物凄い感動するわけでもないし、
大ヒットしたわけでもない。
しかし昨今のクソ映画に比べれば、
遥かに良心的で、各部に細密な細工がある。
僕はこういうのを良品と思うし、
こういう作品が常に作られ続けて欲しいと思う。
「ふつうにいい」とはこういうこと。
なぜこれを取り上げるかというと、
「ババアが頑張る話」ってなかなかないよね、
なんて後輩と話していたとき、
マッドマックスのアレとか、
ペンタゴンペーパーズが挙げられたのだが、
いやいやもっといいのがあるだろ、
と記憶の棚を洗い出し、
思い出したのがこれだった。
当時はウェルメイドとはこういうものだ、
と感心したくらいだったけど、
今考えると、
「全てにおいて匠の距離感で作られている」
と考えられる。
無理のあるストーリー展開や、
どぎつさだけで引っ張る展開や、
登場人物を使い捨てることや、
出落ちや、
自信のなさの裏返しとしての、俺が考えたんだぜ凄いでしょイキリや、
配慮の足りない人間観など、
いまの邦画にあるクソ要素が一切ない。
きちんと楽譜が計算され尽くして、
各演奏家に任せた上で、
オーケストラをコントロールされているような、
見事な集団の仕事を見ることができる。
イギリス人は知性が高いのか、
それとも階級差が激しくて、
知性の高い人しかこうした職場につけないのか、
そこのところは分からない。
下ネタなんだけど品があり、そして下品である、
そのバランス感覚がすばらしい。
人間の本質は下品であるが、
それゆえ上品であろうとすることだ、
という仮面舞踏会の伝統を感じる。
(そういえば仮面舞踏会のアイズワイドシャットも、
キューブリックはイギリス人だ)
これはコメディだろうか。
抱腹絶倒とか吉本新喜劇のような「笑い」ではない。
しかし、
「世の中には二つのジャンルがある。
tragedyとcomedyだ。
前者は人生は儚く酷いものであると描き、
後者は人生は素晴らしく生きる価値があると描くものだ」
という、
大昔からの伝統に基づけば、
この映画はcomedyである。
日本でもこういう良心的な作品が作れないのだろうか?
マーケティングとかクソデータはどうでもいいのに。
NHKなら作れるのかな。
文化とは余裕である、というヨーロッパの伝統を、
上手に映画に落とし込んだ良作。
もし未見であれば、おススメです。
ひょんなことからストリップ劇場の支配人を継ぐことになった、
上流階級のヘンダーソン夫人(独り身のばあさん)。
戦争時の検閲に負けないように、ヌードを芸術と言い張るための、
あれやこれやを工夫して行き…
「笑いの大学」と目的は同じ。舞台とストーリーラインも動機も全然違う。
アマプラもネトフリもないらしく、
ツタヤにあると思ったらなくて、
取り寄せレベルにないらしい。
日本の余裕がなくなる前に見ておくべし。
未見です。最寄りのツタヤやゲオに行ってみます。
ただ、住んでるところが田舎なので品揃えが良くないのが
不安なのですが。最悪、取り寄せになるかもしれませんが、監督の目を信じさせて頂きます。
ちなみにお返しといってはなんですが去年の夏に公開された「ペンギン・ハイウェイ」というアニメ映画もなかなか佳作でした。お薦めです。でも、この主人公も彼女と世界についてさんざん悩んでいるので、もしかしてこれもセカイ系? 監督の目から見て判断してもらいたいところです。それでは。
ペンギンハイウェイか…
森見登美彦原作には因縁があり、少し構えてしまう。
(過去記事「恋は短かし歩けよ乙女」関連参照)
暇があれば見るかも。