2019年07月23日

強力な焦点さえ発生させられれば、いくらでも引っ張れる

前記事の続き。

逆に言えば、
興味や緊張さえ持続できれば、
引っ張りは可能ということだ。




多くの引き伸ばし漫画は、
基本このテクニックを使っている。

強力な「○○はどうなるのか?」を作り、
感情移入させて焦点とし、
「そのためにはAをしなければならない」と、
動機と目的を同時に作るわけだ。

あとは最初の興味が飽きるまで、
手を変え品を変えていけば良い。

引き伸ばし自体が悪いのではない。
「飽きても続ける引き伸ばし」が良くないだけだ。


興味が持続し、緊張感さえ保てていれば、
適度に目先を変えて、
この人は今こう思ってこうしようとしている、
などを綿密に描いても十分持つ。

多くの二次創作は、
実はこの論法を用いている。
「本編の○○と△△の間の話です」と、
大枠の緊張感や焦点を設定しつつ、
その嵐を前に、細かい部分はどうなっていたのかを、
描くことがとても多い。

つまり、乱暴に言えば、
二次創作とは本編の引き伸ばし部分の創作だ。

これは二次創作だけではなく、
一次創作でも使える、という話。


いろんなものを描きたいが、
本編の緊張の進行が止まるのではないか、
と恐れる場合、
「どれくらいなら本編の緊張が飽きてしまうか」
を感じる力が必要だ。
持つなら続けてもいいし、
持たないならさっさと畳んで本編へ戻れば良い。


たとえば、
「we are little zombies」というクソ作品では、
主人公たちの紹介で全く飽きてしまう。
それは本編の焦点、
「偶然集まった4人が友達になる」が、
飽きてしまっているのにまだ続けるからである。
デブの中華料理屋あたりでやめとけばまだ持ったのに、
そこからまだ二人もやるからだ。
ページ数か?情報量だと思う。

ところで、
本編から脱線しているようにみえるとき、
「いや、この本編のこの焦点と関係あるのですよ」
と上手に見せていくと良い。

シドフィールドのいうピンチポイント
(ピンチは挟むほうのピンチ)だ。

たとえばlittle zombiesでの退屈を防ぐには、
自己紹介ブロックが始まる前に、
「バンドやろうぜ」を焦点としておき、
2人終わったところで退屈かなと思ったら、
「なんで自己紹介延々やるの?」
「だってバンドメンバーを良く知るのは大事だろ」
と、一旦焦点、ここではバンドの話に戻しておく、
というテクニックがあれば良かった、
ということだ。

そうすれば、最初の焦点と、
以降は関係あるぞと緊張感を取り戻すことが出来るわけだ。

飽きるというのは、
「全然進展がない」ということと関係する。

スプレッドは時間進展がないため、
おススメできる手法ではない。
何かを並列させるときは、
必ず事態の進展が必要だ。

たとえば上のピンチポイントを入れるならば、
「バンドは解散だ」になるとか、
「作詞と作曲は分けよう」とか、
バンドの進展の小エピソードが入れば、
ピンチポイントとして機能したことになる。



危険には人は慣れる。
アラームが鳴り続ける状況は、
アラームを切ることで対処しがち。

そうしたときに、
アラームが鳴っていることに飽きずに、
上手に目先を変えながら、
引っ張ることは可能ということだ。


結局今やっているこれが何のためにあるのか?
が重要で、
引っ張って状況を豊かに描くことが、
作品を味わう上でプラスになるならやったほうがいい。

作者が楽しくても観客にとって退屈なときもあるから、
ズレには気をつけることだ。


実のところ、引っ張りはタメでもある。
その後怒涛の展開が待っているならば、
緩急が効く。

急を計算した上での緩ならば、
みなドキドキしながら緩を楽しむのだ。

明日受験の日とか、
明日が本番とか、
明日戦争がはじまるとか、
その前の日は、結構引っ張れる。
そのあとに急が待っていると、予感できるからだ。
posted by おおおかとしひこ at 00:39| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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