このシナリオからわかることは、
堀井雄二のオリジナルシナリオの出来の良さだ。
それについて指摘しておく。ネタバレ。
僕が優秀だと思った点は、
一幕に全部伏線があることだ。
「あれとは、
最初に出てきたあれのことだったのか!」
の驚きがふたつあった。
「マスタードラゴンが人間に姿を変えている」
の人が、天空城を脱出して最初にたどり着いた人間界の爺さんだったのか!
と、
その変身に必要なのがドラゴンオーブで、
それを過去から持って来ることになったとき、
あの時最初に出会っていた大人は、自分自身だったのか!
のふたつ。
「伏線は初登場時に仕込む」の見本のような、
いい伏線であった。
しかも初登場時に、
なるべく印象的になるように仕込んである。
爺さんは馬車で助けてくれて、
「くっさいやつども」とセリフで印象付けてある。
幼少の頃出会った大人は、顔が見えないことで印象付けてある。
その目線を上げた時が、今の自分になっているという。
「ああ、『最初にあったあれ』なのか!」
は、伏線と解消の、最も理想的な形だ。
ちなみに僕が一番好きな原作エピソードは、
残念ながら削られてしまった。
主人公が幼少時訪れた妖精島に、
大人になってからいくと、
妖精が見えないんだよね。
でも息子たちを先頭にすると、
子供の時に訪れた妖精島が見えるような仕掛けになっている。
「妖精は子供しか見えない」ことと、
「大人は妖精が見えない」ことと、
「継がれた」ことの、
三つを上手に体験する、
ドラクエの中でも一番好きなエピソード。
幼少期のエピソードが削られたから、
「再訪」の文脈の余地がなかったのが残念だ。
幼少期のビアンカとの冒険のエピソードがあればなあ、
なんて夢を見てしまう。
原作で二番目に好きなのは、
冒頭、プレイアブルになった瞬間に、
パパスが「色んなところを開けて遊んでなさい」
だったか「開けちゃいけないよ」だったかどっちだか忘れたけれど、
その台詞を言うのがすごく好き。
子供に戻って、タンスやツボや宝箱を開けまくったものだ。
それが今回のチュートリアルになっている、
というのが優れた設計だ。
この「童心」こそが、僕の最も好きな妖精島の仕掛けに繋がっていて、
僕は童心を忘れたけれど、この子たちはそれを持っているんだ、
と思って物凄く感情移入する仕掛けになっていると思う。
つまり、伏線は初登場時に仕込むのである。
こうした、
シナリオの常識であるところの伏線と解消が、
見事に使われているところが、
堀井雄二シナリオの優れた点だ。
(原作はリアタイでしかやってないので、
ここも脚本スタッフの創作だったらごめんなさい)
あと、
「老婆に化けたフローラが本心の薬をあげる」
というエピソードは秀逸だと思ったけど、
原作経験者に話したらそれはなかったらしい。
今回の創作だとしたら優秀な感情移入エピソードだと思う。
これでフローラが好きになるもんね。
(だからこそ、これが最後の出番になるのが勿体ない。
逞しく成長して、ラストのバトルにも参加した方がいいと思うんだよね)
伏線は初登場時に。
感情移入に値する、人間の行動。
こうしたことが、
ラスト10分を除いては非常に秀逸だった。
2019年08月06日
この記事へのコメント
コメントを書く