前記事の続き。
いい例を思いついたので。
引っ越しする時を例にとる。
色んな部屋を色んな不動産で比較することになる。
どの駅なのか、何線なのか、
駅のどっち側なのか、
南向きなのか、バストイレは希望通りか、
寝る場所や作業する場所の動線は、
収納とかは。
コンビニは近いのか、近くの繁華街にはなにがあるのか、
居酒屋、飯屋、ラーメン屋、パン屋、スイーツ屋、
本屋、ツタヤ、文房具屋、などの質。
近くの映画館はどこか、ジムは近いか、公園は。
とりあえず僕が見るポイントを列挙。
あ、近所の人間関係もあるね。
こうした評価軸は、経験をへて整理されてきたものだ。
しかし引っ越し慣れしてない人は、
これらのうち何をどれだけ重視していいかわからない。
仮にネットで探すとする。
各サイトで比較すると訳がわからない。
サイトでフォーマットが違うから、
見比べるのは結構面倒だ。
スクリーンショットを撮ったとしても、
たとえマルチディスプレイでも、
10の物件を比較するのは困難だろう。
で、紙なのだ。
紙に出力して比較するのは、
デジタルに比べれば容易に出来る。
書き込んだり赤で丸をつけて強調も出来るだろう。
そうこうしているうちに、
「自分が重視しているポイントは何か」
が分かってくる。
で、別の白紙に、
10の物件を、そのポイントから見た順で整理しはじめる。
たとえば、
「駅近、コンビニあり、会社と映画館との動線」
の条件(これをPとする)で並び替えることは可能だろう。
このPを抽出することが、
紙で整理する意味なのだ。
「よし、たとえばQという条件で整理してみよう」
などと別の条件で別紙に並び替えることもできる。
さらに別の条件で、も可能だ。
そのようなカオスから、
「自分の大事にしている整理条件は何か」
を抽出する作業が、
整理そのものである。
部屋を整理できない人は、
おそらくこの条件を抽出しきれていない人だ。
あるいは、
「何も考えず仕舞うところだけ決めて、
なんでも収納してしまえ」と割り切れない人かも知れない。
後者ならとりあえず見た目は整うが、
本質的には整理されたとは言えない。
整理整頓という言葉でいえば、
整頓はできたかも知れないが、整理は出来ないわけだ。
つまり、整理とは、
混沌をある秩序のもとに並べることであり、
さらにいうと、
その秩序を発見することである。
人によって、
不動産の優先条件が異なるように、
混沌とした情報から、
整理をする条件そのものを抽出して、
はじめて優先条件を整理したことになる。
条件さえ決まればあとは機械的ソートだ。
機械的ソートは、整理整頓でいうと、整頓作業に過ぎない。
整理するのは、条件の設定そのものなのだ。
あなたのアイデアは混沌である。
アイデアノートは断片的なアイデアであり、
まだネットワーク化していない。
ある部分は繋がっているが、
最終的な出来から見れば繋がっていない部分もあるし、
間違った繋がりもあるし、
余計な情報もあれば、不足している部分もある。
それがある秩序を成すことが、
ストーリーを作るということだ。
その秩序の法則Pを見つけるために、
紙に書き出すのである。
A3やB5でいい。
あるいはカレンダーの裏くらい大きな紙でもいい。
ホワイトボードを使う人もいる。
壁一面に書き込める部屋が僕は欲しい。
壁一面にアイデアを貼る人もいる。
まずは脳の中を書き出して吐き出すのはいいことだ。
ネットで見た不動産をプリントアウトすることに近い。
さまざまなフォーマットのものを、
一堂に会するのである。
で、色々眺めて赤ペンで書き込みはじめる。
ある種の秩序になりはじめる瞬間だ。
で、また考えて並び替えたりニコイチにしたり、
新しい情報を書き込んだりする。
新たな秩序が産まれる瞬間だ。
で、
これらを白紙のA4に、
まとめてみるのがオススメだ。
それは、条件Pによって整理された、
ある種の秩序が書かれているだろう。
この作業が整理であり、
Pの発見こそが、整理の本質だ。
Pはテーマか?
テーマになっている場合もあれば、
まだそこまで到達していない場合もある。
この整理で得たことが、
各情報にフィードバックされて、
更に探求が行われる場合もあるだろう。
(たとえば「映画館との動線」を考えてなかったわ、
と気づき、渋谷ベース東横線沿い、
新宿ベース中央線沿い、
などに探索エリアを広げるようなもの)
そうこうしているうちに、
おおまかな形が出来上がっていく。
アイデアが足りないにしても、
必要な要素は見えてくる。
そこでプロットという形や、
ログラインという形に収めてみて、
Pはなんだろうな、とまた考えてみると良い。
紙で表をつくることは、
人間の脳の外部記憶を作ることだろうか?
いや、全ての情報を一時記憶領域に呼び出すことに近いと僕は思う。
その一覧を見ながら、
全情報を同時に動かすことができるからね。
これは、リンクベースポインタベース、
決まった枠組みのフレーム内でしか、
データ構造を静的に持たないデジタルでは、
不可能な行為だ。
紙と脳の関係は、デジタルの構造では再現できていない。
ちなみに人工知能の世界では、
この紙と脳の関係を「創発」という言葉でまとめている。
創発は機械には出来ないとされてきたが、
ディープラーニングによって、
創発めいたものが出来てきた。
しかしながらその創発がどういうものなのか、
ディープラーニングは言葉で的確に説明できないぶん、
脳と紙に劣るわけだ。
条件Pはなにか?
それを言葉で的確にいえるまでそれを続けることは、
人間にしかできない。
逆にいうとこれが出来ない人は、
ディープラーニングに劣るレベルだ。
紙に書き出して一覧表をつくろう。
綺麗に書く必要はない。
あなたの頭の中が綺麗に整理されることが、
もっとも大事だ。
どうせ書き込み倒して汚くなる。
ストーリーの形が美しければ、それ以外はどうでも良い。
その秩序のために、混沌を整理するのだ。
(wikiの創発の項はなかなかまとまっていて面白かった。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/創発
創作と創発は似た現象だが、同一かどうかは分からない。
創作とはどういう現象か、定義しきれないからだ)
2019年08月23日
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