以下ネタバレ。
メタ視点を持ってフィクション世界を扱った名作に、
ネバーエンディングストーリーがある。
僕は原作は未読だが、
少なくとも映画版は最高だった。
主題歌も良かったしね。
この出来のいい物語と、
ユアストーリーのストーリーにもなってないラスト部分の、
比較をしよう。
ネバーエンディングストーリーでは、
フィクションの世界を、
読者である少年が救うことになる。
つまり第四の壁が壊れて、
舞台に上がる演者になる。
本を読む→本の中の世界→本から呼ばれて本の中へ
と、しっかりとメタ視点を最初から作ってあるので、
観客は混乱しない。
僕が一番好きなのは、
本の中のファルコンが現実世界に飛び出てきて、
少年のいじめっ子を驚かせて尻餅をつかせるところだ。
つまり、フィクションの力をきちんと表現している。
フィクションの世界は、ただの現実逃避ではない。
フィクションという架空の世界で冒険したり恋愛することで、
現実では得られない経験をすることで、
「現実の人生をより良く生きるなにかを学べる」
ことが、僕はフィクションの機能だと考えている。
だから少年はネバーエンディングストーリーなる本を読むことで、
ファルコンが現実に出てきたという寓意で、
「いじめられていた現実を逆転した」
という現実へのフィクションの効果があった、
という話がネバーエンディングストーリーなのだ。
冒険は本の中のことだけじゃない、
あなたの人生そのものが冒険の本番で、
だからネバーエンディングなんだよ、
ということが、
ネバーエンディングストーリーのテーマである。
これは、フィクションとは何か?
に対してきちんと答え切った名作だ。
対比してユアストーリー。
サラリーマンは何もしていない。
運営に金を払い、搾取され続けるだろう。
コンティニューだからね。
現実に影響を与えた少年。
与えもせずまた篭るサラリーマン。
その差だ。
前者がフィクションの機能を見事に描いたのに対して、
後者は「フィクションはただの現実逃避で価値がない」
と言い切ったに等しい。
ビアンカやフローラやゲレゲレがまるで生きているようで、
世界は本当にあるんだって思ってたって?
当たり前やないか。
ロックイーターやファルコンは生きているし、
ファンタージェンは実在する。
実在するとして読むのがフィクションである。
(だから実在してなさがあると作者の不備なのである)
実在するから価値がある、とドラクエではいっていた。
実在するのは当たり前の前提で、
そこから何をするかがフィクションの価値だ。
ただのリアリティ構築遊びではない。
幼稚園児の積み木ですら、
実在する世界として扱う。
リアリティ構築はフィクションの前提でしかなく、
結果ではない。
フィクションの結果は、
それが現実にどういう影響を与えるかで決まる。
ネバーエンディングストーリーは、
いじめっ子をぎゃふんと言わせる程度に役に立った。
ユアストーリーは、
現実を変えることもなく過去の思い出に生きて、
課金を続けるおじさんである。
フィクション舐めてんじゃねえよ。
そのおじさんたちに、
フィクション側から現実を変える力を与えるのが、
フィクションに課せられた使命だろうが。
世界を救うことの意味。
背中を預けられるパートナーの価値。
大人が見る前提なんだから、
主人公は結婚後フローラに再会して、
心が揺れるサブストーリーだって作れたじゃないか。
それで、背中を預けるってどういうことだ、
というテーマを深掘りすることもできたはずだ。
日本は沈みかかっている。
それをおじさんたちが奮起して変えなくて、
誰がやるというのだ。
この状況にフィクションから力を貰えなかったら、
その奮起もなくなるではないか。
それを、ゲーム世界に篭って課金だけしてろよ、
という結論に導いた、
山崎貴の罪は重い。
僕らおじさんの世代は、
みんなネバーエンディングストーリーから力を貰った。
僕はまだファルコンに乗って、
現実を良くしようと戦い続けている。
ネバーエンディングストーリーについては、原作「はてしない物語」未読は少々もったいないかと。
映画版ネバーエンディングストーリーは原作ファンだけでなく、原作者自身も違和感を持っているラストとなっていました。
個人的にも、小説版後半部分の「本を読んでいた少年」バスチアンの栄光と堕落と再生と成長によるカタルシスは、映画版のそれを凌駕するものだと思っています。
いつか読まなきゃと思っていた物語です。
この機会に探すとしますかね。
小説は恐らく後半部分に主題があり、
映画はそれをまるごとファルコンで誤魔化したのでしょう。
映画を見た時もそれは感じたことだったので。
(いじめられっ子を、不思議な存在で空飛ぶことによって見返す、
という類型は「ET」の中にすでにあったので、
僕は同じことをやるので省略を読み取ってください、
ということだと当時理解しましたね)
その省略された部分を味わおうかと思います。