2019年09月18日

「はじめの一歩」舞台化?!

ちょっとびっくりした。
ビジネスの枠組みの話をする。


少し前まで、
原作漫画つきの映画化がたくさんあり、
ことごとくが爆死した。

このビジネスは、始めることにメリットがあり、
回収することに困難のある詐欺であることは、
これまでも書いてきた。

メリット
・「あの人気原作が」ということで、「脚本を読めない人」にも、
出資を募りやすく、ビッグビジネスを作ることができる
・ビッグビジネスになることで、人気俳優を呼べ、
予算が潤沢になり、益々の発展が期待できる
・宣伝がしやすい。こちらから金をかけて宣伝する
(宣伝費は制作費と同じくらいと言われる)ことなく、
勝手に取材されるし、バズりやすい

デメリット
・その期待に応えられるだけのシステムがない

・脚本のチェック機構がない
(面白いかどうかよりも、人気俳優の出番チェックになりがち。
また護送船団方式になることで、
色々な出資団体の意見に全て応えなければならず、
八方美人の無難な脚本になる。
これが「攻めまくったから人気が出た」原作の真逆になる)

・原作を二時間に収めることは難しい。
また連載中の映画化が多く、結論の出ないものを、
映画的結論に導かなければならない困難さがある

・そもそも技量のある脚本家はこんな無茶な仕事は受けない。
三流が有名になるために受けて、制御しきれず爆死する
(三流ほどオリジナル要素で受けようとする。
実写ガッチャマンは、9部作なんだよねたしか?)

・漫画と実写の「現実感」が違う。
漫画のコスプレを実写でやっても嘘くさい。
・CGにハリウッド並みの予算が割かれることがまずなく、
しょぼくなる。


これらのメリット、デメリットが、
舞台ビジネスでは良化する。

・総予算が一桁か二桁小さい。爆死のリスクも小さい。
・「人気俳優に会える」の力は大きく、
リピーターを生み、席は埋まりやすい。
「席が埋まるかどうかわからない」映画より、
ビジネスプランが立てやすい。
・マンガチックでも「舞台だから」と割り切れる。
・CGを使用しなくても、照明や音効で表現できる。
(まあ舞台だしな、で割り切れる部分も大きい)

・生音楽、生ダンス(殺陣)、生芝居の力は大きく、
それだけあれば満足してしまうこともある。
これで脚本のアラをある程度ごまかせる。
(舞台版風魔はそうだったと言って差し支えない)

・再演可能、続きの舞台が可能、キャスト入れ替え可能など、
一回限りの映画に比べて興行に自由度がある。


つまり、
舞台の方が堅い商売になる。

幽遊白書やデスノートの舞台化にも驚いたが、
映画を作るよりはるかにリスクが低いことに、
目の付け所を見たものだ。
同様にボクシングの一歩。
観客にボクサーや格闘家は少ないだろうから、
殺陣的な動きで十分満足だろう。
体さえ作れれば説得力はある。

うまくいけば、いよいよスラムダンクもいけるのではないかね。


注意すべきことは、
この原作ビジネスは、
オリジナル脚本の商売を根絶やしにしかねないことだ。

邦画はもう二進も三進も行かないし、
ハリウッドは息切れが続いている。

舞台に、「原作漫画」という黒船が来た。
(まあテニミュあたりからあるんだけど)
舞台という世界が、焼畑にならないことを祈る。


そもそも興行ビジネスが、
「事前の儲け額を計算しなければならない」ことに、
問題がない?
20年前に聞いた話では、
「10本まとめて予算を組んで、1本大ヒットすれば良い」
なんてどんぶりだったはず。
それが、一本一本計上しないといけない短期型になってから、
こんな爆死や根絶やしが増えた気がする。


観客にとっては面白ければどっちでも良いんだろうが、
僕は業界全体がやせ細っていくのに、
カントリーマアムが小さくなっていくような危機感を覚える。


しかしどこまでをやるんだ?
ヴォルグも間柴も千堂もいるようだし、
ララパルーザをクライマックスに持ってくるつもりかな。
誰が誰か、ポスターでは分かりにくい…
(間柴がフリッカーの構えをしてないとか、
不安が募るぜ)
posted by おおおかとしひこ at 15:42| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。