2019年08月23日

紙に書き出して整理する意味2

前記事の続き。
いい例を思いついたので。


引っ越しする時を例にとる。

色んな部屋を色んな不動産で比較することになる。

どの駅なのか、何線なのか、
駅のどっち側なのか、
南向きなのか、バストイレは希望通りか、
寝る場所や作業する場所の動線は、
収納とかは。
コンビニは近いのか、近くの繁華街にはなにがあるのか、
居酒屋、飯屋、ラーメン屋、パン屋、スイーツ屋、
本屋、ツタヤ、文房具屋、などの質。
近くの映画館はどこか、ジムは近いか、公園は。

とりあえず僕が見るポイントを列挙。
あ、近所の人間関係もあるね。

こうした評価軸は、経験をへて整理されてきたものだ。

しかし引っ越し慣れしてない人は、
これらのうち何をどれだけ重視していいかわからない。

仮にネットで探すとする。
各サイトで比較すると訳がわからない。
サイトでフォーマットが違うから、
見比べるのは結構面倒だ。
スクリーンショットを撮ったとしても、
たとえマルチディスプレイでも、
10の物件を比較するのは困難だろう。

で、紙なのだ。
紙に出力して比較するのは、
デジタルに比べれば容易に出来る。
書き込んだり赤で丸をつけて強調も出来るだろう。

そうこうしているうちに、
「自分が重視しているポイントは何か」
が分かってくる。
で、別の白紙に、
10の物件を、そのポイントから見た順で整理しはじめる。
たとえば、
「駅近、コンビニあり、会社と映画館との動線」
の条件(これをPとする)で並び替えることは可能だろう。

このPを抽出することが、
紙で整理する意味なのだ。

「よし、たとえばQという条件で整理してみよう」
などと別の条件で別紙に並び替えることもできる。
さらに別の条件で、も可能だ。

そのようなカオスから、
「自分の大事にしている整理条件は何か」
を抽出する作業が、
整理そのものである。


部屋を整理できない人は、
おそらくこの条件を抽出しきれていない人だ。
あるいは、
「何も考えず仕舞うところだけ決めて、
なんでも収納してしまえ」と割り切れない人かも知れない。
後者ならとりあえず見た目は整うが、
本質的には整理されたとは言えない。
整理整頓という言葉でいえば、
整頓はできたかも知れないが、整理は出来ないわけだ。

つまり、整理とは、
混沌をある秩序のもとに並べることであり、
さらにいうと、
その秩序を発見することである。

人によって、
不動産の優先条件が異なるように、
混沌とした情報から、
整理をする条件そのものを抽出して、
はじめて優先条件を整理したことになる。

条件さえ決まればあとは機械的ソートだ。
機械的ソートは、整理整頓でいうと、整頓作業に過ぎない。
整理するのは、条件の設定そのものなのだ。


あなたのアイデアは混沌である。
アイデアノートは断片的なアイデアであり、
まだネットワーク化していない。
ある部分は繋がっているが、
最終的な出来から見れば繋がっていない部分もあるし、
間違った繋がりもあるし、
余計な情報もあれば、不足している部分もある。

それがある秩序を成すことが、
ストーリーを作るということだ。

その秩序の法則Pを見つけるために、
紙に書き出すのである。

A3やB5でいい。
あるいはカレンダーの裏くらい大きな紙でもいい。
ホワイトボードを使う人もいる。
壁一面に書き込める部屋が僕は欲しい。
壁一面にアイデアを貼る人もいる。
まずは脳の中を書き出して吐き出すのはいいことだ。
ネットで見た不動産をプリントアウトすることに近い。
さまざまなフォーマットのものを、
一堂に会するのである。

で、色々眺めて赤ペンで書き込みはじめる。
ある種の秩序になりはじめる瞬間だ。

で、また考えて並び替えたりニコイチにしたり、
新しい情報を書き込んだりする。

新たな秩序が産まれる瞬間だ。

で、
これらを白紙のA4に、
まとめてみるのがオススメだ。

それは、条件Pによって整理された、
ある種の秩序が書かれているだろう。

この作業が整理であり、
Pの発見こそが、整理の本質だ。


Pはテーマか?
テーマになっている場合もあれば、
まだそこまで到達していない場合もある。
この整理で得たことが、
各情報にフィードバックされて、
更に探求が行われる場合もあるだろう。
(たとえば「映画館との動線」を考えてなかったわ、
と気づき、渋谷ベース東横線沿い、
新宿ベース中央線沿い、
などに探索エリアを広げるようなもの)

そうこうしているうちに、
おおまかな形が出来上がっていく。
アイデアが足りないにしても、
必要な要素は見えてくる。

そこでプロットという形や、
ログラインという形に収めてみて、
Pはなんだろうな、とまた考えてみると良い。

紙で表をつくることは、
人間の脳の外部記憶を作ることだろうか?
いや、全ての情報を一時記憶領域に呼び出すことに近いと僕は思う。
その一覧を見ながら、
全情報を同時に動かすことができるからね。

これは、リンクベースポインタベース、
決まった枠組みのフレーム内でしか、
データ構造を静的に持たないデジタルでは、
不可能な行為だ。

紙と脳の関係は、デジタルの構造では再現できていない。

ちなみに人工知能の世界では、
この紙と脳の関係を「創発」という言葉でまとめている。
創発は機械には出来ないとされてきたが、
ディープラーニングによって、
創発めいたものが出来てきた。
しかしながらその創発がどういうものなのか、
ディープラーニングは言葉で的確に説明できないぶん、
脳と紙に劣るわけだ。

条件Pはなにか?
それを言葉で的確にいえるまでそれを続けることは、
人間にしかできない。

逆にいうとこれが出来ない人は、
ディープラーニングに劣るレベルだ。



紙に書き出して一覧表をつくろう。
綺麗に書く必要はない。
あなたの頭の中が綺麗に整理されることが、
もっとも大事だ。
どうせ書き込み倒して汚くなる。

ストーリーの形が美しければ、それ以外はどうでも良い。
その秩序のために、混沌を整理するのだ。

(wikiの創発の項はなかなかまとまっていて面白かった。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/創発
創作と創発は似た現象だが、同一かどうかは分からない。
創作とはどういう現象か、定義しきれないからだ)
posted by おおおかとしひこ at 09:41| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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