2019年08月10日

シチュエーション、行動、感情移入

この3つの柱を創作できると、
面白いストーリーになるかも知れない。


まずは面白げなシチュエーションだ。
これを新しく作ろう。

見たことのないシチュエーションがいい。
そして、異常なシチュエーションで、
そこから脱出しなければならないやつだ。

ある日殺人鬼に追われてもいいし、
恐竜の遺伝子を再現して作った恐竜島に、
嵐で取り残されてもいい。
ある日宇宙人が攻めてきてもいいし、
ある日誰かに恋してもいいし、
犯人と刑事が手錠をかけたまま3000マイルの護送旅をしなければならない、
でもいい。

新しいシチュエーションを。
見たことのあるものではなく、
「おっ、そんな面白そうな状況、
どうやって解決するんだ?」
というシチュエーションを考えだそう。

物語とは、
そんな目を惹くシチュエーションと、
見事な解決のペアで与えられる。

用意に想像できるように、
シチュエーション自体を考え出すほうが、
解決法を考えるより簡単だ。

だから、
あなたは沢山の面白げなシチュエーションを、
出来るだけストックするのだ。
その中で、頭の中でシミュレーションしてみて、
解決法を思いついたやつだけが、
ストーリーを作れる可能性がある。

だからあなたのアイデアノートは、
解決できない、しかし面白げなシチュエーションで満載かも知れない。

例えば大学時代の僕のアイデアノートには、
「ある日二階の勉強部屋に、
ミサイルが飛んできて刺さる
(信管が壊れていて爆発しない)」
という奇妙なアイデアが記されている。
面白い冒頭と思ったのだが、
これを面白く解決する手段が思いつかず、
20年以上放置されたままのメモだ。

解決だけを考えなければいくらでも考えられる。
ある日起きたら虫になっていた、
ある日起きたら死体と寝ていた、
なんてのは、どう解決すればいいか全くわからないよね。
しかしこれを解決まで持っていったのが、
カフカの変身であり、ソウであったりするわけ。
(変身はオチまで知らないので解決してないかも)


隕石が落ちて中から怪生物が出てきてもいいし、
上司(や国家)の不正の証拠を見つけてもいいし、
廃部寸前の部に、自分の才能が生かせると知ってもいい。

それが、新しく面白そうなシチュエーションだと思えば、
それは面白いストーリーの可能性がある。
もちろん、何が新しいかは、
古今東西に通じておく必要がある。
「上司の浮気場所に自分の部屋の鍵を貸して、
見返りに出世を企む男」なんてのは、
未だに新しい、オリジナルのシチュエーションだ。
(「アパートの鍵、貸します」)

色んな作家が、どれだけ面白げなシチュエーションと、
その見事な解決法に苦心しているかだ。


次に考えるのは行動だ。
シチュエーションは解決や脱出を要求している。
そしてそれはスルッといくものではなく、
必ず困難を伴う。
主人公の勇気やリスクを必要とするし、
誰かの迷惑やリスクになるかも知れない。
このまま自分だけ苦痛を受けていれば、
みんながスルーして丸く収まるかもしれない。
だけど主人公は第一歩を踏み出し、
これらを解決するための、強い意志を持って行動する。

その動機に、我々は感情移入が必要だ。

どうでもいい我儘な行動に、
私たちは感情移入しない。
「もし自分がそういう立場だったら、
自分もそうするだろう」
あるいは、
「今の自分にはとても出来ないが、
理想の自分ならそういう行動をするだろう」
という行動に、私たちは感情移入する。

「電車の中で迷惑行為をしてるやつを、
上手いこと言ってぎゃふんと言わせる行為」は、
嘘松フィクションのストーリーであるが、
その具体が下手なだけで、
感情移入の原則としては合っているわけだ。

怖い人に自分は言えないが、
もしこういう風に言えば痛快だろう、
という理想を作れればよいのだ。
それがリアリティのある解決であればあるほど、
その人には感情移入しやすい。

感情移入は、言葉が的確ではないと僕は思っている。
その内容は、「行動を応援する気持ち」
であるべきだと思うからだ。

ストーリーを見る上で、
主人公に感情移入することは必須であるが、
それは、
その主人公の気持ちを共有することである。
しかしそれは感情移入がキープされた状態であって、
その状態に至る前提条件が、
「その人を応援できる気持ち」があることだ。

チートしたり、悪の動機だったり、
よく分からない人だったりしては、
応援できる気持ちは湧かないものだ。

私たちが応援できる人に対してのみ、
その人をなるべく深く理解して、
その人の気持ちがわかるわーとなるのが最上だ。
その状態がキープされているからこそ、
主人公の苦悩や喜びと、
私たちの一喜一憂がシンクロするのであり、
それが感情移入のなされた状態ということである。

