これだけ配列のことを考えておきながら、
たまに逆のことを考えてみる。
「トップスピードは、配列によるのではなく、
その人の上限で決まる」という俗説の存在だ。
つまり、ある程度習熟すれば、
どんな配列でも似たような速度に収束する、
という仮説である。
qwertyとカナ配列が、
大体同じ速度になってくる、
という現象から、言われていることだ。
個人内ではどちらかに偏るかもしれない。
それはたまたま相性だったと考えられている。
そんなことない、
自分は何かの配列でもとのqwertyを追い越した、
って人も多いだろうけど、
それはqwertyの練習を止めたから成長が止まっただけで、
十分な練習を積めば、今の配列の速度に(おおむね)追い付くだろう、
と予想されている。
ということは、
結局、「どの配列を練習するのが自分に合っているのか」ということが、
効率を決めることになってくるのではないだろうか。
しかし人生と同じで、結果論でしかこれはわからない。
「自分にあっている配列だったから、この結果を出せた」
ことしか断言できないことになる。
モルモットを使って、
様々な人に様々な配列をやらせて実験することも出来るだろうが、
現実的ではない以上、
僕らみたいな有志が体を張って体験するしかない。
で、僕が経験した中で言えるのは、
「ひとつを気にいってずっとやっていると、
タイピング能力全般が上がる」ということと、
「二つ以上学ぶと、『配列をマスターする能力』が上がる」ということ。
前者に関しては、
カナ配列をずっとやっていて、
たまにqwertyに戻ると実感することが出来る。
なぜか指の動きが前よりよくなっている。
クロストレーニング効果なのだろう。
後者は僕の経験でいうと、
どんどんマスターする期間が短くなっている。
飛鳥、下駄、新下駄、親指シフト、新JIS、
とやってきたが、
新JISは一日でほぼ打てるようになってしまった。
もちろん配列自体の難易度もあるから一概には言えないが、
カナの性格(頻度や連接など)が、頭に入っている、
ということがあるかもしれない。
あるいは、指の能力自体が、
初期にくらべて上がっているという、
クロストレーニング効果も加味されるだろう。
ということで、
実際には、好きなやつを何個かやってみたらええんやで、
というわりと適当な結論になりそうだ。
二個も三個もマスターできない、
というのは先入観に過ぎない。
前のを忘れてしまわないか、
という危惧はわかる。
忘れても、またもどってきたら、大体思い出すよ、
ということも僕は経験している。
ただし、「常用するのはひとつだけ」。
最高速をだせるようになるのはメインのひとつで、
あとはドングリのせいくらべになると思われる。
僕の経験でいうと、
以前親指シフトをやってよくないと思って凍結していて、
新JISを始めて、そこそこ打てるようになってきて、
また親指シフトを再開したら、
だいたい一日で打てるようになった、
ということは記録しておこう。
もっとも、両者ともメインの薙刀式にくらべれば、
話にならない速度ではあるが、
「出来る」というレベルだったら、ぜんぜん可能だ。
ただし速度が上がってきたら、メインの薙刀式を喰うかもしれない。
同速度帯のは混乱して、違う速度帯なら混ざることはない、
という仮説もあり、僕はそれを信じている。
結局、複数の配列を使ったとき、
最速になるのに効率がよく、抵抗がない配列が、
その人にあった配列だと、結果的に言えるのだと思う。
どうしたらそれを見極められるのか、
ということが次に疑問に思うことだけど、
自分がどういう人間なのか、
先に分ればわかるかもしれない。
実際にはやりながら、こういう要素があるのか、
ということを自分で実感していくしかない。
自分を発見しながらやっていくしかない。
たとえば人差し指中指のアルペジオが好きなのか、
中指人差し指のアルペジオが好きなのか、
薬指はどれくらい嫌うかとか、
親指との同期は得意かとか、
同時押しの精度とか。
ということで、経験者は「自分が何者か」言えるようになるが、
未経験者は言えない、という段階で、
事前にわかる方法はない、だと思う。
頂上はその人にとって決まっている。
しかしルートにいくつかの楽さ、効率がある。
それは同時にやってみることで比較できる。
僕はカナ配列なんて覚えられるはずがない、
なんて二年前は思っていた。
いまいくつ覚えたというのだ。
飛鳥や新下駄はもうほとんど忘れてしまったけど、
新JISと親指シフトは打てる。
しかもまた飛鳥や新下駄は触れば思い出す自信はある。
可能だ、ってことだけ書いておく。
親指シフトの合理性に疑問をいだき、
他の配列を始めようとする人は、
「もう一回覚えなおすのか」
ということに躊躇する人が多いと思う。
でも意外とできます。
そして無駄になることはなくて、
元の配列にもどってきても運指がよくなっているから、
クロストレーニング効果を実感するために、
他の配列をやったっていいと思う。
5個くらいやってみたら、
自分に合う配列があるかもしれない。
気長にやれば、わりと当たりを引きやすいのではないだろうか。
所詮は指の動かし方だけだから、
ダンスを複数覚えることと同じだ。
タンゴしか踊れないやつより、
ジャズやアニメーションダンスが多少なりとも踊れるほうが、
全体的な上達も早いのではないだろうか。
ついでにいうと、
配列の効果と同等に物理キーボードの効果は強くて、
配列検討と同様に、キーボードは複数渡り歩くことになるだろう。
(自作キーボードにたどりつくと、調整が沼だけど、
きめ細かくできるのでお勧めだ)
あとは、配列自体に出来不出来があるのではないか、
という不安はあるかもしれない。
沢山の情報があるものは概ね評判がいいかもだが、
それがあなたと合う保証はない。
聞いたこともない配列は大丈夫だろうか、
などの不安もあるだろうけど、
触ってみたら合うかもしれない。
成功や失敗をすれば、「自分に合う配列」が分かってくるので、
「唯一最初にマスターする配列を一生使う」の縛りさえ外せば、
自由になれる。
そこまでモチベーションがない人は、
無難なやつを一つやってみるといいよ。
2019年07月22日
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