2019年08月06日

堀井雄二のシナリオの素晴らしさ(「DQYS」評6)

このシナリオからわかることは、
堀井雄二のオリジナルシナリオの出来の良さだ。

それについて指摘しておく。ネタバレ。


僕が優秀だと思った点は、
一幕に全部伏線があることだ。

「あれとは、
最初に出てきたあれのことだったのか!」
の驚きがふたつあった。

「マスタードラゴンが人間に姿を変えている」
の人が、天空城を脱出して最初にたどり着いた人間界の爺さんだったのか!
と、
その変身に必要なのがドラゴンオーブで、
それを過去から持って来ることになったとき、
あの時最初に出会っていた大人は、自分自身だったのか!
のふたつ。

「伏線は初登場時に仕込む」の見本のような、
いい伏線であった。
しかも初登場時に、
なるべく印象的になるように仕込んである。

爺さんは馬車で助けてくれて、
「くっさいやつども」とセリフで印象付けてある。
幼少の頃出会った大人は、顔が見えないことで印象付けてある。
その目線を上げた時が、今の自分になっているという。

「ああ、『最初にあったあれ』なのか!」
は、伏線と解消の、最も理想的な形だ。


ちなみに僕が一番好きな原作エピソードは、
残念ながら削られてしまった。
主人公が幼少時訪れた妖精島に、
大人になってからいくと、
妖精が見えないんだよね。
でも息子たちを先頭にすると、
子供の時に訪れた妖精島が見えるような仕掛けになっている。

「妖精は子供しか見えない」ことと、
「大人は妖精が見えない」ことと、
「継がれた」ことの、
三つを上手に体験する、
ドラクエの中でも一番好きなエピソード。

幼少期のエピソードが削られたから、
「再訪」の文脈の余地がなかったのが残念だ。
幼少期のビアンカとの冒険のエピソードがあればなあ、
なんて夢を見てしまう。


原作で二番目に好きなのは、
冒頭、プレイアブルになった瞬間に、
パパスが「色んなところを開けて遊んでなさい」
だったか「開けちゃいけないよ」だったかどっちだか忘れたけれど、
その台詞を言うのがすごく好き。
子供に戻って、タンスやツボや宝箱を開けまくったものだ。
それが今回のチュートリアルになっている、
というのが優れた設計だ。

この「童心」こそが、僕の最も好きな妖精島の仕掛けに繋がっていて、
僕は童心を忘れたけれど、この子たちはそれを持っているんだ、
と思って物凄く感情移入する仕掛けになっていると思う。

つまり、伏線は初登場時に仕込むのである。


こうした、
シナリオの常識であるところの伏線と解消が、
見事に使われているところが、
堀井雄二シナリオの優れた点だ。
(原作はリアタイでしかやってないので、
ここも脚本スタッフの創作だったらごめんなさい)

あと、
「老婆に化けたフローラが本心の薬をあげる」
というエピソードは秀逸だと思ったけど、
原作経験者に話したらそれはなかったらしい。
今回の創作だとしたら優秀な感情移入エピソードだと思う。
これでフローラが好きになるもんね。
(だからこそ、これが最後の出番になるのが勿体ない。
逞しく成長して、ラストのバトルにも参加した方がいいと思うんだよね)


伏線は初登場時に。
感情移入に値する、人間の行動。
こうしたことが、
ラスト10分を除いては非常に秀逸だった。
posted by おおおかとしひこ at 22:31| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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