2019年07月23日

デジタルは人を幸せにしない:チートツール

デジタル表現の一番よくないところは、
チートツールになってしまったところではないか?


現実世界では、
何かをしようと思ったら大変な労力がかかり、
犠牲がある。

たとえば現実にかめはめ波を出そうと思ったら、
拳法や超能力の修行が必要だ。
反動への備えや、連発の使い方にも習熟する必要がある。

デジタルがなく、アナログ特撮でこれを表現することを考える。
空気砲を使ったり、吊りをやったり、粉を飛び散るように仕込み、
反動表現も体で表現しようとするから、
苦労が見える。
その苦労をしたらする分だけ、画面に映り、
それが「拳法や超能力の修行の大変さ」に比例して見えるようになる。


デジタルはそれを一切せずに合成で済ます。
そのエフェクトを1から手作りすればまだあるかもだが、
それすらテンプレのパラメータを弄ればOKだ。

つまりデジタル表現はチートツールだ。

安価に楽にアナログ特撮と似たような効果が作れる、
とチート出来ているように思えるのだ。


ところがそのチートが罠だ。
苦労してないことが仇になって、
「とりあえずデジタル」の安易な考えになる。

だから、「拳法や超能力の修行の苦労」
を考える深みがないのだ。

1カット2カット、はいデジタルエフェクト足しておしまい、
の絵で仕上げてしまう。

アナログ特撮で2カットで表現するのとは、
気迫が違ってくる。

その気迫や苦労の差が、
アナログとデジタルの差かもしれない。


アナログは、作った凄さが伝わってくる。
細かい絵なら「これ全部手で描いたの?」って凄いとなるし、
大きな彫刻なら「これ全部手で作ったの?」ってなる。

デジタルはどれだけ凄くても、
「これ全部手で作ったの?」とはならなくて、
「デジタルって便利」にしかならない。
それはつまり、「拳法や超能力の修行の苦労」が、
ちっとも伝わってないってこと。


なぜデジタルだと苦労が伝わらないのかな。
アフターエフェクトのレイヤー組みや、
マスクの追っかけの大変さを皆知らないからか。
いや、
多分みんな、コピペ無限回のチートさを、
知ってるからかもしれない。

「え?CGは全部自動で作ってくれるんでしょ?」とか、
「え?コピペしてくればいいんでしょ?」という勘違いは、
コピペというチートツール扱いをしている証拠だ。


僕はやっぱり手描き手塗りが好きで、
「そこまで苦労した気迫」こそが、
作品の魂になると思う。

デジタルは、それがチートツールにしか見えなくて、
それは芸術としての資格があるのだろうか?
と思っている。


文章を例にしたほうが分かりやすいかもだ。
この文章は、僕が手で書いてるから伝わる。

仮にこれが優秀なディープラーニングによる、
自動生成だったら?
どんなに内容が素晴らしくても、
「なんだコピペか」にならないか?

その意味のなさが、チートツールの運命かもしれない。
posted by おおおかとしひこ at 11:24| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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