、
彼女に「ごめん」というピーター。
そうでなくちゃスパイダーマンじゃないよな!
この一連の距離がちょうど良く、
宇宙規模に拡大してしまったアベンジャーズワールドとは、
一線を画した距離関係がある。
ラスト、ピーターの決断もスパイダーマンらしくて素晴らしい。
試験だったんだろ?からの本当に記者たちがいたのも良かった。
さらにエンドロール明けの、
父親の「正体を知らない」という嘘も見事だった。
「知ってたら殺しにいく」
という短い言葉で、見事に悪を騙したことを表現出来ている。
下手な脚本家なら、
「知らねえよ」「俺も知りてえんだ」
「知るわけねえだろ」などと、
下手な台詞回しになる。
それを一発で切って落とすキレの良さだ。
そうそう、ストーリーが見事すぎて書き忘れたけど、
スクリーン投影型のステルス機の上がラストステージってのが、
なかなか粋だったね。
こういう絵のオリジナリティはとても重要だと思う。
サム・ライミ版を過去のものにするシリーズになり得るか。
一本としての魅力は劣る
(アベンジャーズ前提だから)が、
そのあとでの、ファーフロムホームがどう出るのか、
楽しみが増えたというものだ。
2019年07月15日
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