メアリースーがストーリーにとって良くない理由はここだ。
メアリースーは他人から見て応援できないのだ。
「私だけ得して、御都合主義で愛されて、
誰からも憎まれず嫌われず、
理由なく最強でいたい」
という奴を、誰も応援したくならない。
(「天気の子」の主人公がそうだ)
それは、他人から見たら「甘えている奴」だ。

主人公は「わたし」ではなく他人にせよ、
という僕のアドバイスは、
「わたし」にしてしまうと、この甘えに気づかない所にある。
観客は他人を見に来ているから、
あなたも他人を見る視線にいなければならない。


感情移入の最も深いシンクロは、
その動機において行われる。
どんな行動をとろうが、
「その気持ちが分かるから、その行動もやむなし」
となるからである。
「その気持ちだとしたら、普通はこうするだろうに、
まさかこんな行動に出るとは。
余程の思いがあるのだな」になってもよい。

「そんなことを考えているなら、なぜこれをしないのか」
「大した考えもないくせに、そんなことをする資格などない」
になると、ストーリーは詰まらなくなる。

動機への感情移入は、行動を監視する装置にもなるわけだ。


京アニの痛ましい事件の最も注目点は、
動機の解明である。
行動自体は許されるものではないが、
「そんな物凄い行動の理由は何か」を人は知りたい、
という点に着目されたい。

「そんなにまでして思いつめていたならば、
その行動をするのは分かる」なのか、
「その程度の思いでそんなことをしやがって」
なのか、我々は知りたいわけだ。

前者なら無罪(そんな思いはないだろうけど)、
後者なら有罪だ。

動機は行動に、価値や意味を与える。


また、
行動すると、反発される。
人は他人と社会を形成しているので、
誰か他人が突出して変なことをすることを認めない。
あるいは、露骨に妨害する人もいる。
これらの軋轢や揉め事を、コンフリクトという。
主人公だけでなく、
他の人もこの件に関して行動をしてくることを、
忘れてはならない。
(セカイ系が良くないのは、ここの視点が欠けているからだ)

主人公なりの正義があるように、
その他人にもその人なりの正義がある。

どちらも矛盾しなければハイどうぞでいいけれど、
そうならないところにコンフリクトは発生する。
遺恨を残してどう決着をつけるかは、
主人公の行動次第であり、
それが解決方法と関係してくるわけだ。


行動を描くコツとして、
「後戻りできない瞬間」がいくつかあるべきだ。

もうそれがあったからには、
元の状態には戻れないものがあるといい。
それと引き換えにしてまで前に進む意味が、
問われるからである。

人が死ぬのがよくあるパターンだ。
犠牲者が犬死にしただけだ、
という意味にしたくない、
という動機を追加するのは、
追加燃料になって、その人の行動の正当性を担保するからだ。

人が死んでまでこれをやる意味があるだろうか?
とそれは問うことになる。
人の命と引き換えにするほどの、
重要なことは何か?
と、その解決に価値を問うことになる。
その価値こそがテーマになるわけで、
人の命と引き換えにならない価値ならば、
その行動には感情移入が生まれないだろう。

そこまでの価値と引き換えにしなくても、
「後戻りできない状況/行動」は、
人の行動の正当性に関係してくる。

その人と別れた、
最終電車が出てしまった、
新しく会社を起こした、
賭けに出た、
告白した、
殴ってしまった、
バレた、
などなど、
人生で後戻りできない、小さな瞬間、大きな瞬間は、
行動の価値と関係してくる。
それが感情移入に値する価値に転換していき、
感情移入はより強化されなければならない。


そしてストーリーとは、
行動による状況変化、
価値の変化の連鎖である。
主人公の行動だけでなく、
コンフリクトの相手(敵やライバル=アンタゴニスト)の行動や、
第三者の行動(善意、悪意、無意識)でも、
どんどん変わっていく。

興味あるシチュエーションからはじまった、
長い旅が、
どのような解決になり、
それがどのような価値になるかは、
動機と行動の価値で決まる。



面白いストーリーというのは、
これらが矛盾なく組み上げられたパズルで、
しかもリアリティがあり、
感情移入が上手くいく、価値の提示がなされていることであり、
かつ新しいことである。


このように考えると、
「私たちは何を思いつくべきか」
が整理されやすいのではないだろうか?
posted by おおおかとしひこ at 12:12| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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