2019年08月19日

クライマックスの見取り図

長いシークエンスを書くときには、
そのシークエンス自体の見取り図があると良い。

オープニング、ミッドポイント、
二幕前半、ボトムポイントなど、
キーになる長い場面では、そうしたものがあると全体が設計しやすい。
(取りこぼしや余計なものの、事前チェック)
クライマックスは、その最たるものだ。


どんなフォーマットでもよい。
時系列がわかることが必要だろう。

時系列が一本道なら地図がいいかも知れない。
地図に矢印を書いていって、展開を書き込むとよい。

ただし地図にはコツがあって、
使わない部分の地図は空白にしておくことだ。

ある地図を大体描いて、どういうルートがいいかなと考えることは良いが、
実際のルートが決まったら、
場面だけの連続の地図だけを、
改めて書き出すとよい。

そこ以外の地図は、本編に出ないことを確認されたい。

たとえばドラマ風魔12話の誠士館での決戦は、
校庭、中庭、階段、武蔵と竜魔の戦う部屋、夜叉姫の間、
などは場面に出てくるが、
それ以外の、
たとえば廊下や教室や屋根や、地下室やトイレや駐輪場や、
出てきそうな時計台やカテドラルなどは、全く出てこない。
(ステンドグラスがあればガシャーンって割りたかった)


複数のプロットラインがあるなら、
複数のラインを書き込み、
交差するポイントをチェックすることもできる。

複数のプロットラインがある場合、
どの順番で描くべきかも重要だ。

わかりやすい順番、何かを隠す順番、
などについても事前に練っておける。

地図に番号を振る手もあるが、
実際は別紙に、一次元のプロットを別に書いてみたほうが、
実際の原稿を想像できる。
これはいつものプロットのように、
順番を入れ替えたり、合成したり分解することができる。
出てこない場所をオミットすることも出来るし。


複数の場所での同時進行なら、
複数の地図をかいてもよい。
いずれすることになるから、
わかりやすく図に出来るとよいだろう。

前記事で述べた、
スターウォーズ(Ep4)のクライマックスは、
共和国軍の基地?からデススターまで、
一本の道を書くことが出来る。

一方別部隊がバリヤーを破壊する作戦を進行しているはずで、
これは表には描かれないが必要なプロットラインだ。

バリヤーが解け、デススターに貼り付いてからは、
溝に沿っての一本道だ。
途中ダースベイダーの妨害があり、
これを振り切るミッションが追加される。
据え置きのトーチカ破壊なども地図にはかいてあるだろう。

(なお、デススターは卵子でXウイングは精子だ。
受精のメタファーがあることで、
非常に分かりやすくなっている。
ダースベイダーは白血球かウイルスか。
溝は女陰であることは、男なら理解できるメタファー。
穴に突っ込むのは本能的に気持ちいい)


こうしたことを、
説明なしで一気に絵だけで展開できるように、
セットアップはしておくものだ。
クライマックスで説明してはいけない。
折角のテンポが台無しだ。
クライマックスで呼吸させたり、
考えさせてはいけない。
怒涛というものはそういうものだ。

スターウォーズの場合、
クライマックスのデススター攻略の前に、
ブリーフィングのシーンがある。
ここで最後のセットアップをしているのが、
とてもわかりやすいので例にあげた。

ここでの説明は何かをチェックしよう。
ここまでで説明したことは一々言ってないことに、
注意されたい。
(注:スターウォーズは、あとで追加シーンのある特別版ではなく、
オリジナル劇場公開版で勉強すること。
特別版はコレクターアイテムの、
テンポが悪すぎる、映画としては三流のものだ)

このブリーフィングでは、
我々観客の頭の中に、
「大まかな地図」を想像させることに役立っている。
この地図に従えばジェットコースターのように楽しめるとわかる。
あとは考えずにすみ、純粋に感情だけになれるわけだ。


勿論、これで前振っておいて、
途中で緊急事態が起こり、計画の変更などがあっても良い。
それも作者の地図の上の計画になっている。
(アドリブで変更したら大抵どこかで破綻するのは、
途中の執筆と同じ)


長いシークエンスを書ききるコツは、
一気書きもおすすめだ。
クライマックスは特に一番筆が乗るところだろうから、
止められても徹夜で書いちゃうかも知れない。

僕が今書いているクライマックスは多段階型で、
段階の度に一休みしているが、
そのブロック自体は一気書き。

クライマックスは勢いで突っ走る。
地図を見ながらじゃ遅くて、
地図が頭に入っている状態での疾走が望ましい。

それに必要な地図を、
事前に練り倒しておこう。


挫けそうになったら、
「何のために戦うのか」を、常に思い出すことだ。
主人公と同様に、作者は奮い立つ。
そしてそれは、観客も同じだろう。

ここに来たら、最後まで最高に突っ切ってほしい。
観客も作者も、一体化して主人公の行く末を追う。
posted by おおおかとしひこ at 09:08| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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