ストーリーを進めることは本当に難しい。
プロットを綿密に立てたとしても、すぐに路頭に迷う。
進んでいるのか停滞してるのか後退してるのか、
それすらも分からなくなることがある。
こういう時は「後戻りできない瞬間」を作るといい、
というのはかつて書いたと思う。
これをもう少し巨視的な所から眺めよう。
その、後戻りできない瞬間のパターンは、
あなたはいくつ持っているか?という話。
まずミクロの所から。
後戻りできない瞬間を作ると、
ストーリーは前に進まざるを得ない。
5分前のシーンの状況に戻ろうと思えば戻れるとか、
今謝れば元どおりになるとか、
そういう気持ちをたたえたままだと、
ストーリーは停滞し、全身感覚を失う。
「いつでも戻れるわ」という感覚は、
ストーリー進行ではない。
人が死ぬのは、その強い例だ。
決して生き返ることはないから、
周囲の人はその気持ちを胸に、
前に進まなければならない。
なにかを知ってしまったり、言ってしまったり、
してしまったりしたあともそうだ。
秘密や真相を知る、
知られたくないことを知られた、
誰も知らないことを密かに伝えた、
好きだと伝えた、
結婚しようと言った、
好きなのに嫌いと言ってしまった、
誤解された、
ネットに書き込み炎上して魚拓を取られた、
つい殴ってしまった、
つい意地悪してしまった、
悪意を伝えた、
などなど、
いくらでも例が出てくるだろう。
それの前にはもう戻れないことが、
「次どうしよう」という力を発生させて、
何かを登場人物にさせる原動力になる。
原動力は危機(感)である。
締め切りの設定は外的要因だが確実だ。
締め切り設定前にはもう戻れない。
サイは投げられた。
じっとしてるだけで首が締まる。
○○までになんとかしなければならない。
こうした焦燥感のようなものが、
ストーリーの強力な前進力になることは、
幾多の例を見ればわかるだろう。
で、本題。
これを巨視的に見る。
ひとつの作品内で、
どんなカードを切っているか?
そのパターンを沢山持っているか?
という話。
後戻りできないポイントを、
ABCD…とした場合、
それらで同じネタ被ってねえよな?ってこと。
あるいは、
複数の作品で、使うパターン決まってねえよな?ってこと。
この人いつも○○のパターンで、
ストーリーを前に進めてるぞ、
とバレたら、飽きられるし予測されてしまう。
その中の典型的なもののひとつが、
「四天王の中で最弱」かもしれない。
一人は倒された(後戻りできない)が、
しかしこれ以上の試練が明らかになる、
というのはどこででも見るパターンだから、
そればかり使う作者は、またかよって言われるだけなのだ。
つまりそれって、
「毎回違うパターンを考えているか?」ってこと。
思考停止せず、手癖を使わず。
最近書いた話では、
「留守の隙に家を焼かれる」というパターンを、
初めて書いた。
こんな後戻り出来ないパターンもあるぞ、
と自分の中では発明だけど、
まあ、よくあるっちゃあある。
あらゆるパターンはどこかで見たことがあるかも知れないが、
しかしこの組み合わせでは使われてないとか、
そうしたことが、パターンを新しくすることである。
沢山偏らず作品を見ろ、
という僕のアドバイスは、
いろんな「後戻り出来ないパターン」を見ておけ、
ということでもある。
そうすれば、思いついたそれが、
よくあるパターンなのか、
新しいパターンなのか区別がつくだろう。
同じ「後戻り出来ないポイント」のネタを、
なるべく使わないようにすることだ。
それってつまり、
日々新しいパターンを吸収したり、
考え出さないといけない、
ということなのだ。
バラエティがあり、予測がつかないほど、
そのストーリーは吸引力を増す。
2019年08月15日
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